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エリーは探偵として推理する

22・仮想空間で(1)

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 エリーと淳司の動きは緩慢だった。エリーの有機物交換が終わっても特にやることはなかった。一方の真由美は書架の中から二十世紀の連続殺人紳士録という、一見すると悪趣味な本を取り出して読み始めた。午後の1コマ分の時間が空いていたからだ。その間の時間を利用して仮想空間でエリーは愛莉として淳司と打ち合わせをしていた。

 「それにしても、なんでここでは高校生の姿なのよ、あたいは!」

 愛莉は、この仮想空間上の自分のアバターの姿に違和感を感じていた。それに、このアバターでいる方が生身の人間としての感覚が蘇ることにもだ。

 「いいじゃねえかよ! それが君の精神状態かもな。あのガイノイドの姿の方がマシか?」

 淳司は相変わらずチャラ男のままだった。しかも、エリーの目の前にいるのと同じ姿なのだ!

 「いやよ、あんな囚人服なんて。それにしても真由美ちゃんを巻き込みそうだけど、本当に大丈夫なの?」

 愛莉は自分のスカートをひらひらさせていた。なんとなくそれをしたくなっていたからだ。この時の仮想現実のフィールドは丹下犯罪学研究所に設定されていたので、現実の世界と少しずれた空間にいるような気がした。

 「それなんだか、どうも安養寺ハイテクノロジーの関係者が関与しているようなっだ。まあ、真由美ちゃんの父親は知らない事のようだけど。もしかすると・・・もしかしてなんだ!」

 「なによそれ、教えてよ!」

 「まあ、せかさなくてもいいから、おいおい分かってくるはずだ。それはそうと、君の方に理工学部に潜入しているアイリの情報伝達は受け取っているか?」

 「ええ、でも不思議な感じよ。最近まで学生だったあたしがガイノイドとして活動しているのだから」

 愛莉が理工学部にいるアイリの活動データを司法省の行刑局から転送されるようにシステムが構築されていた。そうしないと、山村愛莉が全身拘束刑に処せられていることにならないからだ。ただ、転送されてこられるのは、司法省のシステム上、三日に一回なので、どうしてもタイムラグが生じていた。

 「それはよかった。俺も確認したが、いまのところ問題はなさそうだ。それはそうと、今回の事件のおさらいをしないか?」

 「おさらい、なんでなの?」

 「実は、分かって来た事もあるからさ。まあおさらいをしよう」

 そういって淳司は大きなスクリーンを仮想空間の中で展開した。
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