15 / 17
最低な奴
しおりを挟む
何でこいつは俺の心を掴んで離してくれないのだろう。
嬉しい言葉をくれるのだろう。
ホント、こいつのことが好きだ。
「ちょっと泣きすぎじゃない?泣きたいのはいきなり別れるとか言われた俺の方なんだけど」
よしよし、と頭と背中を撫でられている間も涙は止まらない。
奴の方に額を乗せているが、離れた方が拭く濡れなくて済むのではと提案したのに、濡れたって良いと言って離してくれない。
「すまん。止まらん」
「別に良いけど」
それから暫くそのままの状態が続き、やっと涙が止まったと思って顔を上げれば奴に笑われた。
「目が真っ赤じゃん。冷やさねぇと大変なことになるぜ」
「うっさいな。放っといてくれ」
「放っておいたら今回みたいに1人空回りするから放っておきません」
それに関しては否定できないな。
きっとあの場にこいつがいて、否定でもしていたら俺は今回のような別れ話をしようとは思わなかったしだろうし。
「で?別れませんけど、それで良いよな?」
「何だその否定は許しませんという問いかけは。まぁ、お前がそれで良いと言うのであれば俺はそれで良い」
こいつが俺と共にいて幸せを感じてくれるのなら。
家族は俺だけで良いとこいつが言うのなら、その間は俺はこいつの側に居たいと思う。
「にしても酷いよな、お前」
「何がだ」
「お前がここの宿に泊まりたいって言ってたの覚えてる?」
「は?」
そんなこといつ言ったんだ、俺。
「ほら、覚えてなかった。だと思ったんだよ。宿見ても何も言わねぇし、中の景色見ても風呂入っても食事しても一切気付かねぇ。知らねぇうちに今日1日だけで2回も逆ナンはされてるし、お前何なの」
「いや、逆ナンのことはよく分からんが、宿のことは本当にすまん」
だからこいつは俺のことを見てたし、こいつの趣味とは思えない宿だったわけだ。
俺の好きな宿だと思ったら俺が選んだからか。
本当に俺って最低な人間だな。
よくこんな最低人間と付き合ってくれるな、こいつ。
本当に良い奴過ぎて俺には勿体ないくらいだ。
他に譲る気はないが。
「ということはこの後のこともお前覚えてないかもな?」
「この後?」
何が待っているのだと思ったら、扉をノックされた。
誰だこんな遅くにやってくるとは。
宿の人だろうか。
嬉しい言葉をくれるのだろう。
ホント、こいつのことが好きだ。
「ちょっと泣きすぎじゃない?泣きたいのはいきなり別れるとか言われた俺の方なんだけど」
よしよし、と頭と背中を撫でられている間も涙は止まらない。
奴の方に額を乗せているが、離れた方が拭く濡れなくて済むのではと提案したのに、濡れたって良いと言って離してくれない。
「すまん。止まらん」
「別に良いけど」
それから暫くそのままの状態が続き、やっと涙が止まったと思って顔を上げれば奴に笑われた。
「目が真っ赤じゃん。冷やさねぇと大変なことになるぜ」
「うっさいな。放っといてくれ」
「放っておいたら今回みたいに1人空回りするから放っておきません」
それに関しては否定できないな。
きっとあの場にこいつがいて、否定でもしていたら俺は今回のような別れ話をしようとは思わなかったしだろうし。
「で?別れませんけど、それで良いよな?」
「何だその否定は許しませんという問いかけは。まぁ、お前がそれで良いと言うのであれば俺はそれで良い」
こいつが俺と共にいて幸せを感じてくれるのなら。
家族は俺だけで良いとこいつが言うのなら、その間は俺はこいつの側に居たいと思う。
「にしても酷いよな、お前」
「何がだ」
「お前がここの宿に泊まりたいって言ってたの覚えてる?」
「は?」
そんなこといつ言ったんだ、俺。
「ほら、覚えてなかった。だと思ったんだよ。宿見ても何も言わねぇし、中の景色見ても風呂入っても食事しても一切気付かねぇ。知らねぇうちに今日1日だけで2回も逆ナンはされてるし、お前何なの」
「いや、逆ナンのことはよく分からんが、宿のことは本当にすまん」
だからこいつは俺のことを見てたし、こいつの趣味とは思えない宿だったわけだ。
俺の好きな宿だと思ったら俺が選んだからか。
本当に俺って最低な人間だな。
よくこんな最低人間と付き合ってくれるな、こいつ。
本当に良い奴過ぎて俺には勿体ないくらいだ。
他に譲る気はないが。
「ということはこの後のこともお前覚えてないかもな?」
「この後?」
何が待っているのだと思ったら、扉をノックされた。
誰だこんな遅くにやってくるとは。
宿の人だろうか。
59
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
振られた腹いせに別の男と付き合ったらそいつに本気になってしまった話
雨宮里玖
BL
「好きな人が出来たから別れたい」と恋人の翔に突然言われてしまった諒平。
諒平は別れたくないと引き止めようとするが翔は諒平に最初で最後のキスをした後、去ってしまった。
実は翔には諒平に隠している事実があり——。
諒平(20)攻め。大学生。
翔(20) 受け。大学生。
慶介(21)翔と同じサークルの友人。
付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話
雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。
樋口(27)サラリーマン。
神尾裕二(27)サラリーマン。
佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。
山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる