パパLOVE

卯月青澄

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ママみたいにはならない。

ずっと好きでいられる。

一生好きでいられる。

何なら私がパパと結婚する。

日本の法律で結婚できないとしても私はパパのお嫁さんになる。

パパのために何でもやってあげる。

料理だって洗濯だって家の中ことは私が全部やってあげる。

そう思った。

「パパの働いている会社はどこにあるの?」

「新宿のビルの中にあるんだ」

「そうなんだ。どの辺にあるの?」

教えてくれないかと思ったら、意外にもパパはメモに住所を書いて渡してくれた。

「ありがと」

「来ることはないと思うけど、何かの用事で近くに来た時はメールしてくれたら周辺の美味しいお店に連れて行ってあげるよ」

「やったぁ。用事がなくても遊びに行くよ」

「どうぞ、お待ちしております」

パパは豪邸の執事がやるように、右腕を胸に当て左腕を腰に回して軽くお辞儀をしてみせた。

そんな身振りが妙に様になっていて格好良かった。

やったことあるんじゃないのと思うくらい。

「これからどうする?」

「帰りたくない。パパの家に泊まりたい」

「ママと何かあった?」

「何もないよ」

「パパはいいけど、ママに連絡しとかなきゃね」

「良いって言うかな?」

「香澄がそうしたいと言うなら、きっとママは許してくれる」

パパは迷いなどなく、まるで決まっているかのように笑顔でそう言った。

「わかった。電話してくるから、ちょっと待ってて」

私はパパと少し離れた場所に移動してママに電話を…かけられなかった。

だってママには私がパパと会っていることは言ってない。

ママはパパと離婚してから、女手一つで私を育ててくれた。

苦労も沢山したし、莫大な努力も必要だった。

そんなママに…パパを自分の過去から消し去っているママに言えない。

言ったら、ママは裏切られたと思うかもしれない。

悲しい思いをさせてしまうのは間違いない。

だから言えない。

それから私は電話をかけるふりをしてからパパのもとに戻った。
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