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白の脅威
第47話 ようこ、ようかんを楽しむ
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おばあさんたちはピンデチの時計台の前に移動してくると、みんなでお店へ向かった。
すると、途中でカワセミが驚いた顔をして立ち止まった。
「お姉ちゃん」
なんと、カワセミの前に姉のミドリが立っていた。
「あら。イグラァの社長に会いに来たら、あんたに会うなんてね。その格好はどうしたの?」
「わたしリスポーン(復活)したらセーブデータ消えた」
「そう。あんなにお金かけてあげたのに、油断して負けるからよ」
「……ごめん」
「もういいわ。現実世界でもゲームの世界でも私の前に現れないでね」
「……うん」
「あなたの荷物、横浜のマンションに送るから」
姉のミドリはそう言うと、村のデータセンターのほうへ去っていった。
おばあさんはそれを見てカワセミに言った。
「あの子、強がっているけど寂しそうな目をしていたわ。……あの子も辛いのかしら」
カワセミは少し目を伏せながら答えた。
「お姉ちゃんはアーチェリーのエリート。親や周りの期待が大きくて負けは許されない。そしたら何事も負けられない性格になった」
「そう……」
「わたしはフェンシングをやってて、でも期待されるのが嫌で、今年のインターハイわざと負けたんだ。そうしたらお姉ちゃんが自分の事のように怒って……」
「そうだったのね……」
「このゲームも父が練習になるからって勧めてくれた。でもお姉ちゃんは負けるのが嫌だから、すごくお金使ったんだ」
「あら……」
「わたしにもお金をかけて強くした。妹が負けるのも嫌だから。でも負けたから怒って……」
「ごめんなさい、嫌なことを話させちゃったわね……」
するとナミがカワセミに言った。
「ともだちになろう」
カワセミは驚いてナミを見た。するとおばあさんも笑顔で言った。
「そうそう、お友達になりましょう!」
カワセミの視界にナミとおばあさんのフレンド申請が表示されると、カワセミは少し笑顔になってフレンド申請を承認した。
おばあさんは笑顔になったカワセミの手を取ると嬉しそうに言った。
「さぁ、お店に行きましょう!」
おばあさんたちは、お店へと向かった。
ー ピンデチのお店 ー
「はい、全回復薬10個で2800プクナになります」
「いやぁ、ほんと安くて助かるよ。また来るね!」
「ありがとうございます、またよろしくお願いします!」
マユがお客さんを見送ると、おばあさんたちが帰ってくるのが見えた。
「おかえり~!」
「は~い、ただいま!」
おばあさんが答えるとメイもお店から出てきた。
「あ、おかえり~」
「ただいま!」
おばあさんはマユとメイの前にやって来るとカワセミを紹介した。
「こちらの方は、レググリの町でお友達になったカワセミさんです。とってもお強いの」
「マユです。よろしく」
「わたしメイ、よろしくね!」
「あ、カワセミです。よろしく」
すると、おばあさんが嬉しそうに言った。
「今日はレググリ名物の『溶岩ようかん』を買ってきましたよ」
それを聞いたマユは喜んで言った。
「やば! もちろん限定のイチゴ味だよね」
「もちろん! 10本買ってきました!」
「やったー! みんなで2階で食べよう! カワセミさんも来て!」
おばあさんたちはお店のカウンターに「御用の方はベルを鳴らしてください」の看板を出して2階へ上がった。
お店の2階には、みんなが集まれる部屋があり、みんなでよくお菓子を食べていた。
おばあさんは買ってきた「溶岩ようかん」を出現させると、みんなに一本ずつ配って笑顔になった。
「さぁ、どうぞ召し上がってください」
「「いただきまーす!」」
みんなは、フィルムを剥がすとそのままかぶりついた。
「おいしー!」
