泣くなといい聞かせて

mahiro

文字の大きさ
上 下
16 / 17

穴があったら入りたい

しおりを挟む
奴は微笑を浮かべながらドアの方へと向かい扉を開けると、そこには。


「よう、宝生。久方ぶりだな」


「こんばんは、遅くなったね」


アキと亮太がいた。
え、何でここに2人が居るんだ。


「ほら忘れてた。この間言ってただろ?皆に会いたいって」


そういえば奴の家に行ったときに宿のチラシを見ながらそんなこと言った気がする。
でもあれは何気なく呟いただけだった気がするんだが。


「言った……が」


「あれ?宝生君目が赤いけど大丈夫?」


亮太が心配してくれているのだが、俺は驚きすぎて頭がうまく働いてくれないぞ。


「これはこいつのせいだから気にすんな」


「そうなのだ、これは俺のせいなのだよ。だから気にするな、亮太」


奴、俺のためにこの宿を取り、2人をここに呼んでいたのか。
もう穴があったら入りたい。
誰か俺を隠してくれ。


「どうしたんだ?宝生は」


「放っておいて良いってアキちゃん。それより思ったより早かったね。さっきもっとかかるかもって言ってたじゃない?」


「事故渋滞が思いの外、すぐに解消されたんだ。なぁ、亮太」


「そうだね。もう少しかかるってナビに書いてあったんだよ」


部屋の端で丸まっていながらそれを聞いていたんだが、つまり外に出て連絡を取っていたのはこの2人だったというわけか。
俺の反応を確かめるために。


それから暫くして、久しぶりに4人で話したが、あの頃と大きく変わったことはなかった。
アキは相変わらず人に好かれているし、亮太は高校の頃から良い奴のままだし。
やっぱりこのメンバーでいると楽しいなと思っていたのだが、2人は明日バイトがあるということで今日のうちに帰ってしまうとか。


「もっと話がしたかったな……」


「また会えば良いじゃないか」


「そうだね。また会おう、宝生君」


「さっきまで壁とお友達になってたくせによく言うぜ、全く」


「それはもう言わないでくれ……」


奴の言うように暫くは壁とお友達で居たけども、それには触れないでくれ。
恥ずか死ねるではないか。


「仲が良いな、お前たちは」


「アキちゃんたちも仲良いでしょ」


「俺と亮太か?そうだな!」


爽やかにアキは答えたが、2人の言う仲が良いはあくまで友達としての仲が良いだ。
あの時から関係性が全く変わっていないのだな、とやり取りを聞くだけで分かる。
亮太も何も言えずに2人のやり取りを見てるだけでそれ以上の反応を示さないようにしているし。


「お、もう日付も変わっているな。それじゃ、またな2人とも」


「お邪魔しました」


「あぁ、またな」


「気をつけて帰れよ」


2人に手を振って部屋に戻れば、さっきまで賑わっていた部屋が一気に静まり返った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした

雨宮里玖
BL
《あらすじ》 昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。 その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。 その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。 早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。 乃木(18)普通の高校三年生。 波田野(17)早坂の友人。 蓑島(17)早坂の友人。 石井(18)乃木の友人。

付き合って一年マンネリ化してたから振られたと思っていたがどうやら違うようなので猛烈に引き止めた話

雨宮里玖
BL
恋人の神尾が突然連絡を経って二週間。神尾のことが諦められない樋口は神尾との思い出のカフェに行く。そこで神尾と一緒にいた山本から「神尾はお前と別れたって言ってたぞ」と言われ——。 樋口(27)サラリーマン。 神尾裕二(27)サラリーマン。 佐上果穂(26)社長令嬢。会社幹部。 山本(27)樋口と神尾の大学時代の同級生。

別れたいからワガママを10個言うことにした話

のらねことすていぬ
BL
<騎士×町民> 食堂で働いているエークには、アルジオという騎士の恋人がいる。かっこいい彼のことがどうしようもなく好きだけれど、アルジオは自分の前ではいつも仏頂面でつまらなそうだ。 彼のために別れることを決意する。どうせなら嫌われてしまおうと、10個の我儘を思いつくが……。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

罰ゲームって楽しいね♪

あああ
BL
「好きだ…付き合ってくれ。」 おれ七海 直也(ななみ なおや)は 告白された。 クールでかっこいいと言われている 鈴木 海(すずき かい)に、告白、 さ、れ、た。さ、れ、た!のだ。 なのにブスッと不機嫌な顔をしておれの 告白の答えを待つ…。 おれは、わかっていた────これは 罰ゲームだ。 きっと罰ゲームで『男に告白しろ』 とでも言われたのだろう…。 いいよ、なら──楽しんでやろう!! てめぇの嫌そうなゴミを見ている顔が こっちは好みなんだよ!どーだ、キモイだろ! ひょんなことで海とつき合ったおれ…。 だが、それが…とんでもないことになる。 ────あぁ、罰ゲームって楽しいね♪ この作品はpixivにも記載されています。

処理中です...