記憶屋

卯月青澄

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彼は臓器移植に成功した。

本当にギリギリの手術だった。

抗がん剤治療と幾度の手術を重ねてきた事も幸いした。

もう少し遅れていたら、彼は帰らぬ人となっていた。

奇跡は起こった。

術後は免疫抑制剤という薬を飲み続けなければならなかったけど、彼の体力は次第に回復し、みるみる元気になっていった。


そして数ヶ月後には退院する事が出来た。

「キレイなイルミネーションね」

帰り道にイルミネーションが輝く並木道を歩いていた。

今日は退院してから彼との初めてのデートだった。

映画館でホラー映画を観てきた。

デートの締めにスタバに寄った。

「ここを通るの久しぶりです」

「誰かと来た事あるの?」

「えぇ…」

「何か妬けるわね」

「大丈夫ですよ」

「ふ~ん、それより何で伊達メガネなんてしてるの?」

彼はデートに来る前からそれをかけていた。
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