猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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婚約編

48.訪問理由

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「エドアルド様?それにラファエロ様も…………。お二人が揃ってお越しになるなんて珍しいですね。もしや何かあったのですか………?」

二人がお茶会を開いているクラリーチェの部屋を訪ねてきた事は今まで一度もなかった。
クラリーチェ同様、リリアーナも心配そうにじっとラファエロ達を見つめた。

「………いや、特段何か問題が起きたわけではない。ただ、その………」

エドアルドが美しい顔を顰めながら言い淀む。

「お二人のお茶会が随分と盛り上がっているようで、中々終わりそうもなかったので様子を見に来たのですよ」

兄の言葉を、ラファエロが引き継いで説明する。
リリアーナは驚いて時計を見ると、確かにお茶会が始まってからかなりの時間が経っていた。

ひょっとすると、ラファエロ達はお茶会が終わるのをずっと待っていたのだろうか。

「申し訳ございません。クラリーチェ様とお話しているのが楽しくて、つい時間を忘れてしまいますの………」
「私もです。お話をするのに夢中になってしまって………」

リリアーナがしゅんと項垂れると、クラリーチェも同じように俯いた。

「………別に責めているわけではないのだ。ただ、私はクラリーチェと、ラファエロはグロッシ侯爵令嬢と共に過ごす時間が少しでも長く欲しいだけだ」

少しはにかみながら、エドアルドがそう告げると、つかつかとクラリーチェの方へと歩み寄り、クラリーチェのすぐ隣、椅子の肘掛けに座る。

「………まあ、そういうことです」

ラファエロも兄に倣いリリアーナの元へと歩み寄ると、リリアーナの背後からリリアーナを抱きしめた。

「それにしても、お泊まり会………ですか?それはクラリーチェ嬢と………ということですよね?」

ラファエロがリリアーナのすぐ耳元で囁いた。

「え、ええ………。そのつもりですわ」

何だか不穏な空気を感じ、リリアーナは恐る恐るそう答える。

「それは、クラリーチェをグロッシ侯爵邸に招いて一晩を過ごす、ということか?」

エドアルドの水色の双眸が、リリアーナを鋭く射止めた。
その瞬間、リリアーナは己が何と答えるのかを瞬時に計算する。

「………国王陛下の婚約者たるクラリーチェ様を、我が家にお迎えできるとしたら大変に光栄な事ですけれど、警備面などを考えると、あまり現実的ではありません。ですから、私がクラリーチェ様のお部屋に…………」

泊まらせていただきますわ、と続けようと思った矢先、今度はラファエロのエメラルド色の瞳が鋭く光ったのだった。
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