パパLOVE

卯月青澄

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「確かにヒドいことをしたよ。今にして思えば男として情けないことをしたと思ってる」

「でも、ありがとうございました」

「何がだい?」

「何でもないです」

もしも、パパと岩谷さんが付き合うようになって、結婚するようになっていたらパパとママは出逢わなかった。

付き合って結婚して私が生まれてくるようなことにはならなかった。

だから卑怯なことをした、低レベルの男子生徒の1人であった佐藤さんにお礼を言った。

それから佐藤のおじさんとは店の前で別れて、ファミレスをあとにした。

私の隣を歩くパパは何だかセンチメンタル的な感じがした。

「後悔してる? 岩谷さんのこと」

「う~ん、してない。ちょっと感傷的になっちゃったけど、それはそれで仕方ないよ」

「ならさ…ママに出逢えて良かった?」

今まで1度だってママを話題に出さなかったけど、聞いてみたいことだったから…聞いてみた。

きっとパパはママに出逢わない方が良かったに決まってる。

ママじゃない別の女性の人と結婚していたら、今頃は幸せな家庭生活を送っていたかもしれない。

離婚なんてツラい経験をせずにすんだかもしれない。

「もちろん。ママに出逢えたことが、僕の人生の幸せのベスト2」

「ベスト2? だったらベスト1は何?」

「香澄が生まれて来てくれたこと」

「パパ…」

「ママと出逢って結婚して香澄が誕生したことが僕の人生の全てだよ」

私は隣を歩くパパの胸に飛び込み力いっぱい抱きついた。

パパも私を強く抱きしめ、背中を優しくさすってくれた。

嬉しくて涙が大量に流れ出した。

パパはもしかしたら、今でもママのことが好きで、忘れられないでいるような気がした。

逆にママはパパのことは今は何とも思ってないのは一緒にいてわかる。

ママにとってパパは過去の人。

お互い好きで結婚したはずなのに、こんなにも気持ちが離れてしまうのは何だか悲しい気がした。

でも例えママがパパを想ってなくても私には関係ない。

私はパパが好きだから。

この気持ちは変わらない。
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