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第1章

第6話 岩をゲットする

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 そうそう、もうおっさんじゃないから俺にしようかな。いや、俺ってガラじゃないから、お兄さんかな。

 お兄さんこれからの事を考えながら飛んでいたのだけど、眼下に大きな岩が多数見えた時に、これだ!って閃いたんだよね!

 もう少し瑞希ちゃんの柔らかさを堪能していたかったけど、軽いとはいえ本当に腕が辛かったんだよ。

 改めて見ると、アイドルなんて尻尾を巻くレベルの娘やないか!お兄さん俄然守らなきゃって父性がワキワキだよ。

 武器は何かあったかな?と考えていて、さっき城でゲットしたのがあるよなと思い出した。幅広の剣、いわゆるブロードソードと言うのかな?神官を床に転がした時に収納に放り込んだやつがある。城をまるごと収納に入れたけど、武器を取り出せそうにない。城として収納に入れたが、城の中に有る物は取り出せないようだ。この剣は別だ。何せ城を収納する前に収納へ入れたからね。

 収納の中の物は取り出す事が出来るんだけど、何度試みても城の中に有る筈の物は出せなかったんだよね。城を外に出して探索なりをしないと駄目っぽい。金とかも城を出さないと駄目な感じだ。

 落ち着いたら瑞希ちゃんが何のスキルを選んだかを聞かないとな。
 何かね、楽しみで、ワクワクするよ!

 取り敢えず剣以外の武器をなんとかしないとなんで、お兄さん頑張って?考えたよ。剣なんて使った事はないぞ。剣道の竹刀や、銀行に有った護身用の木刀を振った位だ。一応銀行の研修で、代理に上がる時に宿泊研修があり、銀行強盗対策として男子行員は柔道の初歩と剣道の初歩を教えられたけど、こちらが研修のメインだったんだよな。

 一応俺のいた銀行では、女性行員は客の誘導、男子は可能なら強盗を制圧する事になっていたよ。

 眼下に広がる荒野をよくよく見渡すと、このエリアだけ巨大な岩とか大きな岩や石がゴロゴロ転がっているのが分かった。
 「岩を使おう!閃きました!」

 ついつい呟いていたようで、瑞希ちゃんがキョトンとしていたっけ。 
 1番大きい超巨大な岩を岩巨大1とか、大きいのを岩大とか、もし分類が必要になったら探し難いから、種類を先にして細かい分類を後ろにしようと決めたんだよね。

 取り敢えず岩場に降りると、お互い屈伸したりと体を動かして痛みを取る。

 岩が収納できるか確かめたけど、巨大なのは小さ目の体育館程の大きさ程だった。
 しかし、あっさりと収納に入った。辺りにある岩やバケツ位の大きさの石を入れまくった。
 岩というよりも山?かな。
 バス程の大きさのとかね。

 試しに岩大を手をかざして出すと、俺に当たらない範囲に出て、高さ1.5m位から2m位で、10トンはあろうかという岩がドスンと落ち、地響きがした。それでもそれ位だ。

 次に大きいのだ。当然景色が変わり、忽然と山のような岩が消えたので瑞希ちゃんはほえーとなっていた。

「と、栃朗さん?一体何をしているんですか?」

「ああ、こうやって岩を落とすとどうなるか検証をしているんだよ。ほら、あの王女が魔物がどうのこうのと言っていたけど、多分今の俺達ではこの剣ごときで魔物というのを倒す事は困難だと思ってさ。例えばヒグマ相手にこんな刀じゃなくて、剣では勝てないでしょ!?俺だとさくっと熊に殴られて終わるかな!?だからこうやって潰そうかなってさ。下敷きになったら流石にひとたまりもないと思うんだよね!」

「痛そう・・・」

「痛いと思う暇もないだろうね。まあ、お兄さん達が生き延びる為に知恵を絞っているんだよ」

「私、なんてお礼をすれば良いの?私、栃朗さんに助けてもらってばかりだよ?」

「ほら、あの鑑定。あれが無ければ行動に移せなかったから。お兄さんの方こそ瑞希ちゃんのお陰で生き延びる事ができたんだよ。これはね、貸し借りはないからね。でかいのも試させて」

 瑞希ちゃんがジト目をする。何故ジト目?でもめっちゃ可愛いんだけど?あかん、おっさんじゃなくて、お兄さんドキドキするよ。

 さっき出した岩を収納し、2番目に大きい岩で試す。

 丁度モグラのような何かが地面から出て来て、栃朗に向かって突進を始めたようだ。今の衝撃で起こされて怒っていた。栃朗は瑞希の方を見ながら、つまりよそ見をしながら、腕を斜め上に挙げていた。

「じゃあ行くよ!ドスンとかなり揺れると思うからねー!」

「栃朗さん、ま、ま、前!」

 栃朗はそのまま巨大な岩を出したが、瑞希には丁度栃朗に飛び掛らんとしてジャンプした魔物が複数匹見えた。

 しかし、お兄さんはまるで気が付いていなかったんだよ。すると当たり前だけどドッゴーン!と言う音と衝撃があり、瑞希ちゃんの体が一瞬浮き、「ひゃっ!」っと短く可愛らしい悲鳴を上げたんだよ。かわええ!
 お兄さん?
 ふふふ!・・・
 おおー!すげえなぁ!と喜んでいたさ。

 そして急に謎メッセージが脳内ディスプレイに表示された。先程も何かしらの表示が出ていたのだが、2人共その異常性に対して何の疑問を持っていなかったんだ。

「えっ?」

 2人がハモる。

「何だ?何故レベルが上がるの?」

「栃朗さん?さっき何かモグラかイタチのようなのが一斉に栃朗さんに飛び掛かっていましたよ。多分、その岩の下敷になって、ぺったんこさんですよ?」

 へっ?となり岩を収納して地面を見ると、何かキラキラ光る石が見えたんだよ。青くて透き通ったゴツゴツした宝石?

 石は3つ地面に埋まっていたな。取り敢えずポケットの中に有った家の鍵を使って掘り起こしたんだ。何か不思議な力を感じるけど、そのうちの1つを瑞希ちゃんに渡したよ。
 ピンポン玉やビー玉位の体積だ。

「わー!綺麗!あのう、何で死体がないの?血もないですよね?ぺったんこになって血の匂いとかするのかなぁって思ったんですよね」

「小説とか、アニメとかにある魔石というやつかな?綺麗だね」
 
 首を傾げている。

「ここにいつまでもいる訳にはいかないから、そろそろ先に行こうか?」

「もう逃げ果せたのではないのですか?」

「飛びながら話そうか」

 お兄さんはまたもやヒョイッと瑞希ちゃんを抱えて飛んだ。

「お兄さんもいつまでこれができるか分からんけどさ、城からの、いや、国からの追手を十分撒けたと思う迄距離を置かないと安心できないんだよね。だ、大丈夫!瑞希ちゃんはお兄さんが命に替えてでも守るから」

「あのう、何気に凄い事を言っていますよ?」

「恥ずかしいからそこはスルーして下さいな!歳下なんだから黙って歳上の庇護下に入りなさい!」

「はーい!でも、瑞希は栃朗さんの役に立ちたいんですよ」

「町に入ったら、お兄さんは否応なしに瑞希ちゃんのお世話になると思うから、今は気にしないで。まあ、追々分かると思うから。今は身の安全が第1だから、多少の事には目を瞑るんだよ」

 そうして2人の空の旅は続くのであった。
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