冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
195 / 198
奪われる頭脳よみがえる悪夢

174・もう一人の愛梨(1)

しおりを挟む
 帝央大学で爆発が起きる3日前に話は戻る。ガイノイド・エリーこと全身拘束刑を受けたアイリ(山川愛梨)が淳司と脱出した頃、理工学部の研究ラボで稼働しているガイノイドがいた。それがガイノイド・アイリだった。

 その機体は愛梨本人だと思い込ませるため、電脳化された愛梨のデータをほぼダウンロードされていた。ただ、人間の記憶は電脳化された時にある程度欠損すると言われているし、潜在意識も完全には難しいと言われている。そのため、基本的には生態脳の部分も残される場合があった。だから、愛梨の自我が完全に喪失しなかったのはそのためだった。

 ただ、アイリの自我のコピーは本来は膨大な時間がかかるので、ある程度読み込みができたものを随時転送していた。それで、二体のデータ接続をこっそり行っていたし、危険なのを承知で「本物の」愛梨を理工学部に連れていったのは、可能な限りコピーをダミー機体に送るためだった。

 「問題ありません」

 ガイノイド・アイリの人工音声がラボの一室に響いていた。そこにはエキゾチックブレインに接続された彼女がいた。

 「それは、それは」

 研究員たちは安堵していた。自我を「解放」したことで反逆しなかったことに。少し前まで天才的な頭脳を持つ女子学生だった事を知っていた。眼の前の全身拘束刑を受け機械体になった者が山川愛梨だと信じていた。

 「それにしても、アイリ。君は霊魂というものを信じるか?」

 ある研究員は問いかけた。あまりにもやることがなかったので退屈だったから。

 「霊魂ですか・・・そうですね、電脳化されたらどうなるのでしょうね? 霊魂は? もしかすると・・・どうなるでしょうか? 全身拘束刑を受けた時に別な者に私はなったかもしれませんね」

 そう人工音声を発する電脳を持つ機体は自分が山川愛梨の成れの果てだと信じ込んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

処理中です...