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迷宮魔道な場所へ
114・迷宮魔道な場所へ(5)
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タオ先輩によって再構成された愛莉の人格はオリジナルとは似て非ざるものだった。簡単に言えば記憶などをベースにした別人だった。ダミーのガイノイド・アイリでなければ本来の山川愛莉は本当に消滅していたといえた。全てはエキゾチック・ブレインに順応するためのものであったといえる。肉体を失い、機械のボディを操り、電脳空間に閉じ込められるための措置だった。
「タオ先輩。この身体に生まれ変わって嬉しいですわ。喜んでなんでもします」
愛莉のボディからはそんな言葉が発せられた。しかし、本来の愛莉はそんなことを言うはずはなかった。このとき、愛莉の電脳システムは淳司版とタオ版の二通りが併存していた。そのことをタオ先輩は知る由もなかった。
「そうこなくちゃね愛莉。あなたよりも前に晴美を改造したんだけどね、失敗してね。事前にこの計画を教え込んでやったんだけど、暴走しちゃってね。仕方ないから頭脳だけを分離して、身体の方は放棄したのよ」
どうも頭部が破損した状態になった畦地晴美の事をいっているようだった。彼女は「殺害」されたはずだが、「頭脳」だけは存在しているようだ。やはり晴美がそんなことになったのも「連中」の仕業だといえたが、その「連中」におけるタオ先輩の役割はわからなかった。一員なのは間違いないが、下っ端のエンジニアか工作員なのか、それとも重要な地位にいるのか、そのときなにも分からなかった。分からないから危険な潜入捜査の片棒を手伝わされているのであるけど。
あとで思った事であるが、愛莉はこの時タオ先輩が真相を語ってくれたのなら、その後数多くの犠牲者が出る事もなかったのかもしれなかった。しかし、そんな都合の良い事はなかった。やはり簡単にミステリーが解かれることもないし、黒幕が姿を現したわけなかった。
タオ先輩が合図をすると、後ろからもう一体のガイノイドが現れた。そのガイノイドは古典的なドイツSF映画「メトロポリス」に登場した「マリア」のような外骨格を纏っていた。最新型に近いアイリやエリーと比べたら機能が劣っているような雰囲気であった。
「紹介するわね。そちらが晴美よ! 晴美の電脳を移植したのよ、ここでのサポーターだから頼りにしてよ」
そう紹介すると晴美は愛莉にこう語りかけてきた。
「人間だった時はあなたの事は嫌いだったのよライバルとしてね。でも同じ機械になったのだから与えられた使命により、あなたを助けるわよ。それが人類の次の進化の為になるからね」
晴美は人間だった時には野心家で人の嫌味をいうような、典型的ないじめっ子みたいな性格で、愛莉は好きでなかったが、機械にされ憐れともいえる姿にされていたことにショックを受けていた。しかし、愛莉の人工音声からは、一緒にやりましょうといっていた。ここは迷宮魔道の中枢部、ここでは機械に支配された機械たちが住まう世界であった。そんな「連中」がエキゾチック・ブレインで何をしようというのだろうか?
「愛莉、エキゾチック・ブレインが完成するのは来週の金曜日だからね、とりあえず木曜日までは徐々にあなたを調整していくからね。なんだって嗅ぎまわっている諦めの悪い奴らがいるようだからね」
そういってタオ先輩は晴美と一緒に愛莉の頭部を改造し始めた。電脳とボディの接続を離合可能にするための作業をしていた。
「タオ先輩。この身体に生まれ変わって嬉しいですわ。喜んでなんでもします」
愛莉のボディからはそんな言葉が発せられた。しかし、本来の愛莉はそんなことを言うはずはなかった。このとき、愛莉の電脳システムは淳司版とタオ版の二通りが併存していた。そのことをタオ先輩は知る由もなかった。
「そうこなくちゃね愛莉。あなたよりも前に晴美を改造したんだけどね、失敗してね。事前にこの計画を教え込んでやったんだけど、暴走しちゃってね。仕方ないから頭脳だけを分離して、身体の方は放棄したのよ」
どうも頭部が破損した状態になった畦地晴美の事をいっているようだった。彼女は「殺害」されたはずだが、「頭脳」だけは存在しているようだ。やはり晴美がそんなことになったのも「連中」の仕業だといえたが、その「連中」におけるタオ先輩の役割はわからなかった。一員なのは間違いないが、下っ端のエンジニアか工作員なのか、それとも重要な地位にいるのか、そのときなにも分からなかった。分からないから危険な潜入捜査の片棒を手伝わされているのであるけど。
あとで思った事であるが、愛莉はこの時タオ先輩が真相を語ってくれたのなら、その後数多くの犠牲者が出る事もなかったのかもしれなかった。しかし、そんな都合の良い事はなかった。やはり簡単にミステリーが解かれることもないし、黒幕が姿を現したわけなかった。
タオ先輩が合図をすると、後ろからもう一体のガイノイドが現れた。そのガイノイドは古典的なドイツSF映画「メトロポリス」に登場した「マリア」のような外骨格を纏っていた。最新型に近いアイリやエリーと比べたら機能が劣っているような雰囲気であった。
「紹介するわね。そちらが晴美よ! 晴美の電脳を移植したのよ、ここでのサポーターだから頼りにしてよ」
そう紹介すると晴美は愛莉にこう語りかけてきた。
「人間だった時はあなたの事は嫌いだったのよライバルとしてね。でも同じ機械になったのだから与えられた使命により、あなたを助けるわよ。それが人類の次の進化の為になるからね」
晴美は人間だった時には野心家で人の嫌味をいうような、典型的ないじめっ子みたいな性格で、愛莉は好きでなかったが、機械にされ憐れともいえる姿にされていたことにショックを受けていた。しかし、愛莉の人工音声からは、一緒にやりましょうといっていた。ここは迷宮魔道の中枢部、ここでは機械に支配された機械たちが住まう世界であった。そんな「連中」がエキゾチック・ブレインで何をしようというのだろうか?
「愛莉、エキゾチック・ブレインが完成するのは来週の金曜日だからね、とりあえず木曜日までは徐々にあなたを調整していくからね。なんだって嗅ぎまわっている諦めの悪い奴らがいるようだからね」
そういってタオ先輩は晴美と一緒に愛莉の頭部を改造し始めた。電脳とボディの接続を離合可能にするための作業をしていた。
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