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あの日の記憶
第31話 ひろし、マウンドに立つ
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その頃、おじいさんとめぐは軍神・零式改に追い詰められていた。
めぐは毒の粉を投げつけたが、零式改には通用せず、他のアイテム類もあまり効果がなかった。
おじいさんの石もHPを削ることは出来るものの、装甲がかなり厚く致命傷には至らなかった。
軍神・零式改はジワリジワリとおじいさんとめぐを追い詰めると、めぐは残りのMPを全部使って勝負に出た。
「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」
ガガーーン!!
大きな雷は零式改を直撃し、HPが半分を切った零式改はたまらず膝をついた。
しかし零式改は即座に立ち上がると、めぐに向かって一直線にタックルを仕掛けてきた。
ドガン!!
「きゃぁあ!」
ゴッ!
「あぁ」
零式改はおじいさんも巻き込みながら、めぐを大きく吹き飛ばした。
ズシャァァ……
HPをかなり減らしてしまった二人は、一旦ステージから降りて零式改から離れた。
しかし、零式改も二人を追いかけてステージから降りてきた。
するとその時、めぐとおじいさんの視界にメッセージが現れた。
『洋子さんから全回復薬が10個贈られました』
『洋子さんから防御強化薬が10個贈られました』
ヒュッ……ガンッ!
そして、ナミが零式改にヘッドショットを決めて気を引いた。
めぐとおじいさんは、その隙に急いで全回復薬と防御強化薬を飲み干すと、再び戦闘態勢に入った。
めぐはさらに持っていた魔法回復薬も飲んでMPを回復させた。
おじいさんは慌てて辺りを見回すと、弓を構えるナミとおばあさんたちを見つけて大声でお礼をした。
「どなたか存じませんが、大変助かりました! ありがとうございます!」
おばあさんはおじいさんの声に笑顔で大きく頷くと、とても嬉しい気持ちになった。
おばあさんは、次に黒ちゃんに全回復薬と防御強化薬を送信すると、今度は「近くのプレイヤー一覧」からアカネを選択した。
すると、アイテムを渡すおばあさんを見逃さなかった召喚魔道士が、イラつきながら声を漏らして零式改をおばあさんへと走らせた。
「あの女、何かアイテムを配ってやがる!」
それを聞いたおじいさんは、慌てておばあさんたちの所へ走っていった。
「逃げてください! あぶない!」
めぐもおばあさんたちを助けようと詠唱を始めたが、すでに零式改はおばあさんたちの近くまで走りこんでいた。
ヒュッ……ガンッ!
迫りくる零式改にナミが矢を放つと、一瞬だけ零式改の足が止まった。
「……、あの者に裁きの雷を!」
そこへ、詠唱を完成させためぐの雷が零式改に襲い掛かった。
ガガーーン!!
「ガッ、ガガガア……」
HPが半分を切っていた零式改は手足をショートさせて動きを止めたが、なんとまた動き出して戦斧を振り上げ、おばあさんたちに斬りかかった。
「ガガガ! ガガァ!」
「やば! 洋子ちゃん後ろに隠れて!」
襲いかかってくる零式改に、僧侶のメイはおばあさんを守ろうと防御魔法を展開し、さらにマユが剣と盾で防御しておばあさんの前に出た。
ガアァァン!
しかし、その威力は凄まじく、おばあさんも巻き込んで激しく吹き飛ばされた。
「きゃぁーー」
おばあさんたちは地面を転がり、HPはほとんど無くなってしまった。
零式改は吹き飛んだおばあさんたちにトドメを刺そうと歩いていくと、おばあさんたちは顔を強張らせて必死に構えた。
……ズザァ!
するとその時、おばあさんたちと零式改の間におじいさんが滑り込んできた。
「あっ!」
おばあさんは思わず声をあげると、おじいさんはポケットから野球ボールのような大きい石を取り出して、強く握りしめた。
そして、おじいさんは両腕をあげて投球フォームに入ると、ゆっくりと左足をあげた。
「はっ……、ひろしさん」
おばあさんの目の前には、あの日恋に落ちた、甲子園のマウンドに立つピッチャー、ひろしがユニフォームを着て投球フォームに入っていた。
ひろしは大きく振りかぶって左足を力強く踏み出すと、低い姿勢から体を開いて腕をしならせた。
そして、二本の指に全ての勢いを乗せると、一気に腕を振り抜いて弾丸のような一球を放った。
シャァァアアァァ!!
