猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

69.断罪(5)※残酷描写あり

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「さて、今度は御婦人方の番ですよ」

あくまで穏やかな笑顔を浮かべ、けれども怒りを滲ませながらラファエロがゆっくりと女性陣へと目を向けた。

「あなた方も、そこで無様な姿を晒している男の身内ですから、誇りにされていた公爵夫人という身分はなくなってしまいましたね」

皮肉げな言葉で、ラファエロはブラマーニ公爵夫人……アマンダに声を掛けた。

「私はっ、全ては公爵家を継ぐ、大切なジュストの為に動いていただけで………!」

自分は間違っていないとでも言うようにアマンダが叫んだ。
そんな事は言われなくとも知っていた。
アマンダは、一人息子であるジュストを盲目的に溺愛している。
ジュストの言い分を全て肯定し、生まれつきのジュストを更に増長させたのは、他でもないアマンダだ。
そのせいで、クラリーチェに手を出そうとしてエドアルドの逆鱗に触れただけではなく、長年にわたりリリアーナを苦しめてきたという事実を、ラファエロは到底許すことが出来なかった。

「では、あなたの最愛の息子であるジュストが、リリアーナ嬢を罵倒したり、彼女の見ている前で使用人に手を出しているを知っていながら、黙っていたでしょう?それどころか、理不尽にもリリアーナ嬢を虐げていたのですよね?」
「そうよ!ジュストは美しく、賢く、まさに神に選ばれた存在。だから何をしても許されるのよ………!」

確認するように、ラファエロが小首を傾げながら尋ねると、アマンダは恍惚とした表情で叫んだ。
アマンダは本気でそう信じているのだろう。
世の中には『親ばか』という言葉があるが、彼女のそれは明らかに度を越していること位は、実の母親というものを知らないラファエロにも分かる。
自分の子供への過大評価を、恥ずかしげもなく口にする辺り、彼女もやはりまともではないのだろう。

「………流石はあの狂人の母親だな」
「まぁ、ブラマーニ家の人間ですからね。………時に夫人。あなたは今までの件に関して、リリアーナ嬢に謝罪する気持ちはありますか?」

ラファエロは一歩足を踏み出すと、アマンダの顔を覗き込むような仕草をしてみせた。

「謝罪など、必要がないわ」

アマンダは悪びれる様子もなく、むしろさも当然と言った風に呟く。

「………それは、何故ですか?」

苛立ちを隠しながら、ラファエロはエメラルド色の瞳を細めた。

「それは、ブラマーニ家の人間だからよ」

そのブラマーニ家は先程爵位と貴族としての身分を剥奪され、ただの平民の大罪人なのだが、自白剤の影響なのか、半分は自分の世界に入っていて、現在自分が置かれている状況を理解できていないらしい。

「本当に、愚かで救いようのない方ですね………」

思い切り罵倒してやりたい気持ちをぐっと堪えると、ラファエロが仄暗い笑みを浮かべ、アマンダに歩み寄り、乱暴にアマンダの頭部を鷲掴みにした。

「例え平民であろうとも、女性に暴力を振るうような真似はしたくないのですが………今この場で切り捨てられたくなければ、リリアーナ嬢に、謝罪してくださいね」

先程広間でディアマンテの髪を切り捨てた時と同じように、ラファエロは形だけの笑みを貼り付け直し、アマンダの頭部を力任せに押さえつけたのだった。
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