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婚約編
3.オズヴァルドの王太子
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それから数週間後。
開港祭の準備は順調に進み、今日もクラリーチェの式典用ドレスの調整の為に王宮を訪れたリリアーナに、クラリーチェが珍しく不安そうな様子を見せた。
「オズヴァルドの王太子殿下………ですか?」
オズヴァルドはラファエロ達の生母リオネッラの母国。その王太子ということは、ラファエロ達の従兄弟にあたる人物だが、開港祭に合わせてキエザを訪問するという話は既にラファエロから聞いていた。
オズヴァルドは友好国で、特段心配するような事はないはずなのに、クラリーチェは何故こんなにも気にするのだろう。
「ええ。エドアルド様が妙に気にしてらっしゃって………。その、随分と女性関係が派手でいらっしゃるような口ぶりだったのが気になったのです。ひょっとしたらリリアーナ様なら何かご存知かと思ったのですが………」
クラリーチェが後から付け加えた説明を聞いてリリアーナは納得する。
リリアーナ自身、伯母がオズヴァルドのドロエット公爵に嫁いだこともあり、オズヴァルド王太子は何度か見かけたことがあった。
特に会話をしたこともなく、朧気な記憶しかなかったが、人当たりの良い雰囲気と、端正な顔立ちをしていたように思う。
「まあ………。私も詳しくは存じ上げませんけれど、言われてみれば確かに………見た目は女性に好まれそうな雰囲気でしたわね」
リリアーナは落ち着いた様子でティーカップを口につけた。
「私はエドアルド様以外に心を動かされないと何度もお伝えしているのに、何故か心配そうな素振りをされるので………私、どうすればいいのか分からないのです。………もしかしたら私は、エドアルド様に信頼されていないのでしょうか………?」
クラリーチェはそう零すと、落ち着かない様子でじっと手にしたティーカップを見つめている。
「………何となく………ラファエロ様が、嘆かれている意味が分かった気が致しますわ」
リリアーナは微妙な表情を浮かべると、溜息をついた。
ラファエロがしきりに「兄上は変なところで頑固なんですよ」だとか「クラリーチェ嬢のことになるとどうにも………」と愚痴を零しているのを思い出したのだ。
おそらくエドアルドは、クラリーチェがオズヴァルド王太子に心を奪われる心配ではなく、ジュストの時のように、クラリーチェが見初められる心配をしているのだろう。
(あら、でも………確かオズヴァルドの王太子殿下は………)
自分の記憶が確かであれば、エドアルドの発言は腑に落ちない。
一度確認をしたほうが良さそうだとリリアーナは口から出かかった言葉を呑み込み、リリアーナはティーカップを静かに置くと、クラリーチェを見つめた。
「私から、ラファエロ様にお尋ねしてみますわ。ラファエロ様なら陛下のお心をよくご理解なさっておりますし、オズヴァルド王太子殿下の事もご存知でしょうし。………ですから、クラリーチェ様はあまり気になされないで下さいね。何かあれば、私がクラリーチェ様をお守り致しますわ」
クラリーチェを励ますように、リリアーナが微笑むと、クラリーチェもどこか安心したように微笑んだのだった。
開港祭の準備は順調に進み、今日もクラリーチェの式典用ドレスの調整の為に王宮を訪れたリリアーナに、クラリーチェが珍しく不安そうな様子を見せた。
「オズヴァルドの王太子殿下………ですか?」
オズヴァルドはラファエロ達の生母リオネッラの母国。その王太子ということは、ラファエロ達の従兄弟にあたる人物だが、開港祭に合わせてキエザを訪問するという話は既にラファエロから聞いていた。
オズヴァルドは友好国で、特段心配するような事はないはずなのに、クラリーチェは何故こんなにも気にするのだろう。
「ええ。エドアルド様が妙に気にしてらっしゃって………。その、随分と女性関係が派手でいらっしゃるような口ぶりだったのが気になったのです。ひょっとしたらリリアーナ様なら何かご存知かと思ったのですが………」
クラリーチェが後から付け加えた説明を聞いてリリアーナは納得する。
リリアーナ自身、伯母がオズヴァルドのドロエット公爵に嫁いだこともあり、オズヴァルド王太子は何度か見かけたことがあった。
特に会話をしたこともなく、朧気な記憶しかなかったが、人当たりの良い雰囲気と、端正な顔立ちをしていたように思う。
「まあ………。私も詳しくは存じ上げませんけれど、言われてみれば確かに………見た目は女性に好まれそうな雰囲気でしたわね」
リリアーナは落ち着いた様子でティーカップを口につけた。
「私はエドアルド様以外に心を動かされないと何度もお伝えしているのに、何故か心配そうな素振りをされるので………私、どうすればいいのか分からないのです。………もしかしたら私は、エドアルド様に信頼されていないのでしょうか………?」
クラリーチェはそう零すと、落ち着かない様子でじっと手にしたティーカップを見つめている。
「………何となく………ラファエロ様が、嘆かれている意味が分かった気が致しますわ」
リリアーナは微妙な表情を浮かべると、溜息をついた。
ラファエロがしきりに「兄上は変なところで頑固なんですよ」だとか「クラリーチェ嬢のことになるとどうにも………」と愚痴を零しているのを思い出したのだ。
おそらくエドアルドは、クラリーチェがオズヴァルド王太子に心を奪われる心配ではなく、ジュストの時のように、クラリーチェが見初められる心配をしているのだろう。
(あら、でも………確かオズヴァルドの王太子殿下は………)
自分の記憶が確かであれば、エドアルドの発言は腑に落ちない。
一度確認をしたほうが良さそうだとリリアーナは口から出かかった言葉を呑み込み、リリアーナはティーカップを静かに置くと、クラリーチェを見つめた。
「私から、ラファエロ様にお尋ねしてみますわ。ラファエロ様なら陛下のお心をよくご理解なさっておりますし、オズヴァルド王太子殿下の事もご存知でしょうし。………ですから、クラリーチェ様はあまり気になされないで下さいね。何かあれば、私がクラリーチェ様をお守り致しますわ」
クラリーチェを励ますように、リリアーナが微笑むと、クラリーチェもどこか安心したように微笑んだのだった。
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