ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳

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第十二章

第三話 どうしてリュシアンばかりいい思いをする!

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~リュシアン視点~



 アイリスの一件があった後、俺たちは町に戻って行く。

「あーあ、どうしてワシの隣がボウズなんだ。どうしてピチピチの女の子が隣ではない。しかも運転まで任せよって」

 隣に座って馬車を運転しているベルトラムさんが文句を言う。

「日頃の行いのせいじゃないですか。彼女たちにいやらしい視線を向けたり、セクハラ発言したり、女の子の着替えを覗くために、ドスケベミエールを開発したりするからですよ」

「若い女の子が好きで何が悪い! 男なら誰もが思うことであろう!」

「強くは否定しませんが、俺はそこまで性欲に素直ではないですよ」

 まったく、俺たちはなんて会話をしているんだよ。馬車の中にいるユリヤたちに聞かれていなければいいのだけど。

「いいか! 女体と言うのはな――」

 ベルトラムさんが女体の素晴らしさに着いて熱弁するも、俺はただ聞き流す。

 ジジイのエロトークを聞かされながら町に戻ると、町人たちは復興作業に取り掛かっていた。

 あんなことがあったばかりなのに、落ち込まないで前を向いている彼らには、見習うべきところがあるな。

 馬車がギルドの前に止まり、馬車から降りる。すると建物の扉が開かれ、中から水色の髪をクラシカルストレートにしている女性が出てきた。

「エレーヌさん。ただいまもど……り」

 帰還したことを告げると、突然ギルドマスターが俺を抱きしめてきた。予想していなかった彼女の行動に驚いてしまう。

「よかった。ここからでも分かるほどの大きな龍が見えたから、心配していたのよ」

 余程心配していたのだろう。エレーヌさんの抱き締める腕には力が入っており、そのせいで彼女の豊満な胸が押し当てられる。

「あ! エレーヌ! 何リュシアンピグレットを抱きしめているのよ!」

「そうです! ずるいですよ!」

「いくらギルドマスターでも、それはいけませんわ」

「あら、ごめんなさいね。みんなも頑張ってくれたのだから平等に扱わないと」

 エレーヌさんが俺から腕を離すと、彼女はユリヤたち三人を抱き寄せ、抱擁を交わす。

「ちょっと、エレーヌ! なんで今度はあたしたちに抱き付くのよ」

「私、そんな意味で言った訳では!」

「まぁ、まぁ、一応リュシアン王子から引き離すことには成功したので、結果オーライではないですか」

 どうやら彼女たちの意図していることとは違った結果だったようだ。まぁ、成人しているのに、歳上の女性から抱きしめられるのは少し恥ずかしいものな。

「エレーヌ! ワシも頑張った! だから次、次はワシじゃ!」

 ベルトラムさんがエレーヌさんにお願いする。だが、ギルドマスターは彼の方を向くと睨み付けてきた。

 彼女は無言であったが、目はこんなふうに訴えているように感じた。

『いい年して何を期待しているのですか。する訳がないですじゃないですか。気持ち悪いのでやめてください』

 睨まれたベルトラムさんはショックを受けたようで、顔を俯かせる。

「リュシアンはいいなー、年下と言うだけあって、無条件でエレーヌの豊満なおっぱいを堪能することができて。あやつの年下好きに感謝しろよ」

 ベルトラムさんはなぜか羨ましがるが、俺からしたら本当に恥ずかしいからできればやって欲しくない。

 彼の思考は分かりたくもないが、いつの日か彼の気持ちが分かってしまう日が来るのだろうか? 末恐ろしい。

「ところでボウズ、お主の太刀を見せてくれないか?」

「別にいいですけど」

 腰に差している太刀を取り、ベルトラムさんに渡す。彼は得物を受け取ると鞘を抜いて刀身を見た。

「うむ。やはりこれまでの戦いで、この太刀も相当なダメージを受けておるな。サウザーのやつが表舞台に姿を現したことが分かった以上、ボウズの太刀をさらにパワーアップしてやらなければならない」

 ベルトラムさんは鍛冶職人の表情となり、真剣に刀身を眺めて刃の状況を分析する。

 鍛冶職人モードの時のベルトラムさんは、本当に格好良いのだけどなぁ。いつもあんなに凛々しい顔つきをしていたら、きっと今でもモテそうなのに。

「悪いがこいつは今から鍛え直すから、借りていくぞ。明日取りに来てくれ」

 太刀を持ったまま彼は工房の方に向かって行く。

 本人の許可なく勝手に持ち去るのは相変わらずだな。最初の頃は本当に焦ったよ。

「みんな疲れたでしょう。今日は寮に帰って休みなさい。と言っても残り半日しかないけどね」

「それでもありがたいです。ありがとうございます。エレーヌさん」

 ギルドマスターに礼をいい、俺たちは寮に帰った。





 翌日、俺は鍛え直された太刀を受け取りにベルトラムさんの工房を訪れた。

「ベルトラムさん。俺の太刀を受け取りに来たのですが、どうですか」

「おお、リュシアンか。できおるぞ。少し待っておれ」

 彼が工房の奥の部屋に入って行くと、しばらくして戻ってくる。

「ほれ、これがボウズの新しく生まれ変わった太刀だ」

 カウンターの上に得物が置かれるが、柄の部分に知らない属性玉が取り付けられてあることに気付く。

「この属性玉は!」

「炎の属性玉だ。これでボウズは炎の力を使うことができる。しかし、これでこの太刀の属性玉を埋める穴は全て塞がった。他の属性玉を手に入れたときは、入れ替える必要があるから気を付けるのだぞ」

「ありがとうございます。では、今日の任務で生まれ変わった太刀の威力を確認してきます」

「おう、頑張れよ」

「そうだ。代金を払わないと」

 鍛治の代金を支払おうと、財布を取り出す。するとベルトラムさんは右手を前に突き出し、掌を向ける。

「代金は必要ない。その代わり、ワシと約束してくれないか。必ずサウザーを討伐すると。この依頼は、Sランクハンターのお主にした頼めないことだ。悔しいことに、龍と人とでは老いる速さが違う。今のワシではあのジジイを倒すことができない」

 ベルトラムさんが真剣な眼差しで見てくる。

「分かりました。その指名依頼引き受けます。絶対にサウザーを倒し、暗黒龍の復活を阻止してみせますよ」

 彼から別件で依頼を受け、俺は太刀を帯刀すると工房から出た。

「よし、それじゃあギルドに向かうとするか」

 仕事に向かおうと一歩足を踏み出したときだ。

「よぉ、リュシアン。久しぶりだな。見ない間に随分と立派になったじゃないか」

 この声、もしかして!

 振り返ると、そこには懐かしい人物が立っていた。
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