129 / 171
第十二章
第二話 私を付けて来ただと!そんなバカな!
しおりを挟む
~ペテン視点~
私ことペテンは、フェルディナンを殺害してギルドを燃やした後、アジトに向かっていた。
「これだけあれば、組織の軍資金として申し分ない。きっとサウザーも喜ぶだろう」
宝箱の上蓋を開け、中に入っている紙幣や硬貨を見ながら口角を上げる。
ざっと見ても一億はありそうだ。これだけあれば色々なことができる。
上蓋を閉め、外れないように鍵をかけると、再びアジトに向けて歩く。
そろそろ合流地点のアジトがあるガラン荒野が見えてくる頃だ。
しかし、ガラン荒野が近づく度に何とも言えない不安を感じた。
本当に合流地点はここで合っているよな。
サウザーをボスとする組織は、アジトを複数持っている。ルーレヌ水没林、深緑の森、エンゴー火山、そして今目指しているガラン荒野だ。
今後もアジトの数を増やして行くつもりらしい。そのためにもとにかく金がいる。
ガラン荒野に辿り着くと、荒れ果てた大地の上を歩きながら十番エリアを目指す。
そう、十番エリアにある神殿こそがアジトだ。守護獣ラープロテクションがいなくなったことで神殿に入りやすくなった。
広い荒野の二番エリアから三番エリア、四番エリアの洞窟の中を進み、五番エリアの崖沿いを歩く。そして九番エリア来ると十番エリアに繋がる坂道を歩いた。
さすがにこれだけ広いエリアを歩くだけでも一苦労ですね。特に宝箱を持った状態では余計に体力を使う。
ここまでモンスターと出会さなかったと言うのも、スムーズに進めた一つの要因でしょうね。
まぁ、モンスターが襲ってきたところで瞬殺だから、たいしたタイムロスにはなり得ないでしょうが。
坂道を登り、神殿のある十番エリアに辿り着くと、建物の中に入る。
神殿内は、誰の姿も見えなかった。
「よし、よし、ここには誰もいなさそうですね。もし、ここに人がいたら正直そいつを殺す必要がありました」
神殿内に侵入者がいないことを確認した後、床に描かれたラープロテクションの両翼を押す。
すると床が動き、地下につながる階段が現れた。
念のために周辺を見渡すが、人がいる気配を感じ取れない。
「大丈夫のようですね。では地下に降りるとしましょう」
階段を降りると行き止まりになっているが、壁にあるボタンを押す。隠し階段が閉じると同時に、行き止まりだった壁が左右に動き、扉が現れる。
扉を開けると、部屋の中には七十代の老人が椅子に座っていた。
ふう、どうやら集合場所を間違えてはいなかったようですね。
「お待たせしました。サウザー」
「やっと来たか。あと五分でも遅ければ、今頃お前の首は吹っ飛んでおったぞ」
目が笑っていない彼を見て、背筋が寒くなる。
彼は本気で私を殺そうと考えていたのだ。
「とにかく作戦会議を行いましょう。最後の宝玉なのですが、スリシオが守る宝玉となりますね」
「ああ、あやつが一番の強敵だな。天空龍スリシオは、ワシと同じ伝龍だ。ジャイリスクの時のように、簡単には神殿に入ることすら叶わないだろう」
「そうですね。困ったものです」
「だから今回はワシ自ら出向き、ワシの手でスリシオを倒す」
「そうですね。サウザーがスリシオを足止めしている間に、私が神殿内に侵入して宝玉を手に入れるのが一番でしょう」
「何だか面白い話をしているじゃないか。俺にも一枚噛ませろよ」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り向く。するとそこには、眼帯をはめた茶髪のロングヘアーの男がいた。清潔感があり、容姿も整っているこのイケメンは、私がジャイリスクを足止めするように頼んでいた野盗の頭だ。
「お前、どうしてここが分かった!」
「そんなの決まっているじゃないか。あんたの後をこっそりと付けて来たんだよ」
「バカな! ちゃんと気配がしないか確認しつつ歩いていたぞ!」
「そんなもの気配を消せば済む話だ。おかしいと思わなかったのか? いくら何でもモンスターと出会さないのは異常だ。つまり、俺がお前に近づこうとするモンスターを倒していたのさ」
この男、いったい何者なんだ。ただの野盗ではない。そこらへんにいる落ちぶれた人間に、そのような芸当はできない。
男の内に秘めた力に警戒した。
「そう警戒するなよ。俺はお前たちの味方だ。そのオシリスだっけ?」
「スリシオだ。反対に読むではない」
「そうそう、そのスリシオだけど、俺が相手になって宝玉を手に入れてくる」
「何を言っているんだ! いくらジャイリスクを足止めすることに成功したと言っても、今度の相手はスリシオだ。野盗程度ではどうにもならない!」
声を張り上げ、反論する。いくらこいつが隠した力を持っていたとしても、いくら何でも伝龍を足止めできるはずがないと思っているからだ。
「やってみないと分からないだろう。ギャンブルはリスクが大きれば大きいほど燃えるというもの」
「分かった。ではお前に頼もうではないか」
「サウザー! 本気ですか!」
正直、サウザーがこの男に託すとは予想していなかったので衝撃が大きい。彼は人間を下等生物と見做している。なので、拒否すると思っていた。
「しかし、どうしてそこまでワシらに協力する。理由を聞いても良いか」
「復習のためだ。俺はある人の仇を討つために暗黒龍の復活を望んでいる。だからやつの魂が封印されてある宝玉が必要だ」
野盗の頭の言葉に、動揺を隠しきれなかった。
どうしてこの男は、暗黒神の魂が宝玉に封印されていることを知っている! この男は本当にいったい何者なんだ。
「その目、嘘偽りを言っていないな。なら、同じ目的を持っているもの同士、ワシらは仲間だ。宝玉の件は任せた」
「任されな。それじゃあ今から行って来る。朗報を待つんだな」
そう言うと、野盗の頭は部屋から出て行く。
「サウザー、本当にあの男を信用して任せてもいいのですか?」
「あの男は使い捨ての道具だ。あやつはどうせスリシオは倒せない。体力を失い、傷付いた後にワシが勝負を挑み、倒す算段だよ」
「なるほど、そうでしたか。それなら納得ですね」
私は口角を上げる。暗黒龍が復活すれば、この世界は私のものだ。
私ことペテンは、フェルディナンを殺害してギルドを燃やした後、アジトに向かっていた。
「これだけあれば、組織の軍資金として申し分ない。きっとサウザーも喜ぶだろう」
宝箱の上蓋を開け、中に入っている紙幣や硬貨を見ながら口角を上げる。
ざっと見ても一億はありそうだ。これだけあれば色々なことができる。
上蓋を閉め、外れないように鍵をかけると、再びアジトに向けて歩く。
そろそろ合流地点のアジトがあるガラン荒野が見えてくる頃だ。
しかし、ガラン荒野が近づく度に何とも言えない不安を感じた。
本当に合流地点はここで合っているよな。
サウザーをボスとする組織は、アジトを複数持っている。ルーレヌ水没林、深緑の森、エンゴー火山、そして今目指しているガラン荒野だ。
今後もアジトの数を増やして行くつもりらしい。そのためにもとにかく金がいる。
ガラン荒野に辿り着くと、荒れ果てた大地の上を歩きながら十番エリアを目指す。
そう、十番エリアにある神殿こそがアジトだ。守護獣ラープロテクションがいなくなったことで神殿に入りやすくなった。
広い荒野の二番エリアから三番エリア、四番エリアの洞窟の中を進み、五番エリアの崖沿いを歩く。そして九番エリア来ると十番エリアに繋がる坂道を歩いた。
さすがにこれだけ広いエリアを歩くだけでも一苦労ですね。特に宝箱を持った状態では余計に体力を使う。
ここまでモンスターと出会さなかったと言うのも、スムーズに進めた一つの要因でしょうね。
まぁ、モンスターが襲ってきたところで瞬殺だから、たいしたタイムロスにはなり得ないでしょうが。
坂道を登り、神殿のある十番エリアに辿り着くと、建物の中に入る。
神殿内は、誰の姿も見えなかった。
「よし、よし、ここには誰もいなさそうですね。もし、ここに人がいたら正直そいつを殺す必要がありました」
神殿内に侵入者がいないことを確認した後、床に描かれたラープロテクションの両翼を押す。
すると床が動き、地下につながる階段が現れた。
念のために周辺を見渡すが、人がいる気配を感じ取れない。
