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161.暴露

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「仮に私がこの男を唆し、王太子の偽物を仕立て上げたとしたら、何故私の臣下が本物の王太子を連れているのだ?」

ルドヴィクは落ち着いた声でセヴランに正論をぶつける。

「………そ………、それは貴様が私を陥れる為の謀略だろう!私がパトリスを監禁し、バルテの息子にパトリスを演じさせているかのように、仕立て上げたに決まっている!」

普段はどちらかというと青白い部類に入るであろうセヴランの顔が、みるみるうちに赤く染まっていく。
それがルドヴィクに事実を指摘された焦りなのか、それともルドヴィクによって本性が暴かれつつあることへの怒りなのかは、アリーチェには分からなかった。

「自ら告白してくれるとは、尋問する手間が省けたというものだ」

ルドヴィクはセヴランの腕を掴む己の右手に、更に力を込めたようだった。
するとあまりの痛みに耐えかねたのか、小さな呻き声を上げたかと思うと、セヴランは両手で掴み上げていたバルテ伯爵令息を、ゆっくりと離した。
どさりと重たい音が響き、バルテ伯爵令息は力なく床へと倒れ込んだ。

「な………にを………っ」

苦悶の表情を浮かべるセヴランが抵抗しようと腕を伸ばしてきたのを見届けると、ルドヴィクはゆっくりとセヴランから手を離した。

「………私は別に『王太子を監禁した』などとは
「………………っ!」

ルドヴィクの形の良い唇から紡がれる言葉が、まるで猟犬のようにじわじわとセヴランを追い詰めていく。
そんなにセヴランに対して、王妃やセヴランは勿論のこと、共犯者であるティルゲルやバルテ伯爵令息でさえも、セヴランに助け舟を出そうとする者など誰一人としていなかった。

「ついでに言えば、あれだけ大きな魔石は殆どお目にかかれない代物だ。それなのに、人格が壊れるほどにまで魔石に取り憑かれているにも関わらず、魔石の存在にすら気がつけないとは…………実に滑稽だと思わないか…………?」

鮮やかな嘲笑を浮かべたルドヴィクは徐ろに身を屈めると、バルテ伯爵令息が先程まで身につけていたマントを拾い上げる。
そして、自らが分断した大きなブローチを握りしめた。
その様子が酷く眩しく見えて、アリーチェは思わず目を細めたのだった。
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