「うま」
「おいし」
「あら、おいしいわね」
「うん……うん」
するとマユは溶岩ようかんを頬張りながらカワセミに尋ねた。
「カワセミさんは学生さんですか?」
「うん。高三」
「え!? ウチらと一緒じゃん」
「え、そうなの?」
それを聞いたメイも嬉しそうに言った。
「そうだよ。あたしたち高三の同級生なんだ」
ナミも続いた。
「そう」
するとカワセミは少し笑顔になってみんなに言った。
「なんか嬉しい。わたしフェンシング一筋で、こんな風に甘いもの食べながらお喋りなんかしたことなくて」
すると、マユとメイからフレンド申請とグループチャットの招待が届いた。
カワセミは笑顔になって受理すると嬉しそうにお礼をした。
「フレンド申請とチャット招待ありがとう。美味しいね、ようかん」
「だね!」
「うん!」
「ぅん」
「そうね」
するとマユが再びカワセミに尋ねた。
「ねぇ、フェンシングって剣で戦うやつだよね? 部活? どんな感じなの?」
「うん、剣で突く競技。部活だよ。わたしの高校は名門校で厳しいんだ。おかげで恋愛もできなかった」
「ええ! ……ってまぁ、わたしも片思いで終わっちゃいそうだけどね」
「えっ、なんで? 卒業までまだあるよ」
「え、だって、なんか練習が忙しそうで。彼まだ高2だし部活は頑張って欲しいから、邪魔できないっていうか」
「え、年下なの!? その人、運動部?」
「ううん、ブラスバンド部。トロンボーンでカッコイイの」
「あ、それ分かる! 横顔がいいよね」
「そうそうそう! わかってるカワセミさん!」
するとメイがカワセミに聞いた。
「ところでカワセミさんの好きなタイプは?」
「ええっ!? タイプって言われても……」
「たとえば、体育会系? 文化系?」
「どちらかと言えば、文化系? かな」
「そうなの!? フェンシングは体育会系だよね?」
「そうなんだけど、個人的には将棋とかしてる感じの人がいいかな」
「「将棋!?」」
「え、ええ? だめ?」
カワセミとみんなは恋愛話ですぐに仲良くなった。
しばらくしてお昼になると、みんな食事をとりに一旦ログアウトしていった。
カワセミはVRグラスを外して現実世界に戻ってくると、ため息をついて呟いた。
「横浜のマンションに引っ越さなきゃ。でもいいや。これから楽しそうだし」
カワセミは大きなバッグに必要な物だけ詰めて中目黒のマンションを出ると、タクシーで祖父母の暮らす横浜のマンションへと向かった。
途中、タクシーの中でザ・フラウの運営から届いていたメッセージに気づき、アプリでチェックした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
セーブデータが消失したプレイヤー様
今回、メンテナンス中のコーシャタへ侵入したプレイヤーの皆様にもセーブデータをお返し致します。
運営への不満な点がありましたら、お教えくださいますようお願いいたします。
IDを確認次第、直近のセーブデータをお返しいたします。
【不満な点を送信する】
ーーーーーーーーーーーーーーー
「よかった。戻るんだ 」
カワセミは「不満な点を送信する」を押すと、メッセージを打ち込こんだ。
<不満な点はありません。これからも宜しくお願いします。申し訳ありませんでした。>
そして「送信」ボタンを押すと少し笑顔になりながらタクシーの窓から街の景色を眺めた。
「きっと普通の高校生って、ああやってお喋りして笑い合ってるんだろうな」
♪♪~♪♪♪~♪
カワセミのスマホが鳴ると運営からのメッセージが届いた。
『プレイヤーネーム、カワセミ様。2日前のセーブデータに復旧が完了いたしました。今後とも宜しくお願い致します』
「……あ、データ戻ったら新しいフレンドが!」
カワセミは2日前のセーブデータに戻って新しいフレンドが消えたと思い、慌ててアプリで確認した。
「あぁ、良かった。新しいフレンドも引き継いでくれてた……」
カワセミは「ふぅ」と息をついてスマホをしまうと、またタクシーの窓から街の景色を眺めた。
すると、途中でカワセミが驚いた顔をして立ち止まった。
「お姉ちゃん」
なんと、カワセミの前に姉のミドリが立っていた。
「あら。イグラァの社長に会いに来たら、あんたに会うなんてね。その格好はどうしたの?」
「わたしリスポーン(復活)したらセーブデータ消えた」
「そう。あんなにお金かけてあげたのに、油断して負けるからよ」
「……ごめん」
「もういいわ。現実世界でもゲームの世界でも私の前に現れないでね」
「……うん」
「あなたの荷物、横浜のマンションに送るから」
姉のミドリはそう言うと、村のデータセンターのほうへ去っていった。
おばあさんはそれを見てカワセミに言った。
「あの子、強がっているけど寂しそうな目をしていたわ。……あの子も辛いのかしら」
カワセミは少し目を伏せながら答えた。
「お姉ちゃんはアーチェリーのエリート。親や周りの期待が大きくて負けは許されない。そしたら何事も負けられない性格になった」
「そう……」
「わたしはフェンシングをやってて、でも期待されるのが嫌で、今年のインターハイわざと負けたんだ。そうしたらお姉ちゃんが自分の事のように怒って……」
「そうだったのね……」
「このゲームも父が練習になるからって勧めてくれた。でもお姉ちゃんは負けるのが嫌だから、すごくお金使ったんだ」
「あら……」
「わたしにもお金をかけて強くした。妹が負けるのも嫌だから。でも負けたから怒って……」
「ごめんなさい、嫌なことを話させちゃったわね……」
するとナミがカワセミに言った。
「ともだちになろう」
カワセミは驚いてナミを見た。するとおばあさんも笑顔で言った。
「そうそう、お友達になりましょう!」
カワセミの視界にナミとおばあさんのフレンド申請が表示されると、カワセミは少し笑顔になってフレンド申請を承認した。
おばあさんは笑顔になったカワセミの手を取ると嬉しそうに言った。
「さぁ、お店に行きましょう!」
おばあさんたちは、お店へと向かった。
ー ピンデチのお店 ー
「はい、全回復薬10個で2800プクナになります」
「いやぁ、ほんと安くて助かるよ。また来るね!」
「ありがとうございます、またよろしくお願いします!」
マユがお客さんを見送ると、おばあさんたちが帰ってくるのが見えた。
「おかえり~!」
「は~い、ただいま!」
おばあさんが答えるとメイもお店から出てきた。
「あ、おかえり~」
「ただいま!」
おばあさんはマユとメイの前にやって来るとカワセミを紹介した。
「こちらの方は、レググリの町でお友達になったカワセミさんです。とってもお強いの」
「マユです。よろしく」
「わたしメイ、よろしくね!」
「あ、カワセミです。よろしく」
すると、おばあさんが嬉しそうに言った。
「今日はレググリ名物の『溶岩ようかん』を買ってきましたよ」
それを聞いたマユは喜んで言った。
「やば! もちろん限定のイチゴ味だよね」
「もちろん! 10本買ってきました!」
「やったー! みんなで2階で食べよう! カワセミさんも来て!」
おばあさんたちはお店のカウンターに「御用の方はベルを鳴らしてください」の看板を出して2階へ上がった。
お店の2階には、みんなが集まれる部屋があり、みんなでよくお菓子を食べていた。
おばあさんは買ってきた「溶岩ようかん」を出現させると、みんなに一本ずつ配って笑顔になった。
「さぁ、どうぞ召し上がってください」
「「いただきまーす!」」
みんなは、フィルムを剥がすとそのままかぶりついた。
「おいしー!」
「うま」
「おいし」
「あら、おいしいわね」
「うん……うん」
するとマユは溶岩ようかんを頬張りながらカワセミに尋ねた。
「カワセミさんは学生さんですか?」
「うん。高三」
「え!? ウチらと一緒じゃん」
「え、そうなの?」
それを聞いたメイも嬉しそうに言った。
「そうだよ。あたしたち高三の同級生なんだ」
ナミも続いた。
「そう」
するとカワセミは少し笑顔になってみんなに言った。
「なんか嬉しい。わたしフェンシング一筋で、こんな風に甘いもの食べながらお喋りなんかしたことなくて」
すると、マユとメイからフレンド申請とグループチャットの招待が届いた。
カワセミは笑顔になって受理すると嬉しそうにお礼をした。
「フレンド申請とチャット招待ありがとう。美味しいね、ようかん」
「だね!」
「うん!」
「ぅん」
「そうね」
するとマユが再びカワセミに尋ねた。
「ねぇ、フェンシングって剣で戦うやつだよね? 部活? どんな感じなの?」
「うん、剣で突く競技。部活だよ。わたしの高校は名門校で厳しいんだ。おかげで恋愛もできなかった」
「ええ! ……ってまぁ、わたしも片思いで終わっちゃいそうだけどね」
「えっ、なんで? 卒業までまだあるよ」
「え、だって、なんか練習が忙しそうで。彼まだ高2だし部活は頑張って欲しいから、邪魔できないっていうか」
「え、年下なの!? その人、運動部?」
「ううん、ブラスバンド部。トロンボーンでカッコイイの」
「あ、それ分かる! 横顔がいいよね」
「そうそうそう! わかってるカワセミさん!」
するとメイがカワセミに聞いた。
「ところでカワセミさんの好きなタイプは?」
「ええっ!? タイプって言われても……」
「たとえば、体育会系? 文化系?」
「どちらかと言えば、文化系? かな」
「そうなの!? フェンシングは体育会系だよね?」
「そうなんだけど、個人的には将棋とかしてる感じの人がいいかな」
「「将棋!?」」
「え、ええ? だめ?」
カワセミとみんなは恋愛話ですぐに仲良くなった。
しばらくしてお昼になると、みんな食事をとりに一旦ログアウトしていった。
カワセミはVRグラスを外して現実世界に戻ってくると、ため息をついて呟いた。
「横浜のマンションに引っ越さなきゃ。でもいいや。これから楽しそうだし」
カワセミは大きなバッグに必要な物だけ詰めて中目黒のマンションを出ると、タクシーで祖父母の暮らす横浜のマンションへと向かった。
途中、タクシーの中でザ・フラウの運営から届いていたメッセージに気づき、アプリでチェックした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
セーブデータが消失したプレイヤー様
今回、メンテナンス中のコーシャタへ侵入したプレイヤーの皆様にもセーブデータをお返し致します。
運営への不満な点がありましたら、お教えくださいますようお願いいたします。
IDを確認次第、直近のセーブデータをお返しいたします。
【不満な点を送信する】
ーーーーーーーーーーーーーーー
「よかった。戻るんだ 」
カワセミは「不満な点を送信する」を押すと、メッセージを打ち込こんだ。
<不満な点はありません。これからも宜しくお願いします。申し訳ありませんでした。>
そして「送信」ボタンを押すと少し笑顔になりながらタクシーの窓から街の景色を眺めた。
「きっと普通の高校生って、ああやってお喋りして笑い合ってるんだろうな」
♪♪~♪♪♪~♪
カワセミのスマホが鳴ると運営からのメッセージが届いた。
『プレイヤーネーム、カワセミ様。2日前のセーブデータに復旧が完了いたしました。今後とも宜しくお願い致します』
「……あ、データ戻ったら新しいフレンドが!」
カワセミは2日前のセーブデータに戻って新しいフレンドが消えたと思い、慌ててアプリで確認した。
「あぁ、良かった。新しいフレンドも引き継いでくれてた……」
カワセミは「ふぅ」と息をついてスマホをしまうと、またタクシーの窓から街の景色を眺めた。
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