【完結】緑の手を持つ花屋の私と、茶色の手を持つ騎士団長

五城楼スケ(デコスケ)

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第1話 ②

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 開店してから店を訪れるお客さんに対応している内に、お昼の時間をとっくに回っていることに気付く。

「あらら~。もうこんな時間……」

 昼時だからか、丁度お客の方も途切れたこともあり、私は少し遅い昼食を取るために、外へ出掛けることにする。

 店の鍵を締め、ドアのプレートを「休憩中」に取り替える。

「あ、ついでにギルドへ行って球根を注文しなくちゃ」

 この世界で商いを営む場合、商業ギルドに登録することが推奨されている。
 ギルドに登録する時に結構な金額が必要になるので、登録は強制ではないけれど、登録すると経営相談や融資を受けられたり、開業する時に支援して貰うことが出来る。
 しかも世界中の国に支部があるので、ある国にしか無い商品が欲しい場合、その国の支部を通して用品を融通して貰えるのはすごく大きいと思う。

 私は商業ギルドに行く途中でお昼を済ませることにする。

「おじさん、こんにちは! アックスサンド一つくださいな」

「おう、アンちゃん休憩かい? ちょっと待ってな!」

 私は露天で売られている、アックスビークの肉と野菜をパンに挟んだ食べ物を注文した。
 ちなみにアックスビークとは鳥型の魔物の肉で、あっさりとした味で栄養価が高い。

「ほいよー。多めに挟んどいたぞ!」

「わぁ! すごく美味しそう! ありがとうね!」

 私はおじさんからサンド受け取ってお金を払うと、商業ギルでへ向かうべく歩き出した。
 私のお店から商業ギルドへは少し遠いので、食堂に入ってご飯を食べられる時間がなく、歩きながら食べられるサンドにしたのだ。

(美味しい~~! 臭みやクセがなくて柔らかい! 肉がジューシー!)

 人で賑わう通りを20分ほど歩くと、商業ギルドのバルリング西支部に到着する。
 この国は王宮を中心にして国が作られているので、王宮の反対側にはバルリング東支部があるらしい。行ったことはないけれど。

 商業ギルドに入り受付を済ませ、外交部に通された私は担当の人に欲しい球根の種類や個数を伝える。

「……なるほど。今回は球根を複数ですね。恐らく問題なく入荷するでしょう。もしマイグレックヒェンすずらんをご希望でしたらお時間を頂いていましたけどね」

「今マイグレックヒェンは手に入らないのですか?」

「ええ、どうやら東支部の方で大量に注文が入ったらしく、次回の入荷は来年になるでしょうね」

 確かにマイグレックヒェンは可愛い花だけど、球根を買い占めるほど人気なのかというと疑問に思う。

(ま、特別必要じゃないし、注文は来年でも良いか)

「入荷には二週間程かかりますのでご了承下さい。お届け先は店舗でよろしいですか?」

「はい、問題ありません。どうぞよろしくお願いいたします」

 私は担当の人に挨拶をすると、商業ギルドを出て店に戻る。

(そう言えば今日の晩御飯どうしようかな……)

 先程の会話をすっかり忘れ、のんきに晩御飯のことを考えていた私は、全く気付いていなかった。

 自分には関係がないと思っていたこの時の会話が、フラグだったということを。
 


* * * * * *


❀花の名前解説❀
アネモーネ→アネモネ(まんま!)
トゥルペ→チューリップ
ヒュアツィント→ヒヤシンス(似てる!)
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