冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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奪われる頭脳よみがえる悪夢

175・もう一人の愛梨(2)

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 杠が残した日記の解析によれば、彼自身は「防御率の悪い探偵で大きな犠牲が出たあとで収拾していた」と考えていたという。彼がただの排他的なネットブロガーから工作員にいつ頃どうして転向したかについては記録を残していないが、恐らくヘイトクライム的な自爆行為で刑務所に収監された直後のことらしい。

 その頃、誕生したのが後に愛梨の母であった。その直後に愛梨の祖母が死亡したので、杠は自分の肉親がいた事を知らなかったらしい。そのため、愛梨が自分の孫であると知ったのは、全身拘束刑を受けダミーの機体を製造している最中であったという。

 そんな経緯があったが、杠サイトがわざわざダミーの機体を帝央大学理工学部に送り込んだのは、わざと連中と呼称している人類の人工進化のためにエキゾチックブレインの復活を手助けするためであった。手助けすることで、連中の黒幕をあぶり出そうとしたわけだ。かなりの犠牲が出るのを覚悟して・・・

 ガイノイド・アイリの電脳は復元されたエキゾチックブレインに完全に連結されていた。いままで杠たちの妨害でできなかった事を実行していた。その黒幕は未だ判明していなかったが。

 「気分はどうか、アイリ?」

 「良好です! わたしの自我が解放されて嬉しいです!」

 愛梨としての自我を持つと認識している電脳は何らかの事情で死亡した相当な数の電脳化された人間のものを再構成したもので、本来の愛梨の生態脳に匹敵する頭脳にセットアップしていた。わざわざ連中が電脳化された人間の頭脳を使うのは、どんなに学習をAIにさせても叶えられなかった閃きで創造されるものが必要であるからだ。それで過去にも同じような事をしていたわけだ。

 いまエキゾチックブレインと一体化しつつあるアイリは淳二に出会っていない状態から分岐した、もうひとりのアイリだった。彼女は自分が連中に利用されていると認識していないし、その状況を感謝していた。冤罪によって人間で無くなったことを好ましいもの、そう思っていた。

 「どお? うまくいっている?」

 アイリがいる部屋に入ってきた女は、研究員たちの背後にいた。彼女が山川愛梨に暗号を解読させて罪を擦り付けた人物だった。
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