猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

文字の大きさ
上 下
229 / 473
婚約編

49.独占欲

しおりを挟む
「………リリアーナ」

ラファエロの声はいつも通り優しいのに、何故か背筋が寒くなるような感覚を覚えた。

「折角を用意してあるというのに、わざわざ別の部屋で寝泊まりすると言うのですか?」

ラファエロの切なそうな吐息がリリアーナの耳殻に掛かる。
リリアーナはびくりと肩を震わせた。

地雷を踏んだ事は確かだった。
そういえばラファエロは以前クラリーチェの話をしたときに嫉妬していたのを思い出す。

「あの、ラファエロ様………別に私は変な意味などは一切ありませんわ?単純にクラリーチェ様と………」
「そんなことは分かっていますよ」

にっこりと笑顔を浮かべているのに、その笑顔が恐ろしい気がして、リリアーナは自分を抱きしめているラファエロを振り返ることが出来なかった。

「何か、お気に障るような事を申し上げましたでしょうか………?」

青褪めたリリアーナを見て、クラリーチェが助け舟を出すかのように、憮然とした表情を浮かべているエドアルドに尋ねた。

「………気に障る、というか………面白くないな」

実に面白くないといった様子でエドアルドは渋々答えた。

「え…………?」
「………いくら隣室にいて、いつでも会えるとは言っても、私もまだクラリーチェと同室で寝たことなどないと言うのに………」

不貞腐れた子供のような呟きが微かに聞こえ、リリアーナとクラリーチェは目を丸くする。

「常にクラリーチェ嬢と一緒にいられる兄上は、まだいいではないですか。私はリリアーナと一緒に過ごせる時間も貴重だというのに、王宮にいるときですらも別々の部屋で過ごすだなんて………何の拷問でしょうか?」

ラファエロはもう一度溜息をついて見せた。

先程の怒ったような態度と言動から、リリアーナもクラリーチェも、漸く彼等が何故そんなにも不機嫌なのかを悟った。

「………つまり、自分達が同じ部屋で眠ったこともないのに私達が一緒の部屋で眠るのが、許せないと………。………そう仰りたいのですわね?」

唇を尖らせるラファエロに向かって、呆れ顔で呟くと、ラファエロもエドアルドも、きまりが悪そうに頷いたのだった。

「………私もクラリーチェ様も、逃げも隠れもしませんのに………」
「ですから、そういう問題ではないと言ったでしょう?私達兄弟の独占欲を、甘く見ているのではないですか?」

全く褒められることではないにもかかわらず、得意げに言ってのけるラファエロに、リリアーナももう一度溜息をついたのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

愛してもいないのに

恋愛 / 完結 24h.ポイント:525pt お気に入り:1,436

奴隷だった私がイケメン貴族に溺愛されています

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:84

情欲の淵(2/28更新)

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

【完結】妖精と黒獅子

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,530

魅了だったら良かったのに

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:951

処理中です...