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おそろいなのです
しおりを挟むリトのふわふわの耳の間に、ジゼのふくれたほっぺたがある。
思わず耳でなでなでしたら、前に回ったジゼの腕に、きゅうっと抱きしめられた。
「……俺の従僕なのに。ちっとも傍にいない」
あわあわしたリトは、くるりとジゼのほうに向こうとして、ぎゅ、と押し止められる。
「……こんな情けないの、俺じゃない」
ジゼの頬がますますふくれて、セバはやわらかに微笑んだ。
「情けなく、無様で、みっともないことこそが、あなたを成長させるのです。
たくさん、悔しい思いをなさってください」
「なんでセバに言われると、悪魔に囁かれてる気分になるんだろう」
首を捻るジゼに、セバが笑う。
「ゲォルグさまのためなら、喜んで悪魔に魂を売り渡すからでしょうね」
キィ、と微かな音をたてて扉が開いた。
ジゼとおそろいの月の髪が揺れる。
「セバ?」
「御前に、我がきみ」
胸に手をあてたセバが、やわらかに膝を折る。
「不穏なことを言っただろう」
ジゼとおそろいの蒼い瞳が、ちょっと吊りあがって、セバはたまらなくうれしそうに微笑んだ。
「真実を、すこし」
「こら」
ゲォルグのごつごつの指が、ちょんとセバの額をつつく。
眦に朱を散らしたセバが、ゲォルグの指をつかまえた。
「……胸焼けがする」
呟くジゼに頷いた。
「僕もでし。お茶、いれ、ぅ?」
後ろから抱っこされたままなので、目だけを上にあげたら
ぎゅう
抱きしめる腕が、強くなる。
「……うん」
さみしい?
あまやかされたい?
癒されたい?
「蜜花茶、いかが、でし?」
かすかに目を見開いたジゼが、微笑んだ。
「頼む」
視線を交わしたゲォルグとセバが、ちいさく笑う。
「胸焼けするのは此方だと申しあげておきましょうか」
セバの蘇芳の瞳が、やわらかに細くなる。
「若いな!」
くつくつ、喉を鳴らしてゲォルグが笑う。
「父上も充分過ぎるほど、お若いと思いますよ」
ジゼの目は、セバの細い腰に回されたゲォルグの腕に刺さっていた。
おお! これはゲォルグ×セバ!?
目がキランとしたのだと思う。
ちょっと赤くなったセバが
「こら」
ちょんとリトの額をつついた。
「ふぇ。ごめなしあ」
うるうるになったリトに、ジゼとセバが胸を押さえてうずくまる。
「おもしろくない」
ふくれるゲォルグの頬は、さっきのジゼにそっくりだ。
お服ができました!
仕立て屋さんの心意気とジゼのこだわりが炸裂した真っ白な従僕服を纏ったリトが、くるりと回る。
ふわふわひらひらの白い布が、リトのほわほわの耳としっぽを彩るように舞いあがる。
「──っ!」
ジゼとセバが胸を押さえた。
癖みたいだ。流行ってる。
「基本的な所作は覚えましたし、お茶も淹れられます。お連れになられても、さほど問題はないかと」
微笑むセバに、ジゼの蒼の瞳がきらめいた。
「出掛けよう」
「あ、あい!」
硬直したリトは、ジゼを見あげる。
「あ、あの、ど、どちら?」
あんまり怖いとこに行かないでください。
お願いするリトの、うるうるの目に、ほんのり眦を染めたジゼが告げる。
「帝宮だ。次期帝王に謁見する」
…………………………。
最難関じゃないですかぁあァア──!
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