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第3話 ②

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(何のご病気なんだろう……? 早く良くなられるといいけれど)

 王女様を心配しつつ、お祝いの花束を仕上げていく。予算をたくさん提示して貰ったので、かなりのボリュームになった。

「お待たせしました。ロルフさんのお花はこちらで、お客様の花束はこちらになります。こんな感じで宜しいでしょうか?」

「おお! さすがはアンちゃんだ! これでむさ苦しい宿屋が華やかになるよ!」

「これは素晴らしい。あの予算でこんな立派な花束を作って貰えるとは驚いた」

 私が作った花を見た二人がとても喜んでくれる。その笑顔に私も嬉しくなる。

「でも、いつもより花が多くねぇか?」

 さすが自身も経営者だけあって、ロルフさんに一目でおまけしたことを見抜かれてしまう。

「お客様を紹介してくれたお礼! また宣伝してくれると嬉しいな!」

「ははは! アンちゃんは抜かりねぇな! よし、宣伝は任せとけ!」

「私の方でもこのお店を宣伝しておきましょう」

「本当ですか?! 有難うございます!」

 ロルフさんのお知り合い──フィリベルトさんも花束を見て満足してくれたのか、また花が必要になった時は私のお店に注文してくれると言ってくれた。

 私は紹介してくれる人達の好意に応えるためにも、この仕事に全力で取り組もうと決意する。



 * * * * * *



 お店で花の様子を確認していると、お店のベルが鳴ってお客さんが来たことを告げる。

「いらっしゃいませ!」

 私はいつものように笑顔を浮かべ、元気よく扉の方へ振り向いた。するとそこには騎士服を着た、背の高い男の人が立っている。

(うわ~! 凄く格好良い人だなぁ。眼福~!)

 お店に来た人は、眉目秀麗な美男子で凛とした雰囲気を纏っていた。
 彼の背後に一瞬、花が咲き乱れている幻を見たけれど、それはここが花屋だからと言うわけではないと思う。

「何をお探しですか?」

 私は店内を見渡す美男子に、恐る恐る声を掛けた。同じ騎士団員でもヴェルナーさんとは正反対の雰囲気を持っているので、思わず緊張してしまう。

「……ああ、花束をお願いしたい」

 あまり花屋に来たことがないのか、言葉少なめに言う美男子に、花束の用途や贈る相手のことを質問する。

「えっと、贈られるお相手は女性でしょうか?」

「……若い女性だ」

「用途は何でしょう? お祝いですか?」

「お見舞いだが……そんなに詳しく話さなければならないのか?」

 私の質問に美男子さんは少し困惑しているようだ。その様子に、花束を贈りなれていないんだろうな、と思い至る。

「申し訳ありません。贈る相手や用途によって選ぶ花が違ってくるんです。例えば、病気の方に花粉が多い花を贈るのは避けないといけませんし、好みにもよりますが白い花や青い花でまとめると誤解されてしまうかもしれませんので」

 実際、鮮やかで見栄えが良いリーリエユリの花も、「やく」と呼ばれる花粉袋がついていて、十分に成熟するとやくが破れて、たくさんの花粉が出てきてしまう。
 お店で咲いている花に付いたものなら私が取っておくけれど、蕾が咲いた場合は贈った相手に取って貰わないといけないのだ。

「なるほど。用途によって花が変わるとは知らなかった。無礼な態度を取って申し訳ない」

 美男子さんが私に謝罪するけれど、突然頭を下げられた私は大慌てしてしまう。
 


* * * * * *


❀花の名前解説❀
リーリエ→ユリ
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