猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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新婚編

27.熱

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先程までの話の流れと雰囲気からして、ラファエロは間違いなく口付けをしようとしていたに違いないと、自分が思い込んでいただけだとしたら、勘違いも甚だしい。

(でも、私だけではなくて子供達の目にもそう見えたのだから、私だけの勘違いではないわ………!)

リリアーナはみるみる赤く染まる頬を隠すように両手で覆い隠しながら、きゅっと唇を引き結んだ。
そして、ラファエロを睨むように見据えた。

「ラファエロ様………またそのように私を揶揄っていらっしゃるのでしょうっ?」

ラファエロが甘い言葉を囁きながらわざと意地の悪い悪戯をして、リリアーナがどんな反応を見せるのかを観察するのが好きなのは知っている。
きっと、またそうやってリリアーナを困らせ、恥ずかしがる様を見て喜んでいるのだろう。

世の中にはそのように相手が困ったり泣いたりする様を見て快感を覚えるという人種がいると聞いたことがあるが、間違いなくラファエロはその類の人間に違いないと、リリアーナは思った。

「私はそんなに歪んでいませんよ、リリアーナ」

全く以て平常心のラファエロは、薄っすらと笑みを口元に浮かべる。
流石、というべきなのだろうか。彼のいつも通りの笑顔からは、彼の真意を窺い知る事は、出来なかった。

「ですけれど………」
「確かに、あなたが恥ずかしがったり、困ったりしている様子を見るのは可愛らしくてついつい見入ってしまいますが、先程はそんなことは全く考えていませんでしたよ?」

リリアーナの言葉を遮って、ラファエロが発言することは珍しい。
言い訳をしようだとか、図星を指されて焦っている訳ではなさそうだったが、何かを訴えるようなラファエロのエメラルド色の瞳に、リリアーナは目を瞬いた。

「でしたら、何故………?」
「あなたの頬がいつもよりも赤い気がして、ずっと陽射しの当たる屋外にいたことで、熱でも出してしまったのかと思ったのです。ですから、先程もしたようにこうして額を押し当てて、あなたの体温を測ろうとしていたんてすよ」
「え…………っ」

ラファエロは先程と同じ様に、もう一度己の額をリリアーナの額にそっと押し当てて見せた。
その動作とほぼ同時に、リリアーナはまたしても、無意識のうちに間の抜けた声を漏らしていた。
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