22 / 198
エリーは探偵として推理する
21.ランチタイム
しおりを挟む
丹下犯罪学研究所にも昼が来た。とはいえ、この日は丹下教授は出勤せず、真由美は所用でここにこなかったので、古い書籍に埋もれた部屋にいるのは淳司とエリーだった。この時、エリーは有機物の補給を自ら行っていた。あらかじめ用意されていたビア樽のような金属容器に脇腹から伸ばした供給ケーブルを接続していた。このような光景は人工筋肉を使用したロボットにも見られる光景なので他の人が見ても奇異ではないが、実はこれは全身拘束刑を受けた受刑者の老廃物排出と有機物の供給でもあった。
「ただいまエリーの有機物交換実行中です。あと十五分稼働することができません」
エリーの自動応答システムはそうこたえたが、これがガイノイドエリーの、今の愛莉のランチタイムであった。全身拘束刑の囚人に相応しい待遇であった。人間らしい食事は出来ず、機械としてのメンテナンスの一環として行われるだけであった。
その様子をデスクの上から淳司は頬ずりをしながら見ていた。その時デスクの上には大学の売店のひとつであるファーストフード店で買って来たテイクアウトのセットが置かれていたが、手を付けようとしなかった。彼は仮想現実の中で愛梨と打ち合わせをしていた。そのとき、真由美が戻って来た。彼女も同じファーストフード店で買って来たようだ。
彼女のように車椅子でも校内がバリアフリー構造になっているので、それなりに自由に行く事ができるのであるが、どうしても行けないところがあるとすれば、同伴者が必要な場所であった。具体的には所属していない他の学部の関連施設などだ。
「長崎先生とあたしって同じものを買ってきてしまったの? 信じられないわ!」
真由美は車椅子の前のカバン入れからテイクアウトの商品をだしていた。彼女は膝の少し上から足がないので、前側にもカバンをかけるところを置いていた。そしてテイクアウトを置いた机の横にある椅子の上に上半身の力だけで移動した。真由美は高校でもそうやって普通の生徒が座る椅子に腰かけていたのだ。
「なかなかどうしたものなの? 器用なものだね、でも君って望めば下半身を改造してサイボーグ義足を装着することぐらいできるだろ? お父さんの会社に頼めば?」
淳司はそういったが、ある程度の事は知っていた。彼女の父親が経営する会社の製品は高価な反面、人間のものと見分けが出来ないぐらい精巧な義手に義足、そして義体を販売していた。でも真由美は自社の製品を義足として装着するのを頑固拒絶していた。その理由はトラウマがあるようであった。
「それは絶対ないわ! そんなことをしたら自分じゃなくなるもの! 脚のない今の不自由な身体でも幸せよ! あとはお姉ちゃんさえ見つかればね!」
真由美は、これが庶民の味なんだと確かめるようにハンバーガーを食していた。彼女はこうすれば世間知らずのお嬢さんというステレオタイプから出て行けると信じているようであった。
「ただいまエリーの有機物交換実行中です。あと十五分稼働することができません」
エリーの自動応答システムはそうこたえたが、これがガイノイドエリーの、今の愛莉のランチタイムであった。全身拘束刑の囚人に相応しい待遇であった。人間らしい食事は出来ず、機械としてのメンテナンスの一環として行われるだけであった。
その様子をデスクの上から淳司は頬ずりをしながら見ていた。その時デスクの上には大学の売店のひとつであるファーストフード店で買って来たテイクアウトのセットが置かれていたが、手を付けようとしなかった。彼は仮想現実の中で愛梨と打ち合わせをしていた。そのとき、真由美が戻って来た。彼女も同じファーストフード店で買って来たようだ。
彼女のように車椅子でも校内がバリアフリー構造になっているので、それなりに自由に行く事ができるのであるが、どうしても行けないところがあるとすれば、同伴者が必要な場所であった。具体的には所属していない他の学部の関連施設などだ。
「長崎先生とあたしって同じものを買ってきてしまったの? 信じられないわ!」
真由美は車椅子の前のカバン入れからテイクアウトの商品をだしていた。彼女は膝の少し上から足がないので、前側にもカバンをかけるところを置いていた。そしてテイクアウトを置いた机の横にある椅子の上に上半身の力だけで移動した。真由美は高校でもそうやって普通の生徒が座る椅子に腰かけていたのだ。
「なかなかどうしたものなの? 器用なものだね、でも君って望めば下半身を改造してサイボーグ義足を装着することぐらいできるだろ? お父さんの会社に頼めば?」
淳司はそういったが、ある程度の事は知っていた。彼女の父親が経営する会社の製品は高価な反面、人間のものと見分けが出来ないぐらい精巧な義手に義足、そして義体を販売していた。でも真由美は自社の製品を義足として装着するのを頑固拒絶していた。その理由はトラウマがあるようであった。
「それは絶対ないわ! そんなことをしたら自分じゃなくなるもの! 脚のない今の不自由な身体でも幸せよ! あとはお姉ちゃんさえ見つかればね!」
真由美は、これが庶民の味なんだと確かめるようにハンバーガーを食していた。彼女はこうすれば世間知らずのお嬢さんというステレオタイプから出て行けると信じているようであった。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説

