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啓子が啓子を着る!
単調な日常
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その時、扶桑帝国は周辺諸国のほぼ全てと戦争をしていて、もう五年近くになっていた。最初の頃は連戦連勝で大きく版図を拡大したようだけど、あまりにも戦場を広げすぎたため徐々に苦戦しはじめ、いまでは周辺から猛烈な反撃を受けていた。戦争の原因は政府が都合のいい事ばかりいっているので本当のことなんかよくわからなかった。一つ言えるのは生活は苦しくなるばかりだった!
だから、橘花宮の敷地内でもすぐに成長する農作物が数多く植えられ、その世話をわたしたち使用人がしていた。もっとも、わたし人形の啓子ではないので存在は隠され、限られた者しか入ってこない内庭を多恵などと担当していた。
もともと、内庭は先々代皇帝が好きだったバラで彩られていたが、バラが植えられていないところや芝生などは開墾され、豆や芋などが栽培されていた。その栽培を指導してくれたのが運転手の源五郎さんだった。彼はこの家の二番手の運転手で本来は夫人が乗車する車を担当することになっていたのだが、既に軍に夫人用の乗用車を供出したので、いまは物資輸送の仕事がない時は一緒に働いていた。
「奥様、これって見たことなかったのですか?」
「ええ、豆としてしか見た事なかったですわ」
わたしは豆が鈴生りになったつるを見て驚いていた。その豆がそのようになるのを知らなかったことに、自分の無知を思い知らされて恥ずかしくなった。いくら宝亀の家の周囲しか行った事がなかったといっても、やっぱり自分は世間知らずの令嬢だったと思い知らされた。いまは、ただの使用人だった。
農作業中は、皇族家の使用人が着用するメイド服ではなく、フツーの農婦が着る粗末な作業着を着ていた。それも布だけを渡されて自分で縫って作った作業着だった。だから不細工でしかなかった。おかげで多恵に手直しされてしまった。
わたしは、午前中は屋敷内の掃除、午後は農作業、そして夜は何故か勉強、という決まった日常の繰り返しだった。しかも多恵と違って休みは無かった。ただ、その分仕事量は少なかったけど。
「奥様、早く戦争終わりませんかね? もちろん我が軍が勝って!」
「そうですわね・・・」
わたしは、多恵にあんまり多くを語らんかった。ここでは情報が外部から入ってこないし、手紙のやり取りも禁じられていた。だからまるで刑務所に入れられている錯覚さえあった。こんな単調な日常を三年も続けろというのは、少し嫌になっていた。しかし、そうして三か月が経過した事だった。人形の啓子から呼び出されたのだ!
だから、橘花宮の敷地内でもすぐに成長する農作物が数多く植えられ、その世話をわたしたち使用人がしていた。もっとも、わたし人形の啓子ではないので存在は隠され、限られた者しか入ってこない内庭を多恵などと担当していた。
もともと、内庭は先々代皇帝が好きだったバラで彩られていたが、バラが植えられていないところや芝生などは開墾され、豆や芋などが栽培されていた。その栽培を指導してくれたのが運転手の源五郎さんだった。彼はこの家の二番手の運転手で本来は夫人が乗車する車を担当することになっていたのだが、既に軍に夫人用の乗用車を供出したので、いまは物資輸送の仕事がない時は一緒に働いていた。
「奥様、これって見たことなかったのですか?」
「ええ、豆としてしか見た事なかったですわ」
わたしは豆が鈴生りになったつるを見て驚いていた。その豆がそのようになるのを知らなかったことに、自分の無知を思い知らされて恥ずかしくなった。いくら宝亀の家の周囲しか行った事がなかったといっても、やっぱり自分は世間知らずの令嬢だったと思い知らされた。いまは、ただの使用人だった。
農作業中は、皇族家の使用人が着用するメイド服ではなく、フツーの農婦が着る粗末な作業着を着ていた。それも布だけを渡されて自分で縫って作った作業着だった。だから不細工でしかなかった。おかげで多恵に手直しされてしまった。
わたしは、午前中は屋敷内の掃除、午後は農作業、そして夜は何故か勉強、という決まった日常の繰り返しだった。しかも多恵と違って休みは無かった。ただ、その分仕事量は少なかったけど。
「奥様、早く戦争終わりませんかね? もちろん我が軍が勝って!」
「そうですわね・・・」
わたしは、多恵にあんまり多くを語らんかった。ここでは情報が外部から入ってこないし、手紙のやり取りも禁じられていた。だからまるで刑務所に入れられている錯覚さえあった。こんな単調な日常を三年も続けろというのは、少し嫌になっていた。しかし、そうして三か月が経過した事だった。人形の啓子から呼び出されたのだ!
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