33 / 198
エリーは探偵として推理する
32・身体は監獄のなかに(1)
しおりを挟む
人間という存在は身体という器の中に閉じ込められたものであるという表現がある。自分の五感で感じる事が出来るのが、身体で触れる事が出来る範囲だけであり、文明の利器によって遠く離れた事象を感じる事も知ることも出来るとはいえ、それらも聴覚や視覚などで感じられる範囲でしかない。
そんな身体すら閉じ込められた存在が全身拘束刑の囚人であった。一見すると非人道的な刑罰であるが、元々は身体障碍者が健常な者と同様の生活を送れるように開発されたサイバノイド技術の応用であった。
だが、新たな技術革新があると必ず行われるのが軍事技術への転用だった。最小限の身体改造によって鍛錬された兵士に生まれ変われるとして研究開発が行われた。それらの技術が成熟すると軍事的抑止力が形成され、結果として平和な状態になるとの楽天的な考えすらあった。しかし、それは大いなる過ちであった。世界各地の軍事独裁政権やテロリスト集団によって悪用されたことで、世界中が混乱した。
麗華民主共和国による自爆的無差別攻撃の前後は、そのような改造された人間によるテロや戦闘が多発し、結果的に世界大戦と同様な混乱が広がった。それを収拾できたのも従来の人類ではなく、改造された人間の叡智であった。しかし、それは新たな脅威の始まりであった。世界各国がその脅威に対処するため、人体の改造にありとあらゆる制限をかけるようになった。改造しても正当な理由なく人類をはるかに凌ぐような能力を与えてはならないとされたのだ。
そんな中、刑務所に代わる身体刑として導入されたのが、囚人を一般社会で働かせるために改造する全身拘束刑であった。その刑は監視システムを体内にインプラントして行動を管理し、労働者として働かすことで贖罪させようというものであった。また刑の軽重によって改造程度が大きく異なっていた。軽い刑なら日常行動の観察のためのインプラント挿入ですむが、重くなると身体の改造だけでなく、電脳化処理したあとで自我の書き換えを行うものまであった。従来の死刑相当の場合は完全な機械化と自我の喪失という人間の尊厳の抹殺処理が執行される。そのため、完全な機械奴隷と揶揄された。
愛莉の場合は、柴田技師長に送られてきた執行作業指示書に基づいて全身拘束刑に処せられたが、その指示書に問題があった。司法長官や検察庁次官や最高裁判事の正式な署名捺印があったが、従来の死刑囚なみの措置になっていた。いわば、愛莉は懲役10年のはずが死刑執行と同等の措置をされてしまったのであった。そのため愛莉はガイノイド・アイリに改造されてしまった。そのため自我を失ったアイリはそのまま壊れるまで機械として活動していかなければならないはずだった。それを救ったのが長崎淳司のクライアントであった。
淳司によって自我を取り戻した愛莉はいまエリーの中にいた。姿はガイノイドのままだったが、その身体を自分で確かめる事が出来るようになった。今までの愛莉には感じる事が出来なかった事であった。
そんな身体すら閉じ込められた存在が全身拘束刑の囚人であった。一見すると非人道的な刑罰であるが、元々は身体障碍者が健常な者と同様の生活を送れるように開発されたサイバノイド技術の応用であった。
だが、新たな技術革新があると必ず行われるのが軍事技術への転用だった。最小限の身体改造によって鍛錬された兵士に生まれ変われるとして研究開発が行われた。それらの技術が成熟すると軍事的抑止力が形成され、結果として平和な状態になるとの楽天的な考えすらあった。しかし、それは大いなる過ちであった。世界各地の軍事独裁政権やテロリスト集団によって悪用されたことで、世界中が混乱した。
麗華民主共和国による自爆的無差別攻撃の前後は、そのような改造された人間によるテロや戦闘が多発し、結果的に世界大戦と同様な混乱が広がった。それを収拾できたのも従来の人類ではなく、改造された人間の叡智であった。しかし、それは新たな脅威の始まりであった。世界各国がその脅威に対処するため、人体の改造にありとあらゆる制限をかけるようになった。改造しても正当な理由なく人類をはるかに凌ぐような能力を与えてはならないとされたのだ。
そんな中、刑務所に代わる身体刑として導入されたのが、囚人を一般社会で働かせるために改造する全身拘束刑であった。その刑は監視システムを体内にインプラントして行動を管理し、労働者として働かすことで贖罪させようというものであった。また刑の軽重によって改造程度が大きく異なっていた。軽い刑なら日常行動の観察のためのインプラント挿入ですむが、重くなると身体の改造だけでなく、電脳化処理したあとで自我の書き換えを行うものまであった。従来の死刑相当の場合は完全な機械化と自我の喪失という人間の尊厳の抹殺処理が執行される。そのため、完全な機械奴隷と揶揄された。
愛莉の場合は、柴田技師長に送られてきた執行作業指示書に基づいて全身拘束刑に処せられたが、その指示書に問題があった。司法長官や検察庁次官や最高裁判事の正式な署名捺印があったが、従来の死刑囚なみの措置になっていた。いわば、愛莉は懲役10年のはずが死刑執行と同等の措置をされてしまったのであった。そのため愛莉はガイノイド・アイリに改造されてしまった。そのため自我を失ったアイリはそのまま壊れるまで機械として活動していかなければならないはずだった。それを救ったのが長崎淳司のクライアントであった。
淳司によって自我を取り戻した愛莉はいまエリーの中にいた。姿はガイノイドのままだったが、その身体を自分で確かめる事が出来るようになった。今までの愛莉には感じる事が出来なかった事であった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!
ジャン・幸田
SF
わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!
それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド
ジャン・幸田
SF
昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?
女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!
彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱
ジャン・幸田
SF
何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。
過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。
どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

バイトなのにガイノイドとして稼働しなくてはならなくなりました!
ジャン・幸田
SF
バイトの面接に行ったその日からシフト?
失業して路頭に迷っていた少女はラッキーと思ったのも束の間、その日から人を捨てないといけなくなった?
機械服と呼ばれる衣装を着せられた少女のモノ扱いされる日々が始まった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる