猫被り令嬢の恋愛結婚

玉響

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ラファエロ編

68.断罪(4)※残酷描写あり

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「陛下っ………何卒………何卒御慈悲をっ………!」
「慈悲?………そなたらは、自らが陥れ、殺めた者達に慈悲を与えたか?」

苦しむ夫と息子を助けようと必死に縋るブラマーニ公爵夫人に、エドアルドは冷たい視線を向ける。

「………いいえ………」
「では私が慈悲を与える必要など皆無だろう」

夫人の懇願をばっさりと切り捨てたエドアルドは、再びブラマーニ公爵を見下ろした。

「………毒を使った経緯は分かった。その続きを話せ」

視線同様の冷たい声でそう命じると、公爵は苦しげな表情で、自分の欲のために毒で人を殺めたこと、先王が無能なのを良いことに国を意のままに動かしていたこと、子を産めない妹の為に、表向きは側妃として、正式な婚姻は結ばない妾として女達を送り込み続けていたことなどを白状した。
その婚姻手続きについては思わぬ形でそれが自分に跳ね返ってきたことを、悔やんではいる様子だった。

「………少し考えれば分かりそうな事ですけれどね」
「ええ、私も同感ですわ」

ブラマーニ公爵の告白に、呆れた様子で溜息を零したラファエロに、リリアーナは同意を示した。

その後もエドアルドとラファエロへの恨み言を息も絶え絶えな様子で吐き出している。
そんな公爵に対してエドアルドは溜息を一つつくと、ジュストの足を縫い止めていた剣を引き抜き、靭やかな動きで公爵の両足の腱を断ち切った。
いい加減聞き飽きた戯言にうんざりしていたラファエロは、いつその喉笛を切り裂いてやろうかと考えていた矢先にエドアルドが動いたのは幸いだった。
それは公爵に、更なる絶望を味わわせる前に殺してしまうことになるからだ。

「それから当然分かっていると思うが、そなたらが随分と誇りにしている公爵位だが、奪爵の上、貴族籍も除籍とする。つまり、そなたらは元貴族という肩書の、ただの平民に過ぎなくなった。………散々そなたらが見下していた『たかが侯爵令嬢』や『伯爵家風情』よりもずっと格下だ。………勿論、長年の不正により溜め込んだ、大切な財産も全て没収し、我が国の立て直しと、さらなる成長の為に有効活用してもらう事にしよう」

エドアルドが紡いだのは、公爵という地位を振りかざし、欲望のままに生きてきたブラマーニ公爵改めカスト・ブラマーニにとって死刑宣告と同等の言葉だった。

「………お前は、全てを失ったのだよ」

最後まで謝罪の言葉を口にしなかったカストに対して、エドアルドは言い聞かせるように彼の耳元で、理解出来るようにはっきりと告げた。

「あ………ア、アアアッ…………!」

その直後にカストの口から、まるで奈落の底に落ちていくような、悲鳴にも似た嘆きが吐き出される。
耳障りなその悲鳴を、ラファエロはただただ呆れながら聞いていたのだった。
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