猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

文字の大きさ
上 下
230 / 473
婚約編

50.妥協

しおりを挟む
エドアルドがクラリーチェを深く愛し、何よりも大切にしているのと同じように、ラファエロが自分を愛してくれているという実感は、大いにある。

それに、この兄弟の性格にはオズヴァルド王家の血が色濃く表れていて、己の伴侶に対する執着心が並外れて強い事は、オズヴァルドにいる伯母・ドロエット公爵夫人にラファエロとの婚約を知らせたときに聞いて、理解しているつもりでいた。
元々リリアーナへの言動で、そのような部分があることは気がついていたが、まさか義理の姉妹になるクラリーチェ相手にもこのような感情を見せるとは思ってもみなかった。

「あの、お言葉ですがラファエロ様………。いつも一緒にいられないとは言っても、私は毎日王宮に来ているのですが………」

婚約前と比べてみても、圧倒的に王宮で過ごす時間は増えているし、それに比例してラファエロとの時間も増えていると言うのに、クラリーチェと過ごすのは駄目だという理屈が、理解できなかった。

「しかし四六時中一緒にいられるわけではないでしょう?折角あなたと過ごせる貴重な時間を、わざわざ少なくするなど、考えられません。私はあなたさえ良ければ、同じ部屋どころか、あなたを抱き締めたまま眠りたいと思っています。………それなのにリリアーナ………。あなたは私ではなく、クラリーチェ嬢を選ぶというのですか?」
「……………っ!」

その瞬間、リリアーナの顔が真っ赤に染まった。
ラファエロの言葉を一緒に聞いていたエドアルドとクラリーチェも、聞いてはいけない言葉を聞いてしまったかのような、微妙な表情を浮かべた。

「………ええと、ラファエロ様。つまり、リリアーナ様と私が同じ部屋で眠ることが許せないということなのですよね?」

暫くして、口をぱくぱくしながら困っているリリアーナを見かねたクラリーチェが、ゆっくりと口を開く。

「ああ、そのとおりだ。あなたと同室で眠ったことがないのは私も同じだからな」

ラファエロの代わりに返事をしたのはエドアルドだった。

「………では、予定通りリリアーナ様には王宮に泊まっていただいて、エドアルド様とラファエロ様も交えて夜のお茶会を開いたあと、それぞれのお部屋で休む、というのであれば許して下さいますか?」

クラリーチェはエドアルドとラファエロ、そしてリリアーナを順番に見ながらそんな提案をしてくれる。

「………それならば………」
「ええ、私も異存ありません」

二人が揃って頷くのを見て、リリアーナはほっと胸を撫で下ろした。
流石にクラリーチェはエドアルドの扱い方を良く心得ているらしい。
当のクラリーチェは、なんとも言えないような笑顔を一瞬、リリアーナに向けた。
確かに、近いうちに『家族』になるのだから、お泊まり会の本来の目的は達成されるが、リリアーナは何故か釈然としない気持ちになったのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王命を忘れた恋

恋愛 / 完結 24h.ポイント:12,890pt お気に入り:4,568

🌟ネットで探偵ものがたり 2024.2.11 完結しました

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:16,649pt お気に入り:39

スパダリαは、番を囲う

BL / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:627

王妃の手習い

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,486pt お気に入り:3,060

ワンナイトラブした英雄様が追いかけてきた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:149pt お気に入り:1,174

処理中です...