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第十一章
第五話 瀕死からの復活
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モンスターに声をかけると、俺を視認したセイレーンが手を伸ばしてきた。
俺を捕らえようとしているのか。だけど簡単に捕まってたまるか。
一度水中に逃げ込み、セイレーンの手を避ける。そして腰に差してある鞘から太刀を抜いた。
横に振って一気に切り裂こうとするも、水中では水の抵抗で動きが鈍くなる。
普段よりも何テンポも遅れてしまったが、刃はセイレーンの魚部分に当たり、傷口から鮮血を流す。
水中でダメージを受けたことを悟ったのか、モンスターの尾鰭が薙ぎ払うかのように動く。
当たってたまるかよ。
更に奥に潜って敵の一撃を躱し、攻撃が止んだのを確認してから浮上した。
水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を吸う。
『キシャア!』
セイレーンが声を上げると光に包まれ、モンスターがみるみる小さくなっていく。そして光が消えると、ロザリーさんと同じ人魚が姿を現した。
「アタクシの攻撃を全て避けるなんて。こんな男初めてですわ。それに容姿も凄くいいですわね。百人目として相応しいですわ」
人魚は緑色の瞳でジッと見てきた。
「それはどうも。俺もお前から百人目のターゲットになることが目的だったから都合がいい」
「そうですか。なら、早速始めましょうか」
セイレーンは水面から飛び跳ねると、陸地の方に上がる。
ルーレヌ水没林は大部分が水没しているが、四番エリアは陸地が残っている。
でも、どうしてわざわざセイレーンの苦手な陸地で勝負を挑もうとする? 何かの罠か?
「見えますか。アタクシのお腹にかかれた正文字が」
セイレーンが自分のお腹を指差すと、彼女の腹部にはびっしりと『正』の文字が書かれてあった。
なんだ? あの文字は? いったい何を現している?
「今からあなたを食べたとき、ここに新たに線を付け加えて、百人斬りを達成した証となるのです。さて、あなたのアレはいったいどんな味がするのでしょうか?」
蛇みたいに長い舌を出して、セイレーンは舌舐めずりをする。
「リュシアン君! 陸地に上がってはダメよ!」
「リュシアン陸地に上がるのは悪手よ」
六番エリアへの道を塞いでいた二人がこちらに向かいながら声を上げる。
「チッ、ロザリーが追いかけてきましたか。相変わらず邪魔をしやがりますね。ですが、この男だけは絶対にアタクシがいただきます。こんなに百人目に相応しい男は次にいつ出会えるか分かりませんからね」
再びセイレーンが光り輝くと、戦闘形態であるモンスターの姿へと変貌する。
「ここであなたを止めます。絶対にリュシアン君は渡しません。彼のアレはテレーゼに捧げるべきです」
意味の分からないことを言って、ロザリーさんも戦闘形態に姿を変える。
俺のアレ? テレーゼに捧げるべき? いったい何のことを言っているんだ?
頭の中で若干混乱するも、俺がやるべきことは明白だ。あのセイレーンを倒す。
だけど陸には上がるなとロザリーさんから言われている以上、今は接近することができない。
なら、遠距離から攻撃するまでだ。
ポーチに腕を突っ込み、優勝賞品でもらった二つの双剣を取り出す。そして柄頭同士をくっ付け、ブーメランに変えるとセイレーンに向けて投げた。
『キシャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!』
放ったブーメランはモンスターの鱗を切り裂きながら弧を描き、手元に戻ってくる。
初めて使ったが中々なものだ。切れ味もそんなに悪くない。これならここからでも攻撃することができる。
もう一度ブーメランを放とうとしたとき、セイレーンが跳躍して俺の前に飛び降りる。
水飛沫が上がり、小さい波が発生すると、俺の顔は水中に押し付けられる。
体が沈み、水面から遠ざかっていく。
咄嗟のことで息を吸う時間があまりなかった。早く水中に上がらないと息がもたない。
両手を動かして水面に上ろうとした瞬間、セイレーンの尾鰭が天井となって、それ以上浮上することができなかった。
くそう。息がもたない。
『リュシアン!』
意識が薄れていく中、テレーゼが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
おかしいな。水中だから声なんて聞こえないはずなのに。
「リュシアン、しっかりして!」
テレーゼの声がうっすらと聞こえてきた。どうやらまだ少しだけ意識が残っているのかもしれない。
だけど声を出すことができない。俺、このまま冥府の世界へと旅立ってしまうのだろうか?
