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マネキンドール
後編
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由実はホースを持つとそれを未希の口に差し込んで、一気にあの泥を注ぎ込んだ。未希は激痛に襲われたが、容赦なく体内にあの泥が注ぎ込まれた。未希をマネキン人形に変えてしまう泥を! 必死に抵抗しようとしても首から下は石化してしまっているので、どうすることも出来なかった。
「いよいよ、あなたの身体はマネキンね! 後は美しく仕上げてあげるわ! でも死なないからね、とりあえず飽きるまではそのままね。でも、出来が良かったら永久保存になっちゃうかも」
未希の耳に届く言葉は死刑宣告に等しかった。このまま永久に石化マネキン人形なんて! 一思いに殺して!
そんな未希の願いを無視するかのように由実は未希だった石化した娘の身体の調整を行った。顔の表情は苦痛にゆがんだものの上に盛り付けて優しい微笑みにして、体つきも少女から大人の女に変化する途中の形態にしていった。その間も未希の意識は消失しなかったが、それを由実が知るすべはなかった。知ったところで彼女に関係ない事だった。もう未希は材料でしかないから!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
由実の作品はとある美術展に出展され佳作とされた。それは彼女からすれば失敗作だった。渾身の作品であったが、審査員の心にあまり突き刺さらなかったのかもしれない。でも、ある審査員の評はこんなものだった。
”構成は悪くない、将来は期待が持てる。それにしても塑像からある種の芸術の狂気すら感じる程、作者の想いが伝わってくる”
その審査員の直観は少し間違っていた。塑像から素材にされた未希の怨念めいた狂気を感じていたはずだった。
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久しぶりに光を感じた。石化マネキンにされた未希は生きていた。でも、わずかしか動くことは出来なかった。
「未希、生きているのね! あなたの右手の指動いているわね。それじゃあ、こうしましょう! 右手をピースの形にしたら何とかして人間に戻してあげるわ! 最近、マスターしたのよ人間に戻す方法を! でも、あなたは初期の作品だから難しいかもね。そうそう、あなたがマネキンになって十年が経過しているわ。ピースサインになるまであと三十年ぐらいかかるかしら? それまで私が生きていたら良いけどね! じゃあね!」
すると、また光を感じなくなった。暗闇の中で未希は思った。そんなことを言って苦しめる由実は悪魔だ! と。でも、マネキンになった未希が出来るのは怨念を抱いて右手の指に力を入れる事だ。ついでに言うと、由実が創造した時よりも姿勢を変えようとしていた。由実の作品としての自分を変えるために。でも、恐ろしく時間がかかっていた。
今に待ってなさい! 人間に戻ったら由実! あんたを石化させてやるから! 未希はそう思って日々を過ごしていたが、彼女が人間に戻り代わりに由実をマネキンにしたかどうかは定かではない。未希が永遠に感じる程マネキンとして苦痛な時間を過ごしたのは間違いなかった・・・
「いよいよ、あなたの身体はマネキンね! 後は美しく仕上げてあげるわ! でも死なないからね、とりあえず飽きるまではそのままね。でも、出来が良かったら永久保存になっちゃうかも」
未希の耳に届く言葉は死刑宣告に等しかった。このまま永久に石化マネキン人形なんて! 一思いに殺して!
そんな未希の願いを無視するかのように由実は未希だった石化した娘の身体の調整を行った。顔の表情は苦痛にゆがんだものの上に盛り付けて優しい微笑みにして、体つきも少女から大人の女に変化する途中の形態にしていった。その間も未希の意識は消失しなかったが、それを由実が知るすべはなかった。知ったところで彼女に関係ない事だった。もう未希は材料でしかないから!
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由実の作品はとある美術展に出展され佳作とされた。それは彼女からすれば失敗作だった。渾身の作品であったが、審査員の心にあまり突き刺さらなかったのかもしれない。でも、ある審査員の評はこんなものだった。
”構成は悪くない、将来は期待が持てる。それにしても塑像からある種の芸術の狂気すら感じる程、作者の想いが伝わってくる”
その審査員の直観は少し間違っていた。塑像から素材にされた未希の怨念めいた狂気を感じていたはずだった。
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久しぶりに光を感じた。石化マネキンにされた未希は生きていた。でも、わずかしか動くことは出来なかった。
「未希、生きているのね! あなたの右手の指動いているわね。それじゃあ、こうしましょう! 右手をピースの形にしたら何とかして人間に戻してあげるわ! 最近、マスターしたのよ人間に戻す方法を! でも、あなたは初期の作品だから難しいかもね。そうそう、あなたがマネキンになって十年が経過しているわ。ピースサインになるまであと三十年ぐらいかかるかしら? それまで私が生きていたら良いけどね! じゃあね!」
すると、また光を感じなくなった。暗闇の中で未希は思った。そんなことを言って苦しめる由実は悪魔だ! と。でも、マネキンになった未希が出来るのは怨念を抱いて右手の指に力を入れる事だ。ついでに言うと、由実が創造した時よりも姿勢を変えようとしていた。由実の作品としての自分を変えるために。でも、恐ろしく時間がかかっていた。
今に待ってなさい! 人間に戻ったら由実! あんたを石化させてやるから! 未希はそう思って日々を過ごしていたが、彼女が人間に戻り代わりに由実をマネキンにしたかどうかは定かではない。未希が永遠に感じる程マネキンとして苦痛な時間を過ごしたのは間違いなかった・・・
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