冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
179 / 198
(閑話)全身拘束刑執行女のボヤキ

山崎技師のボヤキ(2)

しおりを挟む
 柴田サクラは山崎技師からすれば面倒くさい同僚だった。嬉々として人間を機械に改造しているし、自分は正しい事をしているのだと自惚れていた。まあ、そうでもなくては犯罪者を機械にするなんて精神的に耐えられないところであった。

 「そうしたの? なにがあったの」

 「とぼけないでよ! この前の若い娘でしょ! あれは書類は正しかったわ!」

 それは山川愛莉の事だ。あとで確認したところ、書式は合っていたし、電子書類に施された暗号署名捺印は正規のであったが、唯一違っていたのはそれは愛莉が被執行者でなかった。全く別人のものとすり替えられていたのだ。

 「あのねえ、おかしいと思わなかったの? あんな少女のような年齢で外患誘致罪を犯すわけないじゃないの? それに、あんな有名な事件の犯人って・・・最近死んだと聞いていない?」

 「だけど・・・」

 全身拘束刑執行人に渡される執行命令書には、年齢と罪状がかかれているが、愛莉のものは国家機密漏洩罪が追記されていた。ちなみに外患誘致罪は文字通り外国の軍隊を侵入させる死刑相当しかない罪であるが、対象者は殆どいないものであった。

 「あんまり聞いていないようだね。とりあえずあなたは危険だから拘束されるわ。そうそう、良い事教えてあげる。杠司法長官代行は、とりあえず全身拘束刑の執行を一か月停止するそうよ。だから、一か月お休みよ!」

 「い、一か月? その間、入っておけというの?」

 「そうそう。その間外部との接触も禁止だからね。その代わり動画ファイルなどへのアクセスは無制限でいいそうよ! よかったわね、映画ファイルでも見ておけばいいじゃないの!」

 「そんな! 退屈で死んでしまう!」

 そのあと、サクラは国土安全省保安部の職員に連行された。司法省に関与させなかったのは”連中”の影響下にされる危険があったためだ。

 「とりあえず、大丈夫かしら?」

 とりあえずマットサイエンティストなサクラ技師を隔離した。それも政府中枢からのものであったが、いったいぜんたいどうなっているのか分からなかった。

 「ふー、それにしてもどうなっているのよ! 」

 山崎技師の溜息まじりの愚痴はますますひどくなるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

処理中です...