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三姉妹との邂逅
129・三人の男
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愛莉はそれを見て自分が受けた全身拘束刑を思い出し戦慄した。意識を維持したまま人間から機械に改造された激しい苦痛を。血の通った身体が機体にされた現在の姿を。
「どうしてここにこんなのがあるのですか?」
愛莉が尋ねるとクラウゼはそのその画像を指さした。切り刻まれた肉体の周囲にいる人物を指さした。
「これはな、ナノマシーンによる人体の機械化、サイバロイド技術の実証研究の中心メンバーさ。丹下教授は資金調達で、俺の親父が研究責任者、そしてこいつが麗華からきたホーという男さ。いまはどこにいるのかしらんけどさ」
ホー、その言葉に聞き覚えがあった。ホーはあの麗華の天才三姉妹の上司で、たしか麗華民主共和国先端科学技術開発部の長官だ。あの「悲劇の十三日」で事実上世界との戦争を指導したとされているが、なぜ丹下教授と一緒に写っているのだろう?
「いったい、どうなっているのか分かりません。もう少し分かりやすく説明してください」
電脳化された頭脳でも愛莉には想像できなかった。あまりにも関連がなさそうな三人が一緒にミッションを遂行できたのかと。
「君が生まれたころの事だが、この世界は自国第一主義による国家間の対立が激化していたんだ。政治家たちは自分たちの基盤硬めの為に、国内では国民の分断と対立を煽り、他国に対しては戦争の一歩手前といっていいほどの、強硬な姿勢をとっていたのさ。そのせいであの米中露の三者三つ巴の戦争が起きたわけだ。
その戦争の直前、現生人類よりも人工進化させる技術が秘密裡に実用化されたわけだ。資金は日本、技術はドイツ、そして実験場を麗華が提供したわけだ。そして誕生したもののひとつが君のような人間を素体にしたロボット化の技術さ」
愛莉はおもわず自分の機体を見てしまった。誰か見ても人間ではない姿。特殊な樹脂と金属で構成された外骨格、人体を改変したシステム、簡単に自我を書き換えられる電脳・・・
「そんな・・・でも、なんで丹下教授が関与していたのですか? 教授は犯罪学の先生ですよ、どうして協力したのですか?」
愛莉は憤っていたが、この機体では人間らしい事が出来ない事に気が付いた。涙を流せない事を! 眼球は除去され、代わりに外部状況を視覚的に分析するシステムが眼窩に埋め込まれているが、涙腺も除去されていた。眼球などないから!
「それはな、目的が違っていたが人間の機械化を望んでいたわけだ。丹下教授の目的は凶悪な犯罪者に死よりも恐ろしい制裁を受けさせることだったのさ! 俺の親父は人類の人工進化、そしてホーは・・・」
そういいかけたとき、愛莉は見せられていたファイルを壁にぶち投げていた。彼女は感情的になっていたが、表情はなかった、ガイノイドだから。
「どうしてここにこんなのがあるのですか?」
愛莉が尋ねるとクラウゼはそのその画像を指さした。切り刻まれた肉体の周囲にいる人物を指さした。
「これはな、ナノマシーンによる人体の機械化、サイバロイド技術の実証研究の中心メンバーさ。丹下教授は資金調達で、俺の親父が研究責任者、そしてこいつが麗華からきたホーという男さ。いまはどこにいるのかしらんけどさ」
ホー、その言葉に聞き覚えがあった。ホーはあの麗華の天才三姉妹の上司で、たしか麗華民主共和国先端科学技術開発部の長官だ。あの「悲劇の十三日」で事実上世界との戦争を指導したとされているが、なぜ丹下教授と一緒に写っているのだろう?
「いったい、どうなっているのか分かりません。もう少し分かりやすく説明してください」
電脳化された頭脳でも愛莉には想像できなかった。あまりにも関連がなさそうな三人が一緒にミッションを遂行できたのかと。
「君が生まれたころの事だが、この世界は自国第一主義による国家間の対立が激化していたんだ。政治家たちは自分たちの基盤硬めの為に、国内では国民の分断と対立を煽り、他国に対しては戦争の一歩手前といっていいほどの、強硬な姿勢をとっていたのさ。そのせいであの米中露の三者三つ巴の戦争が起きたわけだ。
その戦争の直前、現生人類よりも人工進化させる技術が秘密裡に実用化されたわけだ。資金は日本、技術はドイツ、そして実験場を麗華が提供したわけだ。そして誕生したもののひとつが君のような人間を素体にしたロボット化の技術さ」
愛莉はおもわず自分の機体を見てしまった。誰か見ても人間ではない姿。特殊な樹脂と金属で構成された外骨格、人体を改変したシステム、簡単に自我を書き換えられる電脳・・・
「そんな・・・でも、なんで丹下教授が関与していたのですか? 教授は犯罪学の先生ですよ、どうして協力したのですか?」
愛莉は憤っていたが、この機体では人間らしい事が出来ない事に気が付いた。涙を流せない事を! 眼球は除去され、代わりに外部状況を視覚的に分析するシステムが眼窩に埋め込まれているが、涙腺も除去されていた。眼球などないから!
「それはな、目的が違っていたが人間の機械化を望んでいたわけだ。丹下教授の目的は凶悪な犯罪者に死よりも恐ろしい制裁を受けさせることだったのさ! 俺の親父は人類の人工進化、そしてホーは・・・」
そういいかけたとき、愛莉は見せられていたファイルを壁にぶち投げていた。彼女は感情的になっていたが、表情はなかった、ガイノイドだから。
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