冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

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迷宮魔道な場所へ

77・鋼と生身の集合体

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 グレン・クラーク、その人物は帝央大ではちょっとした有名人だった。190㎝を超える巨体であったが、半袖半ズボンから露出する、その手足は剥き出しのメタリックなボディがむき出しになっていた。人工皮膚で被膜することも可能なのにあえてそうしていた。その理由を彼は「これが人類の将来あるべき姿だから」と主張していた。

 二十一世紀も中葉にさしかかった現在、現生の人類に変わる未来人類の有り様について様々なものが提案されていた。遺伝子操作によるもののほか、電脳化と義体化による肉体改変を行うという主義者も少なくないが、グレンは学内の急先鋒といってもいい教授だった。

 そんな彼の主張に愛莉は嫌悪感を抱いていた。身体を機械に置き換えるなんて嫌だと。でも皮肉な事に機械に改造されたのだから、なんとも言えない気分になっていた。直接話したことはないが、どうも向こうは存在を知っていたようだから。

 「父は申しておりました。あなたの研究は人類を本当にかえるものだと称賛していましたわ」

 真由美はそう答えたが、たぶんお世辞もあるのだと愛莉にはわかった。かたくなまでに機械化義足の装着を拒否している彼女の事だから。そのとき、真由美の前にいるって事はエリーと対面していることになったので、少しまずいと思った。この時グレンのボディから探査ビームの照射を感知したから。もしかするとエリーの電脳が愛莉のものだとバレるかもしれないので、一時的にシャットダウンすることにした。

 それからグレンは自分がしている研究について説明をしていたが、周囲の者は少し困惑顔をしていた。それは操も同じで、予定にないですよといわんばかりにグレンのメタリックな肘に軽く小突いていた。その意図に気付いたグレンは何かバツが悪そうにいった。

 「すまない、君たちはここの見学途中なんだよな。よかったら後でうちの研究所にも来てもいいぞ、みんな!」

 その言葉に、一部の学生から良かったという声が上がった。それは事前に予定されていた見学ポイントだったからだ。それにしても、最初はダメだったのになんで途中でよくなったのかという説明はなかった。

 その間、愛莉の意識はフリーズしていたので、何も考えないような状態なので、ただ情報を受容していた。このとき、完全にエリーとして稼働していたが、相変わらず探査ビームの照射は続いていた。この時、あるアラートがあった。電脳構造がスキャンされていますと。

 一応、エリーも別の女性全身拘束刑受刑者ということになっているので、電脳が人間の脳漿を加工したものだと発覚するのは仕方なかったし、おそらく総長の手元にある秘密ファイルなんか簡単に閲覧しているはずだから知っているはずだ。エリーはアイリと同型の人間改造型ガイノイドだと。しかし、このグレンの探査ビームの探知がどのレベルまで行われているのかが問題であった。もしかすると、愛莉のハイスペックな脳漿が素体だとばれた可能性があったからだ。
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