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陛下からの褒賞

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「フェイ殿下・・・だっけ?順番、何番目?」

「えーと・・・次の次かな?」

俺達は入口で渡されたパンフレットを片手に、会場へ来ていた。クリスは、立場としては国王陛下の義理の妹に当たるから、当然のように貴賓席きひんせきへ案内された。

「貴賓席って、苦手なんだよねー、周りを常に気にして、笑顔を振りまかなくちゃいけないみたいな雰囲気があって・・・」

「分かるわ、それ。パーティー行ったとき、公爵席と侯爵席があって胃が痛くなったことあるわ」

「スミスでも、胃が痛くなることあるんだねー」

「当たり前だ!!人を怪物かなんかだと思ってないか?!」

「・・・しっ、始まるよ」

会場の中央にある競技場には、フェイ殿下ともう一人、魔術師団の団員と思われる人物が向かい合わせで立っていた。

「両者、1歩前へ・・・」

2人が前へ出ると、審判は手に持っていた旗を頭上へあげた。

「はじめっ・・・」

審判が合図した瞬間、フェイ殿下の前に立っていた魔術師は、そのままの体制で前方へ倒れ込んだ。

「そこまでっ・・・勝者、フェイ・シュバルツ!!」

「「・・・・・・」」

「なぁ、クリス。今のって・・・何だか分かった?」

「いや・・・とりあえず、『すごいんだ』って、事は分かったかな?」

その後も第2試合、第3試合と試合は続いていき・・・気がつけば、決勝戦になっていた。

「なぁ、クリス・・・君の義弟おとうとさ、試合を『みせる』気はないのかな・・・強いのは分かるんだけど、ちっとも盛り上がらないっていうか・・・」

あの後も、フェイ殿下は相手を秒殺で倒していた・・・強いのは分かるが、何をやって倒したのかさえ、分からなかった。

「いい子なんだけどね・・・たぶん必死で、それどころじゃないんだと思う」

「必死?」

「今回の優勝者は、陛下に1つだけ、何かを『お願い』することが出来るんだよ」

「え?マジで・・・前まで賞金だったじゃん。俺も参加すればよかった。今回は叔父上の婿殿は、参加していないみたいだしな?」

「あー、あの子ね・・・何か「空気読んで辞退した」って、言ってたよ」

「空気読んだ?・・・何で??」

「それは・・・」

「決勝戦始まりまーす!!」

クリスは何かを言いかけたが、試合開始の場内アナウンスでかき消され、あたりは騒然としていた。

「始まるみたい」

「・・・そうだな」

フェイ殿下が競技場へ登場すると、今度は黄色い歓声が上がった。

「よく分からないが、人気者なんだな」

「何か・・・熱烈なファンがいるみたいだよ。主に魔術師みたいなんだけど」

「はじめっ・・・」

話していると試合が始まっており、競技場を振り返って見た時には、既に相手の選手は前のめりに倒れ込んでいた。

「勝者、フェイ・シュバルツ!!」

最後は歓声が上がり、たくさんの「おめでとう」の声が会場から聞こえてきていた。

「終わったな・・・さて、帰るか」

「ちょっと、待って。まだ表彰式あるから」

「そんなこと言って・・・すぐには始まらないだろう?」

再び競技場を見ると、既に式典用の台が設置されマイクが置かれていた。会場担当の人達が急ピッチで作業を進めていたらしく、俺が迷っているうちに表彰式は始まってしまっていた。

「終わったら、帰ろうな」

「うん・・・そうだね」

「これから、表彰式を始める・・・優勝者フェイ・シュバルツ、前へ」

「はい」

「優勝おめでとう・・・国王としてだけではなく、兄としても誇りに思うよ」

「ありがとうございます、陛下」

フェイ殿下は、トロフィーを受け取ると嬉しそうな顔をしていた。

「褒美として、1つだけ望みを叶えよう・・・何でもいいぞ、遠慮はいらない。申してみよ」

「それでは、お言葉に甘えまして・・・スミス・サクフォン様と結婚させてください!!」

「え?」

「ええ?!いや、何言ってるんだアイツ!!」

「叶えてやりたいのは、やまやまだが・・・」

(そうだ!!本人の許可無しに決めるなよ)

「私が心配だし・・・とりあえず、婚約でどうだ?」

(心配って・・・もしかして、フェイ殿下の心配かよ!!)

「はい・・・ありがとうございます。とりあえず、婚約で大丈夫です」

(とりあえずって何だよ?俺は大丈夫じゃねぇ!!)

俺の意志は聞かれることなく、フェイ殿下との婚約が決まったのだった。


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