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職員室で担任の先生に声をかけると、彼は私の顔を見てすごく驚いていた。思ったより顔が腫れていたらしい。
「さっき転んだんです」
言い訳をしたけど、先生は信じてはいないようだった。でも、私が何も話したがらないのを察してか、それ以上追及してこなかった。
「簡易的に手当を行いますが、寮に帰ったらきちんと治療をしてくださいね」
先生は私の顔に応急手当てとして簡単な治癒魔法を施してくれた。
それが終わると、彼はようやく魔法の実技試験について話した。
先生いわく、本来であれば再試験を行わないといけないそうだ。でも、魔物が出た原因や私を襲ってきた理由が分からないため、また私に光魔法を使わせるわけにはいかないらしい。だから、再試験の代わりに、期日までにレポートを提出して欲しいと言われた。
レポートとは言っても、光魔法についての知識をまとめるだけの、とても簡単なものらしい。
ゲームのイベントと同じで筆記試験になるのかと思っていたから、私は驚くと同時に安堵した。課題が簡単なものというのは勿論ある。でも、もっと嬉しかったのはゲームのイベントに収束しなかったことだ。
私は心のどこかで怖かったのかもしれない。多少の展開は違っても、結局は闇の女王イベントに辿り着くんじゃないかって。
あれほど、闇の女王イベントを見たかったのに。でも、今は違うのだと思った。
私はアンナとこれからも友達でいたい。彼女はいい子だし、ハインリヒとの恋の行方だって気になる。それに、ヴェルナーとも・・・・・・。
ーー私ったら何考えてるの!?
彼とは関わらないに越したことはないのに。一瞬でもヴェルナーのことを考えた自分を殴ってやりたい。
とにかく、私はゲームのシナリオを見たいんじゃない。私は私として、平穏無事に生きていたい。そのことを改めて実感した。
※
職員室での用事を終えると、私は迎えの馬車が来ている校門の前に行った。
途中で、同じく馬車を待っていたであろうアンナと出会った。彼女は私の顔を見るなり慌てた様子で駆け寄って来た。
「エマさん、頬が赤くなってますよ。大丈夫ですか?」
先生のおかけで痛みはもうないのだけれど。アンナの反応を見るにまだ腫れは引いていないようだ。
「さっき転んでしまいました。先生に手当をしてもらったので大丈夫です」
「そうなんですか」
アンナは心配そうに私の頬を見つめる。
「あまり痛みが酷かったり、腫れが引かなかったりするようであれば、明日のお茶は延期にしても大丈夫ですよ?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。痛みは先生のおかげでもうありませんし、寮に帰ったら顔を冷やすのできっと腫れも引きます」
にこりと笑ってアンナの顔を見た。よく見ると彼女の目の縁が赤っぽくなっている。じっくりと見なければ分からないけど、メイクで上手く隠しているみたいだ。
ーー泣いていたのかしら?
疑問を口にするのは憚られた。ここは校門の近くということもあって、まばらながらも他の学生がいる。
少なくとも、今、そのことを触れるのはやめておこう。
「明日の放課後、また一緒の馬車に乗ってアンナ様の寮に行くんですよね?」
「そうですね」
「またあの馬車に乗れるって思うとわくわくします」
明るく言ったらアンナは笑った。
「あら。噂をしていたら、馬車が来ましたわ」
校門のすぐそばに王室の印章のついた馬車が止まった。
「私はこれで失礼します。明日のお茶、私も今から楽しみです」
アンナはそう言って笑った。私は別れの挨拶をして、馬車へと向かうアンナを見送った。
「さっき転んだんです」
言い訳をしたけど、先生は信じてはいないようだった。でも、私が何も話したがらないのを察してか、それ以上追及してこなかった。
「簡易的に手当を行いますが、寮に帰ったらきちんと治療をしてくださいね」
先生は私の顔に応急手当てとして簡単な治癒魔法を施してくれた。
それが終わると、彼はようやく魔法の実技試験について話した。
先生いわく、本来であれば再試験を行わないといけないそうだ。でも、魔物が出た原因や私を襲ってきた理由が分からないため、また私に光魔法を使わせるわけにはいかないらしい。だから、再試験の代わりに、期日までにレポートを提出して欲しいと言われた。
レポートとは言っても、光魔法についての知識をまとめるだけの、とても簡単なものらしい。
ゲームのイベントと同じで筆記試験になるのかと思っていたから、私は驚くと同時に安堵した。課題が簡単なものというのは勿論ある。でも、もっと嬉しかったのはゲームのイベントに収束しなかったことだ。
私は心のどこかで怖かったのかもしれない。多少の展開は違っても、結局は闇の女王イベントに辿り着くんじゃないかって。
あれほど、闇の女王イベントを見たかったのに。でも、今は違うのだと思った。
私はアンナとこれからも友達でいたい。彼女はいい子だし、ハインリヒとの恋の行方だって気になる。それに、ヴェルナーとも・・・・・・。
ーー私ったら何考えてるの!?
彼とは関わらないに越したことはないのに。一瞬でもヴェルナーのことを考えた自分を殴ってやりたい。
とにかく、私はゲームのシナリオを見たいんじゃない。私は私として、平穏無事に生きていたい。そのことを改めて実感した。
※
職員室での用事を終えると、私は迎えの馬車が来ている校門の前に行った。
途中で、同じく馬車を待っていたであろうアンナと出会った。彼女は私の顔を見るなり慌てた様子で駆け寄って来た。
「エマさん、頬が赤くなってますよ。大丈夫ですか?」
先生のおかけで痛みはもうないのだけれど。アンナの反応を見るにまだ腫れは引いていないようだ。
「さっき転んでしまいました。先生に手当をしてもらったので大丈夫です」
「そうなんですか」
アンナは心配そうに私の頬を見つめる。
「あまり痛みが酷かったり、腫れが引かなかったりするようであれば、明日のお茶は延期にしても大丈夫ですよ?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。痛みは先生のおかげでもうありませんし、寮に帰ったら顔を冷やすのできっと腫れも引きます」
にこりと笑ってアンナの顔を見た。よく見ると彼女の目の縁が赤っぽくなっている。じっくりと見なければ分からないけど、メイクで上手く隠しているみたいだ。
ーー泣いていたのかしら?
疑問を口にするのは憚られた。ここは校門の近くということもあって、まばらながらも他の学生がいる。
少なくとも、今、そのことを触れるのはやめておこう。
「明日の放課後、また一緒の馬車に乗ってアンナ様の寮に行くんですよね?」
「そうですね」
「またあの馬車に乗れるって思うとわくわくします」
明るく言ったらアンナは笑った。
「あら。噂をしていたら、馬車が来ましたわ」
校門のすぐそばに王室の印章のついた馬車が止まった。
「私はこれで失礼します。明日のお茶、私も今から楽しみです」
アンナはそう言って笑った。私は別れの挨拶をして、馬車へと向かうアンナを見送った。
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