冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
85 / 198
迷宮魔道な場所へ

76・グレン・クラーク

しおりを挟む
 最初に一行が案内されたのは軌道エレベーターの研究をしているところだった。そこは巨大な地下空間に様々な器具が置かれていたが、どのように役に立つのかは分からなかった。しかも案内役の研究員は理論の説明はしても、装置の事はなんら触れる事はなかった。そのせいか、興味などないとばかりに眠り込む者もいるぐらい退屈なものだった。

 愛莉は真由美もそんな風になっていると思ってのぞき込んでみたら何故か彼女は人形のように瞳を開けたまま硬直していた。それで説明が終わったところで聞いてみた。

 「真由美さん、どうされました?」

 すると真由美は特になにもないという表情をして笑っていた。

 「エリー! あなたあたしが居眠りしていたと思っているのでしょ! 聞いていたわよ、軌道エレベーターの強度なんかをね。それにしても、あんな軌道エレベータで活動する工作機械って生体組織を使ってたら絶対ダメよね!」

 そんな話はたしかにしていた。でも、なんで真由美があんな喜怒哀楽もない顔で聞いていたのか分からなかった。

 「そんなことよりエリー! この研究所ってなんかおかしいと思うわよ。なんか機械と人間が合成したような者が多いわ」

 真由美はそう指摘したが、たしかに愛莉もエリーが感じ取るセンサーで分かっていた。反応上は機械のシグナルなのに外見は人間にしかみえない研究員がいたのだ。さっき軌道エレベーターについて説明していた研究員も電脳特有のシグナルを発していたし、他にも作業ロボットでもないのに同様な機械の反応をしているのもいた。ちなみに全身拘束刑受刑者の場合、内部も外見も完全に機械にしかみえないので、そのような違和感はなかった。

 「そうですわ。それにしても真由美さんはなぜ分かるのですか?」

 「ううん、エリー。なんとなくわね、ほら言うじゃないのよ第六感なんてことをね。なんか感じるわ。それにロボットみたいでも人間みたいなのもいるわ、あそこに!」

 指さした先には確かにそんな感じの者がいた。でも、それはフランケンシュタインみたいに機械と人間が奇妙な合体をしたような人物だった。すると向こうから話しかけてきた。

 「はじめまして安養寺真由美様。わが研究室にようこそ! わたしはサイバネチック研究所の所長のグレン・クラークです。あなたのお父様とはいろいろと協力していただいております」

 それが黒幕の一人かもしれない人物のようにしか愛莉は思えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!

ジャン・幸田
青春
 二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!  そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!

ジャン・幸田
SF
 バイトの面接に行ったその日からシフト?  失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?  機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!

処理中です...