視界に僅かに映るテレーゼの姿も、だんだんぼやけて輪郭すらわからなくなってくる。
これが俺の最後か。まぁ、ハンターらしい最後だったな。
そう思ったとき、唇に何か柔らかいものが押し当てられた。
不思議だ。他の感覚は何一つ分からないのに、唇だけの感触が伝わってくるなんて。
そう思っていると、だんだん他の感覚までが伝わってきた。
これは胸を押されているのか?
胸を押され、口から空気が送り込まれている感覚が伝わってくる。
そしてだんだんと視界がはっきりとしだした。
俺の視界には、赤い髪を内巻きモテロングにしている女の子の姿が映り出される。
テレーゼ? 何泣いているんだ?
「リュシアン、リュシアン、しっかりして! お願い、死なないで!」
半人半魔の女の子が、泣きながら俺の名前を呼んでいる。その事実に気付いた瞬間、胃から何かが逆流してくるのを感じた。
「ガハッ、ガハッ、ゴホッ」
「リュシアン!」
「テレーゼ、何泣いているんだよ」
「だって、だって、あなたが水の底で意識を失っていたのよ! リュシアンを失ったら、あたしどうにかなってしまう」
彼女の言葉を聞き、意識を失う前のことを思い出す。
「そうだ! セイレーンは!」
まだ戦闘中だったことを思い出し、上体を起こす。
『キシャア!』
『キシャア!』
「今、お母様があの女を足止めしてくれているわ」
二体のセイレーンが陸に上がり、取っ組み合いをしている。
水の中にいたときは気付かなかったが、ロザリーさんの方ではないセイレーンの腹部には『正』の字が描かれてある。
これなら間違えてロザリーさんを攻撃することはなさそうだ。
状況の確認をしていると、ブーメラン状態の双剣を握っていることに気付く。
どうやら意識を失っても、体が得物を離さなかったみたいだな。腰に付いているホルダーにも、太刀が鞘に収納されている状態で収まっている。これなら直ぐに戦闘を再開することができる。
「テレーゼ、今からロザリーさんの加勢に入る!」
立ち上がると、セイレーンに目がけて握っていたブーメランを放つ。
俺を捕らえようとしているのか。だけど簡単に捕まってたまるか。
一度水中に逃げ込み、セイレーンの手を避ける。そして腰に差してある鞘から太刀を抜いた。
横に振って一気に切り裂こうとするも、水中では水の抵抗で動きが鈍くなる。
普段よりも何テンポも遅れてしまったが、刃はセイレーンの魚部分に当たり、傷口から鮮血を流す。
水中でダメージを受けたことを悟ったのか、モンスターの尾鰭が薙ぎ払うかのように動く。
当たってたまるかよ。
更に奥に潜って敵の一撃を躱し、攻撃が止んだのを確認してから浮上した。
水面から顔を出し、思いっきり新鮮な空気を吸う。
『キシャア!』
セイレーンが声を上げると光に包まれ、モンスターがみるみる小さくなっていく。そして光が消えると、ロザリーさんと同じ人魚が姿を現した。
「アタクシの攻撃を全て避けるなんて。こんな男初めてですわ。それに容姿も凄くいいですわね。百人目として相応しいですわ」
人魚は緑色の瞳でジッと見てきた。
「それはどうも。俺もお前から百人目のターゲットになることが目的だったから都合がいい」
「そうですか。なら、早速始めましょうか」
セイレーンは水面から飛び跳ねると、陸地の方に上がる。
ルーレヌ水没林は大部分が水没しているが、四番エリアは陸地が残っている。
でも、どうしてわざわざセイレーンの苦手な陸地で勝負を挑もうとする? 何かの罠か?
「見えますか。アタクシのお腹にかかれた正文字が」
セイレーンが自分のお腹を指差すと、彼女の腹部にはびっしりと『正』の文字が書かれてあった。
なんだ? あの文字は? いったい何を現している?
