冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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(閑話)全身拘束刑執行女のボヤキ

山崎技師のボヤキ(3)

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 昔からの事であるが、この国の政治家の裏表は相反する場合が数多くあった。敵対しているようであっても裏では繋がっていたり、共闘しているようで別の意図があったり・・・


 山川愛莉が拘束された事件は、意図せず行った暗号解読は事実であったが、それが国家機密漏洩罪を構成するものではなかった。ネット上に流出させた者は別にいたが、その者が愛莉の頭脳を電脳化して利用したのが真相だった。その者は”闇の司法部”の裏切り者だったから。もっとも、その裏切り者は国土安全省が拘束する前に何者かに殺害された。愛莉に全身拘束刑の執行命令書を作成した検事と司法長官の二人とも・・・

 「それにしたって、なんで首相が司法長官と兼務なの? 次の総選挙までの管理内閣のはずなのに?」

 山崎技師は色々困っていた。司法長官が就寝中に急死したのが一週間前で、そのあとは業務に支障が生じていたのだ。全身拘束刑に処せられている囚人に関する決裁のうち重要なものが長官決裁になるというのに、首相の決裁が遅れ気味になっていた。せめて別の省庁の長官が兼務してくれた方がマシだった。だから新規の全身拘束刑の執行がないだけでもありがたかった。

 「それにしても・・・この愛莉って子に関する決裁だけは異常に早いわね。申請すれば翌日戻るだなんて」

 昔のように紙の書類を上申するわけでなく、全て電子決済になった時代でも変わらないのは人的承認の遅さだった。途中で決済する役人が慎重だったり処理が遅かったりするので、「早く」なったとはいえ数か月単位もかかることがあった。でも、愛莉の再生計画はスムーズだった。あとは、帝央大学に派遣されたガイノイド・アイリの機体が回収される目途が立てばすぐにでも出来るはずだった。

 「なのに・・・なんで大学の反応が、おかしいのよ! いくら機体の素性を明かせないといっても、急いでいるのに! それにしても・・・エリーも回収? あれって、たしか?」

 山崎技師は思い出した。エリーはたしか天才的ハッカー少女が全身拘束刑を受けた姿だったと。でも、あれって、秘密恩赦で、どこかに? そのとき、テレビ通話の通知があった。その通知番号は見覚えがあった。

 「ひさしぶりです、山崎さん。あたしの分身の調子は?」

 「あ、あんたって・・・・えりい?」

 「そうよ! あたしの義体よ! 回収されるのはいつかしらと思って」

 それは、帝央大学理工学部にアイリとして派遣している本来はエリーの機体の持ち主であった。
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