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エリーは探偵として推理する
21.ランチタイム
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丹下犯罪学研究所にも昼が来た。とはいえ、この日は丹下教授は出勤せず、真由美は所用でここにこなかったので、古い書籍に埋もれた部屋にいるのは淳司とエリーだった。この時、エリーは有機物の補給を自ら行っていた。あらかじめ用意されていたビア樽のような金属容器に脇腹から伸ばした供給ケーブルを接続していた。このような光景は人工筋肉を使用したロボットにも見られる光景なので他の人が見ても奇異ではないが、実はこれは全身拘束刑を受けた受刑者の老廃物排出と有機物の供給でもあった。
「ただいまエリーの有機物交換実行中です。あと十五分稼働することができません」
エリーの自動応答システムはそうこたえたが、これがガイノイドエリーの、今の愛莉のランチタイムであった。全身拘束刑の囚人に相応しい待遇であった。人間らしい食事は出来ず、機械としてのメンテナンスの一環として行われるだけであった。
その様子をデスクの上から淳司は頬ずりをしながら見ていた。その時デスクの上には大学の売店のひとつであるファーストフード店で買って来たテイクアウトのセットが置かれていたが、手を付けようとしなかった。彼は仮想現実の中で愛梨と打ち合わせをしていた。そのとき、真由美が戻って来た。彼女も同じファーストフード店で買って来たようだ。
彼女のように車椅子でも校内がバリアフリー構造になっているので、それなりに自由に行く事ができるのであるが、どうしても行けないところがあるとすれば、同伴者が必要な場所であった。具体的には所属していない他の学部の関連施設などだ。
「長崎先生とあたしって同じものを買ってきてしまったの? 信じられないわ!」
真由美は車椅子の前のカバン入れからテイクアウトの商品をだしていた。彼女は膝の少し上から足がないので、前側にもカバンをかけるところを置いていた。そしてテイクアウトを置いた机の横にある椅子の上に上半身の力だけで移動した。真由美は高校でもそうやって普通の生徒が座る椅子に腰かけていたのだ。
「なかなかどうしたものなの? 器用なものだね、でも君って望めば下半身を改造してサイボーグ義足を装着することぐらいできるだろ? お父さんの会社に頼めば?」
淳司はそういったが、ある程度の事は知っていた。彼女の父親が経営する会社の製品は高価な反面、人間のものと見分けが出来ないぐらい精巧な義手に義足、そして義体を販売していた。でも真由美は自社の製品を義足として装着するのを頑固拒絶していた。その理由はトラウマがあるようであった。
「それは絶対ないわ! そんなことをしたら自分じゃなくなるもの! 脚のない今の不自由な身体でも幸せよ! あとはお姉ちゃんさえ見つかればね!」
真由美は、これが庶民の味なんだと確かめるようにハンバーガーを食していた。彼女はこうすれば世間知らずのお嬢さんというステレオタイプから出て行けると信じているようであった。
「ただいまエリーの有機物交換実行中です。あと十五分稼働することができません」
エリーの自動応答システムはそうこたえたが、これがガイノイドエリーの、今の愛莉のランチタイムであった。全身拘束刑の囚人に相応しい待遇であった。人間らしい食事は出来ず、機械としてのメンテナンスの一環として行われるだけであった。
その様子をデスクの上から淳司は頬ずりをしながら見ていた。その時デスクの上には大学の売店のひとつであるファーストフード店で買って来たテイクアウトのセットが置かれていたが、手を付けようとしなかった。彼は仮想現実の中で愛梨と打ち合わせをしていた。そのとき、真由美が戻って来た。彼女も同じファーストフード店で買って来たようだ。
彼女のように車椅子でも校内がバリアフリー構造になっているので、それなりに自由に行く事ができるのであるが、どうしても行けないところがあるとすれば、同伴者が必要な場所であった。具体的には所属していない他の学部の関連施設などだ。
「長崎先生とあたしって同じものを買ってきてしまったの? 信じられないわ!」
真由美は車椅子の前のカバン入れからテイクアウトの商品をだしていた。彼女は膝の少し上から足がないので、前側にもカバンをかけるところを置いていた。そしてテイクアウトを置いた机の横にある椅子の上に上半身の力だけで移動した。真由美は高校でもそうやって普通の生徒が座る椅子に腰かけていたのだ。
「なかなかどうしたものなの? 器用なものだね、でも君って望めば下半身を改造してサイボーグ義足を装着することぐらいできるだろ? お父さんの会社に頼めば?」
淳司はそういったが、ある程度の事は知っていた。彼女の父親が経営する会社の製品は高価な反面、人間のものと見分けが出来ないぐらい精巧な義手に義足、そして義体を販売していた。でも真由美は自社の製品を義足として装着するのを頑固拒絶していた。その理由はトラウマがあるようであった。
「それは絶対ないわ! そんなことをしたら自分じゃなくなるもの! 脚のない今の不自由な身体でも幸せよ! あとはお姉ちゃんさえ見つかればね!」
真由美は、これが庶民の味なんだと確かめるようにハンバーガーを食していた。彼女はこうすれば世間知らずのお嬢さんというステレオタイプから出て行けると信じているようであった。
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