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三姉妹との邂逅
128・丹下犯罪学研究所三階
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愛莉はとりあえず丹下犯罪学研究所の整理を始めた。自分を拘束していたブースはクラウゼに触らないようにと言われたのでそれ以外であったが、その時、クラウゼが何かをブース内に隠したことに気が付かなかった。
「それにしても、膨大ですわね。まるで倉庫!」
ガイノイドモードの時は「人間的」な主観を持たずに作業していたが今は愛莉として感じる事ができた。姿形はまだガイノイド・エリーのままだが。
「愛莉くん、といわせてもらおうか。この研究所の事はどこまで知っているのか君は?」
愛莉が振り返るとクラウゼはすぐ後ろにいた。どうもセンサーの一部が無効化しているのに気付いた。
「わかりません、実はまだ人間だった時に、ここにこんな古びた建物があるのも知りませんでした」
丹下犯罪学研究所は、帝央大学法学部最古の建物で、半世紀以上もほとんどリフォームもされず、時代に取り残されたようだった。内部も電子化されていない紙媒体の資料が蓄積されており「古新聞倉庫」と陰口があった。また書籍も本棚にすら整理されていないものも多かった。
「そうだろうな、丹下教授はここではまともに研究しているわけではないからな。教授がこの研究所を大学に使用許可を出された理由があるんだよな」
そういうとクラウゼは愛莉を三階へと案内した。そこに入るのは愛莉ははじめてだった。入らなかったのは興味がなかったわけではなく、ガイノイド・エリーの行動フィールドに入力されていなかったためだ。存在すらしらなかった。
三階にいくとそこは小さな扉が廊下に並んでいた。この丹下犯罪学研究所は小さな建物で、三階の床面積は下二階の半分ぐらいしかなかった。その三階の廊下は薄暗かったが、これは周囲が法学部の建物に囲まれ日が差し込まないためであった。
「ここに入ってもいいのですか?」
「大丈夫、愛莉くん。淳司の指示だからな。おっと、教授の許可はもらっていないからな、そのつもりで」
クラウゼの言葉に愛莉は不安を感じていたが、この感覚って人間らしいものだと感じ少し感動的だった。このとき、少しずつ電脳化されていても人間らしい感情が蘇っているのを感じていた。
一人と一体、いや二人はある扉を開けた。その扉には「最高機密」とあった。その中には古いサーバーらしきものと、数多くのファイルが並べられた本棚があって、その中央に今では博物館にでも所蔵されているようなブラウン管のモニターが置かれていた。そのモニターの前には事典のような装丁が施されたファイルがあった。そのファイルをクラウゼが開いた。そこにはびっちりとドイツ語の筆記文字が綴られていた。
「これはいったい?」
「これか? 全身拘束刑のための人体機械化技術の下書きだよ。全てはここから始まったんだよ」
クラウゼはそういうと、あるページを開いた。そこにはおぞましい画像があった。人間が切り刻まれているようにしかみえないものが!
「それにしても、膨大ですわね。まるで倉庫!」
ガイノイドモードの時は「人間的」な主観を持たずに作業していたが今は愛莉として感じる事ができた。姿形はまだガイノイド・エリーのままだが。
「愛莉くん、といわせてもらおうか。この研究所の事はどこまで知っているのか君は?」
愛莉が振り返るとクラウゼはすぐ後ろにいた。どうもセンサーの一部が無効化しているのに気付いた。
「わかりません、実はまだ人間だった時に、ここにこんな古びた建物があるのも知りませんでした」
丹下犯罪学研究所は、帝央大学法学部最古の建物で、半世紀以上もほとんどリフォームもされず、時代に取り残されたようだった。内部も電子化されていない紙媒体の資料が蓄積されており「古新聞倉庫」と陰口があった。また書籍も本棚にすら整理されていないものも多かった。
「そうだろうな、丹下教授はここではまともに研究しているわけではないからな。教授がこの研究所を大学に使用許可を出された理由があるんだよな」
そういうとクラウゼは愛莉を三階へと案内した。そこに入るのは愛莉ははじめてだった。入らなかったのは興味がなかったわけではなく、ガイノイド・エリーの行動フィールドに入力されていなかったためだ。存在すらしらなかった。
三階にいくとそこは小さな扉が廊下に並んでいた。この丹下犯罪学研究所は小さな建物で、三階の床面積は下二階の半分ぐらいしかなかった。その三階の廊下は薄暗かったが、これは周囲が法学部の建物に囲まれ日が差し込まないためであった。
「ここに入ってもいいのですか?」
「大丈夫、愛莉くん。淳司の指示だからな。おっと、教授の許可はもらっていないからな、そのつもりで」
クラウゼの言葉に愛莉は不安を感じていたが、この感覚って人間らしいものだと感じ少し感動的だった。このとき、少しずつ電脳化されていても人間らしい感情が蘇っているのを感じていた。
一人と一体、いや二人はある扉を開けた。その扉には「最高機密」とあった。その中には古いサーバーらしきものと、数多くのファイルが並べられた本棚があって、その中央に今では博物館にでも所蔵されているようなブラウン管のモニターが置かれていた。そのモニターの前には事典のような装丁が施されたファイルがあった。そのファイルをクラウゼが開いた。そこにはびっちりとドイツ語の筆記文字が綴られていた。
「これはいったい?」
「これか? 全身拘束刑のための人体機械化技術の下書きだよ。全てはここから始まったんだよ」
クラウゼはそういうと、あるページを開いた。そこにはおぞましい画像があった。人間が切り刻まれているようにしかみえないものが!
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