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物理系魔法少女、彼女は成長していた

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 「無事に帰って来たよ」

 「⋯⋯良かった。本当に」

 紗奈ちゃんが安堵の笑みを浮かべる。

 安心したのか、俺の手を両手で包み込んでくれる。

 ⋯⋯だが、いつもならひんやりと感じる両手は今は冷たかった。

 やばい。骨の芯まで凍りそうだ。

 最近は少し慣れ始めたのに。何が⋯⋯ルミナスさんだ。

 し、しまったあぁああああ!

 「どうして、星夜さんから、女の匂いがするのかなぁ? 何があったのかなぁ?」

 紗奈ちゃん、服だと逃げられると学習してしまったのか。

 ちくしょう。言い訳すら考えてないぞ。

 油断した!!

 「道に迷った所を助けてもらったんだよ。それだけ」

 「ふーん。そう言う事にしといてあげる。晩御飯期待してね」

 問答無意味、そんな言葉が俺の中で生まれた。

 話は本題になり、少し動きずらくなった手で瓶を取り出した。

 「これが依頼品だと思うんだけど⋯⋯どう?」

 「なにこれ? 私も初めて見るんだけど。ちょっと裏で確認してくるね。⋯⋯はいこれ番号札。少し待機で」

 「りょーかい」

 換金は後である。魔物と戦った際の状況説明も今のうちに考えていよう。

 決して自分から攻撃しに行った訳では無いと、説明しなくてはならぬ。

 ◆

 ノックをしてから中に入る。

 「許可取れー」

 「ありがとうございます。それで質問しに来たんですけど」

 「仕事なら仕事らしくしようよ」

 支部長とそんな会話をしてから、星夜さんが持ち帰った得体の知れない何かを支部長の机に置く。

 支部長が小さな身体を前のめりにして、それを確認する。

 「あの老体からの依頼内容はビリビリした球体、エレキトルギアだと思ったんだけど、これっぽいね」

 老体って⋯⋯一応支部長よりも偉い立場の方なんだけどなぁ。

 私が口出す事じゃないんだけどさ。

 「そっか。だから星夜くんに指名依頼を出したのか」

 「理由を聞いても?」

 こんな危険なマネをさせたんだ。

 理由くらい聞いても良いだろ。

 「これはエレキトルギアじゃない。それは紗奈っちも分かってると思うけどさ」

 「はい」

 そもそもアレを回収するのに、特別な物は必要ない。

 だけど本部長は用意して来た。

 「これは魔力の塊だよ。電気の塊とも言えるけど、要するにエネルギー物質だね」

 「それとなんの関係が?」

 「言葉にするのが難しいな。まずアカツキちゃんの動画は見たよね? 星夜くんのチャンネルだし」

 「もちろん。全ての動画に高評価とアンチコメに対しては徹底抗議してるよ!」

 「⋯⋯まぁ良いや」

 なんだよ。その間は。

 「あの子は直接魔力に干渉する事ができる。動画で魔法を掴んだアレね? それを老体に利用されたんだよ。言ってしえばこれも魔法だしね」

 「だからって、あんなの許せないんだけど」

 「文句は老体に言ってよぉ。これがイレギュラーを引き起こしたのは間違いないかな? そもそもコレの存在がイレギュラーだ。老体は全部分かってて、すぐにでも対処する為に星夜くんに行かせたのかもね」

 嫌な感じだ。

 だけど、あの方が何を考えて行動しているのかは、私の頭じゃ理解できない。

 私達の知らない事も知っているだろうしね。

 「コレは自分らじゃ扱えいなし、依頼達成って事でしっかり本部に送っておく。紗奈っちの友人への手紙と同封しておく?」

 「メッセージで時折話しているので問題ないですよ。⋯⋯ただ、報酬の増加はお願いしておいてください」

 「⋯⋯任せな。これだけの物を新人にやらせたんだ。百万じゃ足んないよ」

 私達は密かに笑った。

 ま、あの方なら面倒事を避ける為に簡単に金を積むだろう。

 結婚資金が一気に増える事だろう。

 「それと紗奈っち」

 「ん?」

 ◆

 紗奈ちゃんが帰って来て、呼ばれたので受付に行く。

 「報酬は少し先に振り込まれると思うから安心して」

 「分かった。それとコレ」

 「魔物のドロップアイテム? 私は戦わないでって言ったの思うんだけどぉ?」

 「最低限の戦闘だから許して」

 「⋯⋯この色のエーテルリアクターは六層だよね? なんで?」

 俺はイレギュラーについて説明した。

 これでこれは最低限の戦闘と言う事をしっかりと教えつつ、助けられた人と一緒に生き残ったと誇張して伝える。

 その場の関係だったと、生きる為に一時的にチームを結成したと、必死に伝えた。

 ◆

 チャンネル登録者数200万以上のルミナスの生配信にアカツキが映ってる件について。

 1
 レベル2と公言しているのになんで一人でそこにいるんかね?

 2
 イレギュラー発生してるやん。危険すぎ

 3
 つーか良く受付通ったなそれで。クエスト? そんなのあったか?

 4
 推奨レベル4の魔物を倒せている時点でレベル2じゃないの確定している件について

 5
 案外余裕そうだな

 6
 魔法が無いから少しだけ寂しさを感じる

 7
 俺らがアカツキ追ってるだけで、ただの偶然の映り込みだけどな。

 8
 互いに助けて助けられる

 9
 百合か! 百合に発展か!

 10
 アカツキの弁当ってお姉さんが作ってたのか

 11
 アカツキちゃん初対面だと普通に敬語使うのね

 12
 詮索しないところ好き

 13
 アカツキってルミナスの事知ってるのかな?

 14
 >>13そんな様子は無い

 15
 配信じゃなくても殴ってんのか

 16
 本当に魔法使えないのかな?

 17
 てか、プライベートまであの格好って、すげーな

 18
 >>17その姿に?

 19
 >>18痺れない、憧れない

 20
 そもそも初配信が完全に素だったし、あれがアカツキなんやろ

 21
 てか、俺その配信見てないんだけど?

 22
 切り抜きかルミナスのSNSに行けば?

 23
 なんかアカツキのクエスト品のところ、すげー映像が荒れてて分かんないけど

 24
 機械熊と戦ってったぽい

 25
 急に荒れて、声も曇ってて、よーわからんかったわ
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