猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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結婚編

126.唯一無二

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 ラファエロの疑問に、リリアーナは思わず微笑んだ。

「陛下のお気持ちは、私には判りかねますが、私の気持ちはラファエロ様と同じです」

 素直に自分の気持ちを言葉にすると、ラファエロは蕩けるような、極上の笑顔を浮かべてリリアーナを抱き寄せた。

「では、これが夢ではないことを確かめるために、夫婦となって最初のダンスを楽しみましょうか?」

 リリアーナの耳元に唇をよせると、ラファエロはそっと彼女の耳元でそう囁いた。
 低くて甘い声が、全身を駆け巡るような感覚に、リリアーナは思わず身震いをした。

「はい。私で良ければ、喜んでお受けいたします」

 リリアーナはわざとダンスの誘いに応えるための常套句とも言える言葉を選んで口にしてみると、ラファエロは楽しそうに笑う。

以外とは、もう踊らない事を分かっているのでしょう?」

あたかもそれが当然だとでも言うように、ラファエロが呟く。

「ご兄弟揃って、困ったものですわね」

エドアルドの女嫌いは有名な話だったため、王家主催の舞踏会などでは、一切踊ろうとしないどころか、女性が視界に入ることすらも嫌がるエドアルドの代理として、ラファエロが令嬢のダンスの相手を一手に受けていた。
だが、その役目をラファエロまでもが放棄するとなれば、一体誰が相手をするというのだろうか。

「そうですね…………。例えば、あなたの兄君もなかなかに才能のある優れた人材ですし、あなたが私の妃となった事で、グロッシ侯爵家は王家と縁続きになったことですし…………いっそのこと、ウルバーノを我々の代理として据えるのはいかがでしょう?」

名案だ、とでも言うようにラファエロはちらりと広間の壁に寄りかかって葡萄酒の注がれたグラスを傾けていたウルバーノに向かって視線を向けるが、肝心のウルバーノはそれに全く気がついていないようだった。

「………兄がその役目を、受けるかどうかは別ですけれどね」

確かにウルバーノは決まった婚約者もいないが、いくら何でも王族の代理をさせるのは、荷が重すぎるだろう。

「はは、違いありませんね」

リリアーナの指摘に納得したように、数回頷いたラファエロは、音楽に合わせてゆっくりとリリアーナをリードし始めたのだった。
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