124 / 198
迷宮魔道な場所へ
115・晴美の記憶を持つロボット
しおりを挟む
畦地晴美という女を愛莉は好きでなかった。でもタオ先輩の手前、それなりの態度をとっていたつもりだった。でも嫌っているのは彼女も同じであった。愛莉は持って生まれた高い知能で問題を簡単に解ける事に嫉妬していた。晴美から言わせればさしずめ機械のような女と。そんな彼女は今や完全なロボットになっていた。
人間の電脳化を行う場合、元の脳細胞を電子素子に変換するには様々な方法がある。ただ置き換えるだけでは複雑な人間の自我を再現できなくなる危険があり、電脳化の措置を取るには技術的なハードルがあった。愛莉の場合は「連中」の手回しで、世界でも五本の指に入る技術を持つ柴田技師長によって改造されので、人格の再現はしやすいほど高性能だった。
しかし晴美の場合は、臓器移植のために摘出される腎臓のような扱いで元の身体から抜かれて、相当簡便な手法で電脳化されたようだと、そう愛莉は思った。なぜなら目の前の晴美を名乗る機体はただのロボットでしかないと感じたからだ。晴美の記憶を持つロボットだと。
晴美の外観はガイノイド・アイリのものよりもシンプルで量産型ガイノイドの外骨格であった。優雅な曲線美は無く3D設計ではなく紙の上に定規で設計されたような直線的な感じがする武骨そのものと感じられた。そして仕草はギコチナイし、機能も限定的のようだった。どうやら間に合わせに電脳を移植したようにも思えた。
「愛莉、とりあえずあたしがサポートします。よろしく。人間だった時はあなたは嫌だったけど、同じ機械に生まれ変わったので、組織に従っていきましょう」
抑揚のない晴美の言葉に人間だった時の感情があるように感じられるが、それは記録でそうなっているだけのようだ。晴美の肉体は喪失し電脳化される際に感情といった自我を失くしてしまい、今は組織と呼ぶ「連中」の操り人形でしかなかった。金属と合成樹脂で構成された人形を稼働させるだけのシステムでしかなかった。
もっともそれはアイリも一緒であった。ただ、アイリにはアイリと山村愛莉の自我があった、二つであったが。いま、此処には組織に必要とされているアイリの方しか存在しないはずであったが、もうひとつの愛莉は「連中」の黒幕を暴くためにいた。それは危険な事であった。バレるのは時間の問題なのかもしれないからだ。このとき、不安な点があった。もし、この瞬間に本体とのリンクが解除されたら自分の自我はどうなってしまうのだろうか? 上手くやってくれたらいいのであるが、淳司とクラウゼを信じるしかなかった。
「それでは愛莉。立ち上がって!」
晴美はアイリの機体を持ち上げた、与えられた指示に従って。この時、愛莉は彼女には元の人間の姿に戻れる可能性がないことが切なくなった。たとえ、嫌な女といえども「連中」の犠牲者に変わりないから。
人間の電脳化を行う場合、元の脳細胞を電子素子に変換するには様々な方法がある。ただ置き換えるだけでは複雑な人間の自我を再現できなくなる危険があり、電脳化の措置を取るには技術的なハードルがあった。愛莉の場合は「連中」の手回しで、世界でも五本の指に入る技術を持つ柴田技師長によって改造されので、人格の再現はしやすいほど高性能だった。
しかし晴美の場合は、臓器移植のために摘出される腎臓のような扱いで元の身体から抜かれて、相当簡便な手法で電脳化されたようだと、そう愛莉は思った。なぜなら目の前の晴美を名乗る機体はただのロボットでしかないと感じたからだ。晴美の記憶を持つロボットだと。
晴美の外観はガイノイド・アイリのものよりもシンプルで量産型ガイノイドの外骨格であった。優雅な曲線美は無く3D設計ではなく紙の上に定規で設計されたような直線的な感じがする武骨そのものと感じられた。そして仕草はギコチナイし、機能も限定的のようだった。どうやら間に合わせに電脳を移植したようにも思えた。
「愛莉、とりあえずあたしがサポートします。よろしく。人間だった時はあなたは嫌だったけど、同じ機械に生まれ変わったので、組織に従っていきましょう」
抑揚のない晴美の言葉に人間だった時の感情があるように感じられるが、それは記録でそうなっているだけのようだ。晴美の肉体は喪失し電脳化される際に感情といった自我を失くしてしまい、今は組織と呼ぶ「連中」の操り人形でしかなかった。金属と合成樹脂で構成された人形を稼働させるだけのシステムでしかなかった。
もっともそれはアイリも一緒であった。ただ、アイリにはアイリと山村愛莉の自我があった、二つであったが。いま、此処には組織に必要とされているアイリの方しか存在しないはずであったが、もうひとつの愛莉は「連中」の黒幕を暴くためにいた。それは危険な事であった。バレるのは時間の問題なのかもしれないからだ。このとき、不安な点があった。もし、この瞬間に本体とのリンクが解除されたら自分の自我はどうなってしまうのだろうか? 上手くやってくれたらいいのであるが、淳司とクラウゼを信じるしかなかった。
「それでは愛莉。立ち上がって!」
晴美はアイリの機体を持ち上げた、与えられた指示に従って。この時、愛莉は彼女には元の人間の姿に戻れる可能性がないことが切なくなった。たとえ、嫌な女といえども「連中」の犠牲者に変わりないから。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!
ジャン・幸田
SF
わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!
それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド
ジャン・幸田
SF
昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?
女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!
彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱
ジャン・幸田
SF
何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。
過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。
どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!
ジャン・幸田
SF
バイトの面接に行ったその日からシフト?
失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?
機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる