冤罪! 全身拘束刑に処せられた女

ジャン・幸田

文字の大きさ
上 下
34 / 198
エリーは探偵として推理する

33・身体は監獄のなかに(2)

しおりを挟む
 「ねえエリー、あなたってロボットなのよね? どこの製品なの?」

 真由美が聞いてきた。彼女の眼にはやはりガイノイドにしかみえないのは当然だった。

 「わたしは・・・先端科学技術開発公社製です。いろんなメーカーの共同作業で製造されたものです」

 エリーの人工音声はそう答えたが、それは全身拘束刑を執行している組織の名称だった。一般にはその名称で通じているが、製品のどれに囚人が内臓されているのかは高度の機密であった。だから、数多くの一般的なロボットも製造して、カムフラージュしていた。

 「ふーん、そうなんだ。もしかすると、あなたって人間、なんてことはないの? うちの父が部品を納入しているっていっていたから」

 真由美の指摘は正しかった。目の前に真由美が姉と慕う女が内臓されているから。でも、それを答える事は許されなかった。

 「まさか! そんなことありませんよ。それほど高度な製品ではありませんわ! それに、ここにはふさわしくありませんわ。矯正活動になりませんわ」

 エリーの中で愛梨は告白したいという衝動に駆られていたが、その時はまだ発言の自由までは承認されていなかった。この時、愛莉は自分を慕う彼女の前で自分だと名乗り出る事が出来ないという苦しみと、機械奴隷に落とされた自分の姿だと知られずに済んでいるという安心感が混在していた。

 「それもそうね。でも、ここ帝央ってそういった全身拘束刑受刑者を受け入れているようようだから、もしかするとお姉ちゃんがいるかもしれないからね。なんか手がかりがないかなあと思ってね」

 もしかすると真由美は真相を知っているのかもしれなかった。秘密裡に愛莉が改造されたことを。でも、それをどうやって?

 「そうなのですか、でもそれって危険ではありません? もしかすると、その人ってここにいないかもしれないですわ」

 愛莉は真由美が危険な事をしているような気がして心配だった。この真由美という娘は学校の成績は中の下ぐらいで、世間の常識から少しずれているところもあるが、蛮勇ともいえるような無茶な事をやりかねない無鉄砲な面があった。実際、クラスでいじめっ子グループに突進したこともしばしばあって、相当な怪我をしたこともあったという。もちろん、怪我の理由は足が不自由なのに歯向かったからだ。

 「そうかもしれないわね。だからあなたをお願いしたのよ。あなたと一緒ならお姉ちゃんがいなくなったところに入れるからね」

 その言葉にエリーいや愛莉は絶句した。この娘は無茶な事をしようとしていると。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ロボリース物件の中の少女たち

ジャン・幸田
キャラ文芸
高度なメタリックのロボットを貸す会社の物件には女の子が入っています! 彼女たちを巡る物語。

機械娘として転移してしまった!

ジャン・幸田
SF
 わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!  それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

AIアイドル活動日誌

ジャン・幸田
キャラ文芸
 AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!  そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

昼は学生・夜はガイノイド

ジャン・幸田
SF
 昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?  女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!   彼女の想いの行方はいかなるものに?

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱

ジャン・幸田
SF
 何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。  過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。  どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ロボットウーマン改造刑を受けた少女

ジャン・幸田
SF
 AI搭載型ロボットが普及した未来、特に技能のない人間たちは窮地に陥っていた。最小限の生活は保障されているとはいえ、管理され不自由なデストピアと世界は化していた。  そんな社会で反体制活動に参加し不良のレッテルを貼られた希美は保安処分として「再教育プログラム」を受けさせられ、強制的にロボットと同じ姿に変えられてしまった! 当局以外にはロボット以外の何者でもないと認識されるようになった。  機械の中に埋め込まれてしまった希美は、ロボットウーマンに改造されてしまった!

処理中です...