「大丈夫のようですね。では地下に降りるとしましょう」
階段を降りると行き止まりになっているが、壁にあるボタンを押す。隠し階段が閉じると同時に、行き止まりだった壁が左右に動き、扉が現れる。
扉を開けると、部屋の中には七十代の老人が椅子に座っていた。
ふう、どうやら集合場所を間違えてはいなかったようですね。
「お待たせしました。サウザー」
「やっと来たか。あと五分でも遅ければ、今頃お前の首は吹っ飛んでおったぞ」
目が笑っていない彼を見て、背筋が寒くなる。
彼は本気で私を殺そうと考えていたのだ。
「とにかく作戦会議を行いましょう。最後の宝玉なのですが、スリシオが守る宝玉となりますね」
「ああ、あやつが一番の強敵だな。天空龍スリシオは、ワシと同じ伝龍だ。ジャイリスクの時のように、簡単には神殿に入ることすら叶わないだろう」
「そうですね。困ったものです」
「だから今回はワシ自ら出向き、ワシの手でスリシオを倒す」
「そうですね。サウザーがスリシオを足止めしている間に、私が神殿内に侵入して宝玉を手に入れるのが一番でしょう」
「何だか面白い話をしているじゃないか。俺にも一枚噛ませろよ」
聞き覚えのある声が聞こえ、振り向く。するとそこには、眼帯をはめた茶髪のロングヘアーの男がいた。清潔感があり、容姿も整っているこのイケメンは、私がジャイリスクを足止めするように頼んでいた野盗の頭だ。
「お前、どうしてここが分かった!」
「そんなの決まっているじゃないか。あんたの後をこっそりと付けて来たんだよ」
「バカな! ちゃんと気配がしないか確認しつつ歩いていたぞ!」
「そんなもの気配を消せば済む話だ。おかしいと思わなかったのか? いくら何でもモンスターと出会さないのは異常だ。つまり、俺がお前に近づこうとするモンスターを倒していたのさ」
この男、いったい何者なんだ。ただの野盗ではない。そこらへんにいる落ちぶれた人間に、そのような芸当はできない。
男の内に秘めた力に警戒した。
「そう警戒するなよ。俺はお前たちの味方だ。そのオシリスだっけ?」
「スリシオだ。反対に読むではない」
「そうそう、そのスリシオだけど、俺が相手になって宝玉を手に入れてくる」
「何を言っているんだ! いくらジャイリスクを足止めすることに成功したと言っても、今度の相手はスリシオだ。野盗程度ではどうにもならない!」
声を張り上げ、反論する。いくらこいつが隠した力を持っていたとしても、いくら何でも伝龍を足止めできるはずがないと思っているからだ。
「やってみないと分からないだろう。ギャンブルはリスクが大きれば大きいほど燃えるというもの」
「分かった。ではお前に頼もうではないか」
「サウザー! 本気ですか!」
正直、サウザーがこの男に託すとは予想していなかったので衝撃が大きい。彼は人間を下等生物と見做している。なので、拒否すると思っていた。
「しかし、どうしてそこまでワシらに協力する。理由を聞いても良いか」
「復習のためだ。俺はある人の仇を討つために暗黒龍の復活を望んでいる。だからやつの魂が封印されてある宝玉が必要だ」
野盗の頭の言葉に、動揺を隠しきれなかった。
どうしてこの男は、暗黒神の魂が宝玉に封印されていることを知っている! この男は本当にいったい何者なんだ。
「その目、嘘偽りを言っていないな。なら、同じ目的を持っているもの同士、ワシらは仲間だ。宝玉の件は任せた」
「任されな。それじゃあ今から行って来る。朗報を待つんだな」
そう言うと、野盗の頭は部屋から出て行く。
「サウザー、本当にあの男を信用して任せてもいいのですか?」
「あの男は使い捨ての道具だ。あやつはどうせスリシオは倒せない。体力を失い、傷付いた後にワシが勝負を挑み、倒す算段だよ」
「なるほど、そうでしたか。それなら納得ですね」
私は口角を上げる。暗黒龍が復活すれば、この世界は私のものだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,107
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる