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第十章

第七話 どんな結果になろうと勝ちは勝ちですわ

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 変態メイドから情報を引き出した俺たちは、勝負を止めるためにイグナイチェフの森にに向かった。

 入り口の一番エリアに入ると、変態メイドから貰った地図を開く。

 この森は円形に番号がふってあるな。どこにユリヤたちがいるか分からないけど、ここは手分けして探したほうがいいかもしれない。

「ねぇ、リュシアンピグレット。なんかあっちの方からモンスターの鳴き声が聞こえないかしら」

 テレーゼが五番エリアの方角を指差す。

 神経を集中して聞き耳を立ててみる。

 確かにモンスターのような鳴き声が聞こえてきたな。でも、五番エリアに向かうには、三番と四番エリアを経由して行かないとダメだ。

「リュシアン王子、こっちに獣道がありますわ。もしかしたらここから五番エリアに行けるかもしれませんわよ」

 エリーザ姫のところに駆け寄り、獣道と地図を見比べる。

 もしかしたらここから五番エリアに行けるかもしれない。だけど、地図には載っていない。地図に描かれてあるマップは絶対だ。地図に載っていない以上、無駄足を踏む可能性もある。

 そんな風に考えていると、ガラン荒野で起きたことを思い出す。

 ガラン荒野で落下した際に、地図には載っていなかったエリアが存在していた。例外があったことも考慮すると、可能性としてはやっぱりあり得る。

 一か八か。ここはエリーザ姫の直感を信じることにしよう。

「分かった。この獣道を進んでみよう。足元が悪いから気を付けて」

 急いではいるが、足元には小石などがある。万が一踏んでバランスを崩せば、後方にいる二人を巻き込むことにもなるだろう。

 先頭になり、小石を退かしながら歩きやすい環境を作る。

 獣道を進んでいると、広い場所に出た。

 そこで見た光景は、ジャッキーの口に腕を突っ込み、何かを取り出そうとしているユリヤの姿だった。そしてその近くに地面に倒れているボブと、ヴィクトーリアの姿も確認できる。

 ユリヤがジャッキーの口から何かを取り出した。だけどここからでは遠くて何を取り出したのかが分からない。

 小型龍がユリヤの傷口を嘗めている中、彼女に駆け寄る。

 彼女の手に握っていたものを直視すると、小型の木箱のような形をしていた。

 あの形、もしかして超小型の木箱爆弾ではないのか。

「ユリヤ! お前が握っているのは爆弾だ! 直ぐに空中に放り投げろ!」

 声を上げると、ユリヤは一瞬驚いた表情をした。

 さすがにモンスターの体内から取り出したものが爆弾だと知れば、動揺してしまう。

「え、あ、はい!」

 ユリヤが上空に向けて爆弾を投げる。だけど彼女の腕力ではそんなに遠くには投げられない。いくら小型でも、あの位置で爆発すれば地上にいるみんなも巻き込むかもしれない。

 間に合え!

 心の中で叫びながら、太刀を抜く。そして柄に嵌めてある風の属性玉に意識を集中させた。

 その瞬間、地上と空中に気圧の差が生まれ、上昇気流を生み出す。空に向かって風が吹き、小型爆弾はどんどん地上から離れていく。

 あの高さなら巻き込まれることはないはず。

 ポーチに腕を突っ込み、中から投げナイフを取り出す。

「いっけー!」

 全力で投球したナイフは、小型爆弾に命中した。

 その瞬間、起爆装置が作動して爆発が起きる。だが、俺の予想を超える大爆発だった。

 まるで爆弾全体に火薬を敷き詰めていたみたいに、小型の爆発力を遥かに超えていたのだ。

 爆風が発生して周辺の木が揺れ、木の葉が舞い上がる。

「ちょっと! これはいったいどういうことなのですかボブ! あんなに破壊力があるなんて聞いていませんでしたわよ!」

「お、お嬢様、俺は爆弾入りのモンスターを購入しただけです。爆弾については販売者から、起爆方法しか教えてもらっていません」

 大爆発を目の前にして、ヴィクトーリアとボブが言い争っている。

 だけどまぁ、結果良ければ全て良しだな。

 爆発による大災害を未然に防げたことに安堵していると、ユリヤたちが駆け寄って来た。

「リュシアンさんありがとうございます。あなたがいなければ、この森は火の海になっていたかもしれません」

「さすがリュシアンピグレットね。咄嗟に爆発の威力を見抜くなんて凄いわ! さすがあたしの男よ」

「リュシアン王子の起点にはいつも驚かされます。何度も死闘と潜り抜けてきただけのことがありますわね」

 どうやら俺が上空に爆弾を持って行ったのは、火薬の量を見抜いたからだと思われたみたいだ。

 本当は偶然なんだけど、彼女たちから送られてくる尊敬の眼差しを見ると、本当のことは言い出せないな。まぁ、彼女たちのような美少女から褒められて嫌ではないから、このままにしておこう。

「ボブ! 四人がモンスターから離れましたわ! 今の内ですわよ」

「了解しましたお嬢様」

 俺たちが余韻に浸っている最中、ヴィクトーリアが命令を出してボブが駆け出す。

 女の子たちに囲まれて身動きが取れなかった俺の目には、ハンマーを振り上げたボブの姿だ。

「うおっりゃ!」

『グッギャー!』

 ハンマーで顔面を殴られたジャッキーは、そのまま地面に叩きつけられた。ボブがハンマーを持ち上げると、モンスターの顔面から大量の血が流れているのがここから見える。

「頭蓋骨陥没により即死だ。これで俺の勝ち。すなわちお嬢様の勝ちだ」

「オーホホホホ! ボブ、さすがですわ。さぁ、ジャッキーが討伐され、勝者はわたくしとなりました。この勝負はユリヤの負けです。リュシアン、覚悟はよろしいですわね」
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