零式改はおじいさんの石に驚くと、咄嗟に戦斧でガードした。
パーーン!
しかし、おじいさんの一球は戦斧を弾き飛ばした。
そしておじいさんの放った石は威力を落とすこと無く零式改の頭に命中すると、爆発させたかのように頭の半分を吹き飛ばした。
ドガァァン!!
パン……パパン……パシッ
……ガシャン!
零式改はショートさせながら倒れ、そのまま消滅していった。
それを見届けたナミは、素早く零式改を召喚した召喚魔導士に矢を放った。
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……、ドッ! ドッ! ドッ!
3本放った矢は美しく召喚魔導士へ飛んで行き、全てヘッドショットを決めてHPを削った。
「ぐぁぁあ! くそっ、MPが足りねぇ! もう強ぇのが召喚できねぇ!」
召喚魔導士が叫ぶと、めぐが小呪文を連続で放った。
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……、ドッ! ドッ! ドッ!
めぐとナミの連携攻撃が決まると、なんと召喚魔導士は慌ててダチョウのような鳥を召喚し、それに乗って一目散に逃げ出してしまった。
めぐはナミと目を合わせてウンと頷くと、おじいさんに言った。
「おじいちゃん、アカネたちを助けに行こう!」
「はい!」
おじいさんとめぐとナミは、そのまま黒ちゃんとアカネの加勢に向かった。
おばさんたちは全回復薬で自分たちのHPを回復させると、再び全回復薬と防御強化薬を配り始めた。
その頃、イリューシュは大弓使いにプレッシャーをかけながら、少しずつHPを削っていった。
「ふふふ。さすが大弓使いですね。なかなかヘッドショットをさせてもらえませんね」
「当たり前だ! くそっ!」
大弓使いはイリューシュの矢を避けながら必死に反撃をするが、すべてイリューシュの氷の壁に阻まれていた。
大弓使いはジリジリと追いつめられると、苦しい表情で呟いた。
「チッ、仕方ねぇ。あのスキルを使うか」
大弓使いはそう言って片膝をつくと、弓の下の部分を地面に突き刺した。
ドガッ、グググググッ
そして力いっぱい弓を引くと、自分のHPを減らして攻撃力に変換するスキルを使った。
すると矢は輝き出して攻撃力を増した。
「はっはー! こんだけ強化した矢は氷の壁も貫くぜぇ! 死ねぇぇ」
大弓使いは顔を歪ませて笑うと、渾身の力をこめてイリューシュに矢を放った。
ビュォォオオオ!
それを見たイリューシュは氷の壁を出して、さらに弓でも防御した。
ガァオォォオン!
しかし、大弓使いの矢は想像以上の威力で氷の壁を貫通し、イリューシュの弓を直撃した。
そしてその瞬間、なんとイリューシュの弓は耐久値がゼロになって使用できなくなり、消滅してしまった。
それを見た大弓使いは大笑いしながら言い放った。
「はははは! 見たか! 大弓使いをナメるなよ!」
「ええ、素晴らしい一矢でした。仕方がありませんね、あまり美しくなくて好きでは無いのですが……」
イリューシュはそう言うと、手で何かを操作して一際大きな大弓を左手に出現させた。
その大弓は黒い鱗のような物で覆われ、弓の上の部分には目玉が付いていて大弓使いを睨みつけた。
イリューシュの大弓を見た大弓使いは驚いて大声を上げた。
「なぁあっ!! オロチの大弓!! お前まさかオロチを!? 」
イリューシュは8本が一束になっている矢を出現させてつがえると、引き絞りながら答えた。
「ええ、30頭ほどですけど。ふふふ」
ゴォーン!
重たい音を響かせてオロチの大弓から矢が放たれると、矢は即座に8つに別れた。
「うわぁぁあああ!」
ドドドドドドドド! ドガッ!
8本の矢は全て大弓使いに刺さって吹き飛ばし、そのまま後ろの壁に突き刺さった。
「オ……、オロチの威力……、すごいわ……」
大弓使いは苦笑いしながら消滅していった。
めぐは毒の粉を投げつけたが、零式改には通用せず、他のアイテム類もあまり効果がなかった。
おじいさんの石もHPを削ることは出来るものの、装甲がかなり厚く致命傷には至らなかった。
軍神・零式改はジワリジワリとおじいさんとめぐを追い詰めると、めぐは残りのMPを全部使って勝負に出た。
「聖なる雷を司る者たちよ。我にその慈悲と慈愛を与えたまえ。清く正義の力をもって嘆願する。あの者に裁きの雷を!」
ガガーーン!!
大きな雷は零式改を直撃し、HPが半分を切った零式改はたまらず膝をついた。
しかし零式改は即座に立ち上がると、めぐに向かって一直線にタックルを仕掛けてきた。
ドガン!!
「きゃぁあ!」
ゴッ!
「あぁ」
零式改はおじいさんも巻き込みながら、めぐを大きく吹き飛ばした。
ズシャァァ……
HPをかなり減らしてしまった二人は、一旦ステージから降りて零式改から離れた。
しかし、零式改も二人を追いかけてステージから降りてきた。
するとその時、めぐとおじいさんの視界にメッセージが現れた。
『洋子さんから全回復薬が10個贈られました』
『洋子さんから防御強化薬が10個贈られました』
ヒュッ……ガンッ!
そして、ナミが零式改にヘッドショットを決めて気を引いた。
めぐとおじいさんは、その隙に急いで全回復薬と防御強化薬を飲み干すと、再び戦闘態勢に入った。
めぐはさらに持っていた魔法回復薬も飲んでMPを回復させた。
おじいさんは慌てて辺りを見回すと、弓を構えるナミとおばあさんたちを見つけて大声でお礼をした。
「どなたか存じませんが、大変助かりました! ありがとうございます!」
おばあさんはおじいさんの声に笑顔で大きく頷くと、とても嬉しい気持ちになった。
おばあさんは、次に黒ちゃんに全回復薬と防御強化薬を送信すると、今度は「近くのプレイヤー一覧」からアカネを選択した。
すると、アイテムを渡すおばあさんを見逃さなかった召喚魔道士が、イラつきながら声を漏らして零式改をおばあさんへと走らせた。
「あの女、何かアイテムを配ってやがる!」
それを聞いたおじいさんは、慌てておばあさんたちの所へ走っていった。
「逃げてください! あぶない!」
めぐもおばあさんたちを助けようと詠唱を始めたが、すでに零式改はおばあさんたちの近くまで走りこんでいた。
ヒュッ……ガンッ!
迫りくる零式改にナミが矢を放つと、一瞬だけ零式改の足が止まった。
「……、あの者に裁きの雷を!」
そこへ、詠唱を完成させためぐの雷が零式改に襲い掛かった。
ガガーーン!!
「ガッ、ガガガア……」
HPが半分を切っていた零式改は手足をショートさせて動きを止めたが、なんとまた動き出して戦斧を振り上げ、おばあさんたちに斬りかかった。
「ガガガ! ガガァ!」
「やば! 洋子ちゃん後ろに隠れて!」
襲いかかってくる零式改に、僧侶のメイはおばあさんを守ろうと防御魔法を展開し、さらにマユが剣と盾で防御しておばあさんの前に出た。
ガアァァン!
しかし、その威力は凄まじく、おばあさんも巻き込んで激しく吹き飛ばされた。
「きゃぁーー」
おばあさんたちは地面を転がり、HPはほとんど無くなってしまった。
零式改は吹き飛んだおばあさんたちにトドメを刺そうと歩いていくと、おばあさんたちは顔を強張らせて必死に構えた。
……ズザァ!
するとその時、おばあさんたちと零式改の間におじいさんが滑り込んできた。
「あっ!」
おばあさんは思わず声をあげると、おじいさんはポケットから野球ボールのような大きい石を取り出して、強く握りしめた。
そして、おじいさんは両腕をあげて投球フォームに入ると、ゆっくりと左足をあげた。
「はっ……、ひろしさん」
おばあさんの目の前には、あの日恋に落ちた、甲子園のマウンドに立つピッチャー、ひろしがユニフォームを着て投球フォームに入っていた。
ひろしは大きく振りかぶって左足を力強く踏み出すと、低い姿勢から体を開いて腕をしならせた。
そして、二本の指に全ての勢いを乗せると、一気に腕を振り抜いて弾丸のような一球を放った。
シャァァアアァァ!!
零式改はおじいさんの石に驚くと、咄嗟に戦斧でガードした。
パーーン!
しかし、おじいさんの一球は戦斧を弾き飛ばした。
そしておじいさんの放った石は威力を落とすこと無く零式改の頭に命中すると、爆発させたかのように頭の半分を吹き飛ばした。
ドガァァン!!
パン……パパン……パシッ
……ガシャン!
零式改はショートさせながら倒れ、そのまま消滅していった。
それを見届けたナミは、素早く零式改を召喚した召喚魔導士に矢を放った。
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……、ドッ! ドッ! ドッ!
3本放った矢は美しく召喚魔導士へ飛んで行き、全てヘッドショットを決めてHPを削った。
「ぐぁぁあ! くそっ、MPが足りねぇ! もう強ぇのが召喚できねぇ!」
召喚魔導士が叫ぶと、めぐが小呪文を連続で放った。
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
「聖なる雷を司る者たちよ。あの者に裁きの雷を!」
ヒュッ、ヒュッ、ヒュッ……、ドッ! ドッ! ドッ!
めぐとナミの連携攻撃が決まると、なんと召喚魔導士は慌ててダチョウのような鳥を召喚し、それに乗って一目散に逃げ出してしまった。
めぐはナミと目を合わせてウンと頷くと、おじいさんに言った。
「おじいちゃん、アカネたちを助けに行こう!」
「はい!」
おじいさんとめぐとナミは、そのまま黒ちゃんとアカネの加勢に向かった。
おばさんたちは全回復薬で自分たちのHPを回復させると、再び全回復薬と防御強化薬を配り始めた。
その頃、イリューシュは大弓使いにプレッシャーをかけながら、少しずつHPを削っていった。
「ふふふ。さすが大弓使いですね。なかなかヘッドショットをさせてもらえませんね」
「当たり前だ! くそっ!」
大弓使いはイリューシュの矢を避けながら必死に反撃をするが、すべてイリューシュの氷の壁に阻まれていた。
大弓使いはジリジリと追いつめられると、苦しい表情で呟いた。
「チッ、仕方ねぇ。あのスキルを使うか」
大弓使いはそう言って片膝をつくと、弓の下の部分を地面に突き刺した。
ドガッ、グググググッ
そして力いっぱい弓を引くと、自分のHPを減らして攻撃力に変換するスキルを使った。
すると矢は輝き出して攻撃力を増した。
「はっはー! こんだけ強化した矢は氷の壁も貫くぜぇ! 死ねぇぇ」
大弓使いは顔を歪ませて笑うと、渾身の力をこめてイリューシュに矢を放った。
ビュォォオオオ!
それを見たイリューシュは氷の壁を出して、さらに弓でも防御した。
ガァオォォオン!
しかし、大弓使いの矢は想像以上の威力で氷の壁を貫通し、イリューシュの弓を直撃した。
そしてその瞬間、なんとイリューシュの弓は耐久値がゼロになって使用できなくなり、消滅してしまった。
それを見た大弓使いは大笑いしながら言い放った。
「はははは! 見たか! 大弓使いをナメるなよ!」
「ええ、素晴らしい一矢でした。仕方がありませんね、あまり美しくなくて好きでは無いのですが……」
イリューシュはそう言うと、手で何かを操作して一際大きな大弓を左手に出現させた。
その大弓は黒い鱗のような物で覆われ、弓の上の部分には目玉が付いていて大弓使いを睨みつけた。
イリューシュの大弓を見た大弓使いは驚いて大声を上げた。
「なぁあっ!! オロチの大弓!! お前まさかオロチを!? 」
イリューシュは8本が一束になっている矢を出現させてつがえると、引き絞りながら答えた。
「ええ、30頭ほどですけど。ふふふ」
ゴォーン!
重たい音を響かせてオロチの大弓から矢が放たれると、矢は即座に8つに別れた。
「うわぁぁあああ!」
ドドドドドドドド! ドガッ!
8本の矢は全て大弓使いに刺さって吹き飛ばし、そのまま後ろの壁に突き刺さった。
「オ……、オロチの威力……、すごいわ……」
大弓使いは苦笑いしながら消滅していった。
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