上 下
6 / 12

お試し婚約?

しおりを挟む
3日後。
俺は、『俺の意志とは無関係』に、婚約者となってしまったフェイ殿下と中庭でお茶をしていた・・・いや、紅茶は運ばれてきたが、二人とも紅茶を飲んではいなかった。

「「・・・・・・」」

「二人ともっ・・・紅茶、冷めちゃうよ!!」

仲裁役(?)を買って出てくれたクリスが、俺とフェイ殿下の間で、あたふたしていた。

「何で俺なんだ?・・・もっと他にいい奴いるだろ?」

「昔から・・・助けていただいた時から、お慕いしておりました」

「だからって・・・いくら王命でも、10才以上も年下の王族と結婚できるかよ?!」

「年下は、お嫌いですか?」

「いや、そういう意味じゃなくって・・・」

「まあまあまあ・・・婚約なんだし?お試し期間みたいなものだと思ってもらえれば」

「おためしぃ?!」

「はい。お試しで大丈夫です!!1ヶ月お試し婚約で、僕のこと好きになれなかったら、婚約破棄してくれても構いません。その代わり・・・スミス様も、その間は僕と真剣に向き合ってください」

「ちょっと、フェイ君・・・本当に、それでいいの?」

「・・・・・・」

「よーし、言ったな?1ヶ月だけだからな。1ヶ月で好きになるなんて、俺の中じゃありえねぇ。男に二言はないよな?」

「はい、大丈夫です」

「えー、もぉ知らないよぉ・・・」

クリスは俺とフェイ殿下の間で呆れていた。俺は紅茶を一気飲みすると、席を立った。

「書類が溜まってるんだ・・・陛下の命でね。今月中に、ある程度仕上げなきゃならないんだ」

「その仕事、終わったら・・・僕と出掛けてくれませんか?」

「デートってこと?」

「よければ・・・デートプランは、こちらで考えますので」

「いいよ。でも終わるまで、結構時間かかるかも・・・1ヶ月くらいかなぁ」

「ちょっと、スミス!!」

「分かりました。それなら、僕も手伝います。あっ・・・一応、陛下から許可もらって来ますね」

フェイ殿下は、俺がどんな仕事をやっているか、知っているみたいな口ぶりだった。俺が呆気に取られていると、フェイ殿下は紅茶を一気飲みして「失礼します」と言いながら、去っていった。

「一本、取られたね」

「バカ言え」

クリスは笑っていた。『久しぶりに、こんなに軽口を叩いたな』と思っていた。それと同時に、仲裁役を買って出てくれたクリスに感謝もしていた。
『友人を大切にしなければいけないな』と、改めてそう思ったのだった。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

救国のマトリョーシカ ー傾国の美青年2ー

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:21

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:226

【完結】兄さんと俺の話

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:32

悪役令息になる前に自由に生きることにしました

BL / 連載中 24h.ポイント:220pt お気に入り:1,921

ちびヨメは氷血の辺境伯に溺愛される

BL / 連載中 24h.ポイント:46,358pt お気に入り:5,362

婚約者の姉を婚約者にしろと言われたので独立します!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:248pt お気に入り:4,670

処理中です...