AIアイドル活動日誌
ジャン・幸田
キャラ文芸
AIアイドル「めかぎゃるず」はレトロフューチャーなデザインの女の子型ロボットで構成されたアイドルグループである。だからメンバーは全てカスタマーされた機械人形である!
そういう設定であったが、実際は「中の人」が存在した。その「中の人」にされたある少女の体験談である。

機械娘として転移してしまった!
ジャン・幸田
SF
わたしの名前、あれ忘れてしまった。覚えているのはワープ宇宙船に乗っていただけなのにワープの失敗で、身体がガイノイドになってしまったの!
それで、元の世界に戻りたいのに・・・地球に行く方法はないですか、そこのあなた! 聞いているのよ! 教えてちょうだい!

昼は学生・夜はガイノイド
ジャン・幸田
SF
昼間は人間だけど夜になるとガイノイドに姿を変える。もう、そんな生活とはいったい?
女子校生のアヤカは学費と生活費を出してもらっている叔父夫婦の店でガイノイド”イブ”として接客していた。そんな彼女が気になっていた客は、機械娘フェチの担任教師の風岡だった!
彼女の想いの行方はいかなるものに?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

機械娘の機ぐるみを着せないで!
ジャン・幸田
青春
二十世紀末のOVA(オリジナルビデオアニメ)作品の「ガーディアンガールズ」に憧れていたアラフィフ親父はとんでもない事をしでかした! その作品に登場するパワードスーツを本当に開発してしまった!
そのスーツを娘ばかりでなく友人にも着せ始めた! そのとき、トラブルの幕が上がるのであった。

人形娘沙羅・いま遊園地勤務してます!
ジャン・幸田
ファンタジー
派遣社員をしていた沙羅は契約打ち切りに合い失業してしまった。次の仕事までのつなぎのつもりで、友人の紹介でとある派遣会社にいったら、いきなり人形の”中の人”にされたしまった!
遊園地で働く事になったが、中の人なのでまったく自分の思うどおりに出来なくなった沙羅の驚異に満ちた遊園地勤務が始る!
その人形は生身の人間をコントロールして稼動する機能があり文字通り”中の人”として強制的に働かされてしまうことになった。
*小説家になろうで『代わりに着ぐるみバイトに行ったら人形娘の姿に閉じ込められた』として投降している作品のリテイクです。思いつきで書いていたので遊園地のエピソードを丁寧にやっていくつもりです。

【SF短編集】機械娘たちの憂鬱
ジャン・幸田
SF
何らかの事情で人間の姿を捨て、ロボットのようにされた女の子の運命を描く作品集。
過去の作品のアーカイブになりますが、新作も追加していきます。
どちらかといえば、長編を構想していて最初の部分を掲載しています。もし評判がよかったり要望があれば、続編ないしリブート作品を書きたいなあ、と思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる