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第85話 ひろし、みんなと第2章

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 町人が宝物庫へ案内を始めると、おじいさんが思い出したように、みんなに言った。

「あ、この中に親分が居ます。気をつけてください」

「「はい」」

 町人が宝物庫の扉を開けると、海賊の親分ゴンゴビが居た。

「はっはっはー! 我こそは世界の海を股にかける海賊の中の海賊、ゴンゴビだ! この宝玉は貰っていくぞ!」

 ゴンゴビは即座に猛毒の霧を吐き出した。

 ブワァアァア

「これは?」
「なんでしょうか」
「ん?」
「毒か?」
「あ! 毒です! にげて!」

「全員、急いで退避!!」

 バタバタバタバタバタ

 おじいさんたちは全員宝物庫の外へ出ると、頭の上に「猛毒」と表示され、どんどんHPが減っていった。

 しかし、ゴンゴビの猛毒を知っていた和代だけは冷静にけ、全回復薬をみんなに送信しながら言った。

「みなさん、これで回復し続けてください!」

「「ありがとうございます」」

 するとなんと、ゴンゴビが宝物庫から飛び出して高笑いしながら言った。

「はっはっはっは! 宝玉は頂いていくぜ! あばよ!」

 そう言うと、町の奥の方へ走っていった。

 それを見た和代は急いで詠唱をして軍神零式を召喚した。

「機械の魔力を手に入れし者よ、我はその力を従わせる者。その激しい力の根源に命を下す。その絶大なる力を今見せよ!」

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 和代が詠唱を終えると地面の魔法陣から軍神零式が現れ、和代は即座にゴンゴビを選択して零式を向かわせた。

「ウォォオオオ!」

 みんなが軍神零式に驚くと、零式は低くかがみ込み、背中のジェットエンジンを点火した。

 ゴォォオオオ!

 そして一気に加速して飛んでいくと、ゴンゴビの背後から恐ろしい勢いのタックルを食らわせた。

 ドゴォォォ!!

