猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

125.夫と妻

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そうして漸く再開された舞踏会は、まるで何事もなかったかのような和やかなで温かな雰囲気に包まれていた。

舞踏会の主催者エドアルドとクラリーチェに続き、ラファエロとリリアーナが広間の中央に進み出ていくと、周囲からは自然に温かな拍手が沸き起こった。

王宮の大広間に立つのも、自分の隣に立って手を握っている人物も変わらないのに、何故だか見える景色が違うように感じ、リリアーナは落ち着かない気持ちになった。

「どうかしましたか、リリアーナ?」

そんなリリアーナの様子に即座に気がついたらしいラファエロは、心配そうに眉を顰めながらリリアーナの顔を至近距離で覗き込んできた。
息遣いさえもはっきりと感じ取ってしまうような、そんな距離感だった。

「な、何でもありませんわ…………っ!」

突然の事態に、リリアーナは思わず慌ててしまう。
いくら相手が溜息が出るほどの美貌の持ち主とはいえ、毎日毎日見飽きるほどに見ているのだから、いい加減彼と共にあることに慣れたはずだ。
それなのに、彼のふとした瞬間の表情や仕草、こうした至近距離でのやり取りの際にはいつも、今のように胸の鼓動が速くなり、息が苦しいような、切ないような気持ちになるのは何故なのだろうと、リリアーナは小さく溜息を零した。

熱くなった頬をラファエロに隠すように顔を逸らすが、くすくすと小さく笑い声が聞こえるということは、彼はまたして全てお見通し、ということだろう。

「………あまり揶揄うと、怒られてしまいますね」

ラファエロはほんの少し名残惜しそうにそう呟くと、いつも通りの微笑みを浮かべた。

「恥ずかしがるあなたが、あまりにも可愛らしいのがいけないのですよ」

さらりとそう言ってから、ラファエロはリリアーナに向かい合う格好になった。

「………すみません」

唐突にラファエロが謝罪の言葉を口にした。

「いつもと変わらない、と思っていたはずなのですが…………。どうやら自分で思っている以上に浮かれているようです」

少しだけ恥ずかしそうに、ラファエロは呟くと、リリアーナの腰に回した大きな手のひらに力を込めた。

「それと同時に、あなたを妻に迎えたことが信じられないような、本当に不思議な気持ちです。兄上も、結婚式の直後はこんな気持ちだったのでしょうか?」

まるで少年のような、はにかんだ笑みを浮かべると、ラファエロは真っ直ぐにリリアーナを見つめた。
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