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下町へ!

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 ちょっと目が赤いメファと、ちょっとよれっとした俺(えっちし過ぎ……)で、
エルフ特製、えっちな薬を作ったよ!


「売り上げは、メファの新しい生活のための資金にしたらいいよ!」

 メファと手を繋いで笑ったら、


「うん」

 はにかむみたいに笑ってくれた。

 メファ、かわい――!


 たくさんの小瓶を、割れないように丁寧に梱包したら、おっきなリュックに
詰めて、下町へ!


「ちっちゃいの、また来た!」

「お人形みたい!」

「かわい――!」

「ちっちぇ――!!」


「ちっちぇー言うな!」

 ぷりぷりする俺のおでこに、メファのチョップが降ってくる。


「僕は!! ちっちゃく!! ねえ!!!」

「わかったよ、メファ。痛いよ」

 おでこをすりすりしてたら、灰色の耳がぴこんと揺れた。


「居た!! そんなかわいーちっちゃさで、待ち合わせより早く来るな!!」

 駆けてきたイォに怒られた。


「ちっちゃさ言うな!」

 拳を掲げたら、イォが掌に顔を埋める。

 ……なんか、この仕草が、この世界では流行ってるっぽい!


 メファがちゃんと魔道具でイォに、下町にゆくのでよろしくねの伝言を
入れておいてくれたんだよ。

 俺は魔力が少ないから、伝言の魔道具は使えない。
 社長自ら実施!


 ……もしかして、俺、役立たず?

 しょんぼりした俺は、あわててリュックの紐を持つ手に力を籠める。

 えっちな小瓶のいっぱい詰まったリュックを背負ってるんだから、たぶん、
ちょっぴしは役立ってると思う!

 大荷物を担ぐ俺を見て、ちっちゃい子が頑張ってるのを微笑ましく見守る
大人の瞳になったイォの案内で、下町の奥、路地裏の先へと進んでゆく。


「道、憶えた?」

 こそっとメファに聞いたら


「無理!」

 即答だった。

 方向音痴仲間、うれしい!

 にこにこする俺とメファを、イォは残念なものを見るような目と、可愛くて
たまらないのを見る目と半々な目で見てた。


「何やっても、かわいーよな。
 救いの手が自動で降ってくるだろ」

 イォの言葉に、はちみつの眉をあげたメファは、鼻で笑う。


「まさか。故郷では僕は恥で無だったし、学校では畏れられて、誰も寄らない。
 街に出たら、変質者が寄って来て、犯されそうになる」

 吊りあがるメファの瞳に、イォは灰の瞳を伏せた。


「……ごめん」

 イォの素直な謝罪に、メファは瞳をやわらげて頷いた。


「こんなに楽しい毎日は、リユィに逢ってからだよ」

 メファが俺と手を繋いで、笑ってくれる。


「俺も、メファと一緒、楽しい!」

 ぎゅ、と手を握り返して笑ったら、イォが掌に顔を埋めた。

 やっぱりこの仕草、流行ってるみたいだよ。


「……なんか、ちっちゃくてかわいーのが仲良くしてるのって、最高だな」


「ちっちゃい言うな!」


 ぷりぷり怒ったら、漆黒の翼が降ってきた。








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