冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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奪われる頭脳よみがえる悪夢

163・アイリと淳司(3)

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 山川愛莉は冤罪により殆ど機械にされる全身拘束刑でガイノイドの姿にされていたが、機能も同様であった。自動運転機能のない年代物のガソリン自動車の運転をしたり、カーナビになったり・・・

 「本当にそこでいいのですか?」愛莉は不安になった。目的地が一般人の立ち入りが制限されている政府機関が集まっている街区だった。この年代物の車には進入許可は受けているようであるが、アイリとしては受けていなかった。まだ囚人扱いは完全に解除されていないのに。


 「ああ、大丈夫! この車に同乗していれば誰だって入れるさ」淳司はそういったが、なぜ許可されるのかの、説明はなかった。愛莉が運転する車は地下トンネル内部で横道に入り、そこから地下に向かうエレベータに車ごと乗ってから・・・ついた先は普通の地下駐車場のようだった。そこには政府所有の様々な車両が置かれていた。

 淳司に案内され通路を抜けると、そこが淳司の事務所のようだった。装飾は質素であったが最低限の家電はあるようであった。また室内には使用用途がはっきりしない装置も数多くあった。

 「それじゃあ、愛莉ちゃん。本当の事を告げなければいけない。実は俺のクライアントは影の司法部なんだ」淳司はあっけらかんに言うが、それって愛莉には衝撃的だった。

 「司法部? それって私に罪を着せてから・・・改造させたところよね? 意味が分からないわ!」

 そう、愛莉は大学の先輩にいわれ暗号を解読しただけなのに、国家機密を漏洩したとして有罪になり、身体を機械にされる刑罰を受けたが、それは影の司法部によるものだと思っていたというのに・・・どういうこと?

 「実はね、影の司法部のうち非主流派が連中と協力していたわけで。それを泳がしていたら君の上級生の畦地晴美の脳漿を奪った上に・・・君を嵌めたわけなの。それで動きを観ていたら・・・刑の執行中にようやく分かった、彼らの目的が。そういうんだよクライアントは!」

 所々、淳司が説明している途中で歯に物が挟まったような言い方をしていたが、それはクライアントの失態の尻ぬぐいに寄こされたという意味のようだった。

 「ひどいわ! そのクライアント! 怠慢のせいで私はロボットになったわけなの! それじゃあ、もう一体の私の分身の方はどうなるのよ!」 愛莉は一時的に頭脳をリンクさせていた、タオ先輩のところにいるガイノイドが心配になった。そちらの方が淳司が来なければの未来だったから。

 「そちらの方だけど、破壊されても構わないので強制的に回収するそうだ。でも明日は金曜日だからエキゾチックブレインが完成するから・・・どうなるのか分からないけど」

 愛莉は気付いた。もう一体のアイリの方とのデータリンクが遮断されていることに。もしかすると、向こうは電脳化された頭脳がエキゾチックブレインに物理的に接続されている可能性があった。
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