「今からあなたを食べたとき、ここに新たに線を付け加えて、百人斬りを達成した証となるのです。さて、あなたのアレはいったいどんな味がするのでしょうか?」
蛇みたいに長い舌を出して、セイレーンは舌舐めずりをする。
「リュシアン君! 陸地に上がってはダメよ!」
「リュシアン陸地に上がるのは悪手よ」
六番エリアへの道を塞いでいた二人がこちらに向かいながら声を上げる。
「チッ、ロザリーが追いかけてきましたか。相変わらず邪魔をしやがりますね。ですが、この男だけは絶対にアタクシがいただきます。こんなに百人目に相応しい男は次にいつ出会えるか分かりませんからね」
再びセイレーンが光り輝くと、戦闘形態であるモンスターの姿へと変貌する。
「ここであなたを止めます。絶対にリュシアン君は渡しません。彼のアレはテレーゼに捧げるべきです」
意味の分からないことを言って、ロザリーさんも戦闘形態に姿を変える。
俺のアレ? テレーゼに捧げるべき? いったい何のことを言っているんだ?
頭の中で若干混乱するも、俺がやるべきことは明白だ。あのセイレーンを倒す。
だけど陸には上がるなとロザリーさんから言われている以上、今は接近することができない。
なら、遠距離から攻撃するまでだ。
ポーチに腕を突っ込み、優勝賞品でもらった二つの双剣を取り出す。そして柄頭同士をくっ付け、ブーメランに変えるとセイレーンに向けて投げた。
『キシャアアアアアアアアアァァァァァァァァァァ!』
放ったブーメランはモンスターの鱗を切り裂きながら弧を描き、手元に戻ってくる。
初めて使ったが中々なものだ。切れ味もそんなに悪くない。これならここからでも攻撃することができる。
もう一度ブーメランを放とうとしたとき、セイレーンが跳躍して俺の前に飛び降りる。
水飛沫が上がり、小さい波が発生すると、俺の顔は水中に押し付けられる。
体が沈み、水面から遠ざかっていく。
咄嗟のことで息を吸う時間があまりなかった。早く水中に上がらないと息がもたない。
両手を動かして水面に上ろうとした瞬間、セイレーンの尾鰭が天井となって、それ以上浮上することができなかった。
くそう。息がもたない。
『リュシアン!』
意識が薄れていく中、テレーゼが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。
おかしいな。水中だから声なんて聞こえないはずなのに。
「リュシアン、しっかりして!」
テレーゼの声がうっすらと聞こえてきた。どうやらまだ少しだけ意識が残っているのかもしれない。
だけど声を出すことができない。俺、このまま冥府の世界へと旅立ってしまうのだろうか?
視界に僅かに映るテレーゼの姿も、だんだんぼやけて輪郭すらわからなくなってくる。
これが俺の最後か。まぁ、ハンターらしい最後だったな。
そう思ったとき、唇に何か柔らかいものが押し当てられた。
不思議だ。他の感覚は何一つ分からないのに、唇だけの感触が伝わってくるなんて。
そう思っていると、だんだん他の感覚までが伝わってきた。
これは胸を押されているのか?
胸を押され、口から空気が送り込まれている感覚が伝わってくる。
そしてだんだんと視界がはっきりとしだした。
俺の視界には、赤い髪を内巻きモテロングにしている女の子の姿が映り出される。
テレーゼ? 何泣いているんだ?
「リュシアン、リュシアン、しっかりして! お願い、死なないで!」
半人半魔の女の子が、泣きながら俺の名前を呼んでいる。その事実に気付いた瞬間、胃から何かが逆流してくるのを感じた。
「ガハッ、ガハッ、ゴホッ」
「リュシアン!」
「テレーゼ、何泣いているんだよ」
「だって、だって、あなたが水の底で意識を失っていたのよ! リュシアンを失ったら、あたしどうにかなってしまう」
彼女の言葉を聞き、意識を失う前のことを思い出す。
「そうだ! セイレーンは!」
まだ戦闘中だったことを思い出し、上体を起こす。
『キシャア!』
『キシャア!』
「今、お母様があの女を足止めしてくれているわ」
二体のセイレーンが陸に上がり、取っ組み合いをしている。
水の中にいたときは気付かなかったが、ロザリーさんの方ではないセイレーンの腹部には『正』の字が描かれてある。
これなら間違えてロザリーさんを攻撃することはなさそうだ。
状況の確認をしていると、ブーメラン状態の双剣を握っていることに気付く。
どうやら意識を失っても、体が得物を離さなかったみたいだな。腰に付いているホルダーにも、太刀が鞘に収納されている状態で収まっている。これなら直ぐに戦闘を再開することができる。
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