「うわぁーーーーーー」

 零式はゴンゴビをタックルしたまま町の奥まで飛んでいった。

「あらあら軍神さん、あんなところまで……!」

 和代が零式を追いかけていくと、みんなの視界にメッセージが現れた。

『15ポイントのステータスポイントを獲得しました』

『メインクエスト 第二章 完』

「「おおーーー!」」

 和代は零式に追いつくと、道端に落ちていた宝玉を拾った。

 するとみんなも走ってやってきて、手を取り合って喜んだ。

「和代さん、凄かったですね!」
「格好良かったです」
「一瞬敵かと思ってしまいました。はは」
「和代、凄いのを呼び出せるんだな!」

 和代はみんなの声を聞いて喜ぶと、零式にお礼をした。

「軍神さん、助かったわ。ゆっくり休んでくださいね」

「ッガ」

 軍神零式が少し声を出すと、和代は詠唱を唱えた。

「機械の魔力を手に入れし者よ、我はその力を従わせる者。その激しい力の根源に命を下す。その絶大なる力を今見せよ鎮めよ」

 ゴゴゴゴゴゴゴ

 すると軍神零式は地面の中に消えていった。

 おじいさんたちは、喜びを分かち合いながら町の奥に現れた船へと向かった。

 そして、おじいさんの案内で船に乗り込むと、楽しくおしゃべりしながらG区画の海岸へ戻っていった。


 ー ピンデチ ー

 G区画の海岸に戻ってきたおじいさんたちは海岸から時計台の前まで戻って来ると、山口がみんなに提案した。

「みなさん、おつかれさまでした。我々3人は朝食をとりに一度帰ります。よかったらフレンド交換しませんか?」

「いいですね」
「はい」
「おねがいします」
「いいですな」

 そこに居た全員は、分かる人に教わりながらお互いにフレンド申請をして、全員がフレンドになった。

「では、我々はお先に失礼致します。また一緒にメインクエストへ行きましょう」

「「はい」」

「「お疲れさまでした!」」

「「おつかれさまでした!」」

 元自衛官たちは敬礼をしながらログアウトしていくと、なんとアカネがログインしてきた。

「良かった、まだ出発してなかった! 熊じぃ、メインクエスト手伝うよ!」

「アカネさん来てくれたんですね! でも今みなさんでクエストを終わらせたところなんですよ」

「ええ、そうなの!?」

「ちょうど帰ってきたところです」

「なんだぁ、せっかく早く起きたのにぃ」

「はっはっは。じゃあ朝練ですな!」

「だね!」

 それを見ていたおじいさんは哲夫と和代に言った。

「では、我々はバリードレへ行きましょうか」

「いいんですか?」
「大丈夫でしょうか」

「わたしも行ったことがないのですが、行き方は調べてありますので」

「ありがとうございます。宜しくおねがいします」

 するとアカネがおじいさんに尋ねた。

「じいちゃんたち、どっか行くの?」

「はい、バリードレというところに。こちらの哲夫さんと和代さんのお孫さんが居るんです」

「そうなんだ。ってか、バリードレって悪い奴らがいるところだよね? なら、あたしたちもお供するよ、ねぇ熊じぃ?」

「そうですな。お手伝いできるならお供致ともいたします」

 すると哲夫が頭を下げながら言った。

「ありがとうございます。本当に宜しいのでしょうか」

 アカネは笑顔で答えた。

「じいちゃんと熊じぃのお友達でしょ。ならお手伝いさせてよ。あたしクエストに間に合わなかったしさ」

 和代はアカネの言葉を聞くと喜んで言った。

「まぁ、優しい娘さんね。うれしいわ」

 こうして、おじいさんたちは、みんなでバリードレへ行くことになった。


 ー 朝7時 現実世界 ー

 現実世界のおばあさんは寝室から出てくると、テーブルの上のメモに「ごちそうさまでした」の文字を見つけた

 おばあさんは、それを読むと朝から嬉しい気持ちになった。

「うふふ。今頃、頑張っているかしら」

 おばあさんは笑顔になりながら皿を片付けて身支度を整えると、冷蔵庫に入れておいた残りのサンドイッチを食べながらザ・フラウの公式ガイドブックを読み始めた。

 おばあさんは目次から「封印された魔法使い」のページを開くと、マガイルーの魔法使いの事が書いてある所を読み始めた。

 ー マガイルーの封印された魔法使いは暗黒魔法を操る冥界《めいかい》族の魔法使い。眷属にすることは難しいが魔法は最強クラス ー

「あら、あの猫ちゃん凄いのね」

 おばあさんはそう言うと、イークラトの封印されたドラゴンの魔法使いのところを見てみた。

 ー イークラトの封印された魔法使いは獣《けもの》族最強のドラゴンの魔法使い。だが変わり者で他人の話に耳を貸さない。主人の言いつけは守る ー

「あら、ほんとうに気難しそうね。うふふ」

 おばあさんは朝食をとり終わると、ふとピンデチの隣の店の事を思い出した。

「そういえば、お隣さん朝10時までやってるって言ってたわね……」

 おばあさんはそう呟くと、居間の座椅子に座ってVRグラスかけ、ゲームの世界に入った。


 おばあさんは時計台の前に現れると、目の前に黒猫が居た。

「洋子殿、おはようございます」

「あら猫ちゃん、おはよう。猫ちゃん本で調べたら凄い魔法使いなのね」

「いえ、わたしが主人と認めた洋子殿のほうが素晴らしいのです」

「そうなのかしら。わたしは実感がないけれども」

 そんな事を話しながら一緒にスマイル道具店に辿り着くと、窓越しにアルマジロたちが寝ている姿が見えた。

「うふふ、アルマジロちゃんたち、気持ちよさそうに寝てるわね」

 おばあさんは笑顔になると、まだ開店していたお隣のお店に入った。

「おはようございます。隣の店の洋子です」

 店内には店主のロビの他に、2人の優しそうな若い男性プレイヤーたちが居た。
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