70 / 100
お母様の過去(この話しは必見だよ~)
しおりを挟む
私は憂鬱だった。
シオンと一緒に暮らせる様になり、新しい国を建国する事が決まってからは、すぐにこんな日が来ると思っていた。
そう、周辺国への使者として、それなりの者を連れ行かなければ門前払いを受けてしまうからだ。
しかし、今回は私達アクエリアス一家しかそれに該当しないため、家族で周辺国を廻らなければならなかった。
「それにしても、新しい都市アスタリスクには驚いたわね………」
シオンが修道院送りになり、最初は戸惑い混乱したけど、すぐに私の持てる権力、資金、人材全て使い、救出の手配をしてシオンを不当に扱った者達の制裁を実行した。
その上で、私の愛する夫が言ってきたのだ。
「シオンはすでに、多くの種族と関わりを持ち楽しく暮らしているそうだ。どうだろうか?私達がシオンのすぐ側に引っ越すと言うのは?」
シオンの領地の事を調べていたとき、ナダクズ子爵の不正を掴んでいた。それを使えば、子爵家を取り潰し、アクエリアス家が代わりに治める事も可能だった。
そう、その時はそのくらいにしか思っていなかったのだ。でも報告から多種族と楽しく暮らすシオンを見て考えが変わった。ファーランド王国は人間国家であり、多種族には排他的だったからだ。
まだ帝国はかつて他国に侵略し、領土としたため多種族には寛容的だった。その迫害され隠れて暮らしている多種族と仲良くなり、一緒にご飯を食べ、遊び、協力して魔物と戦い暮らしていく。
王国の常識では考えられない事だった。でも、多種族が手を取り合い暮らすなんて夢物語をシオンは実現していた。だったら私達もシオンを見習い、共存共栄の道を模索できるのではないだろうか?
各種族の強みを生かして得意なことで貢献していく。無論、価値観が違うこともあるので少しずつ寄り添って行けばいい。
そして、自分達の理想を実現するために独立することを話し合って決めた。如何に公爵家でも、国に属する貴族でしかない。なら、独立して自分達で自由に政策を打ち出せるようになった方が良いという話しになったのだ。
念入りに、何ヵ月も準備して住民達にも村長や町長に話を通じて、ようやく実行に移した。
その後はシオンに会えた喜び以上に、シオンの作った城塞都市や首都アスタリスクを見て驚いたわ。この世の物とは思えない建造物に、表情には出さなかったけど凄く驚いたのよ。
これは想像を超えていた出来栄えだった。作ったシオン自身も驚いた顔をしていたのは笑ってしまったわね。
さて、楽しい事を思い出して現実逃避しても仕方がない。これか会う両親の事を考えると憂鬱になってしまうのだ。
私の父親は先帝陛下であり、正室の王妃から産まれたれっきとした姫だった。ただ、私は王妃から産まれた3番目であり、二人の兄がいた。側室も男子と女子を【先に】何人か産んでいたので、産まれた順番は7番目であり、姫としては3番目であった。
帝国は実力主義であったが、実子であった我が兄達は共にプライドだけ高いだけの無能で、平民を見下すように育ったため地方に飛ばされた。そして少し揉めたが、先帝陛下の体調が悪くなった事も重なり、現在の皇帝は先帝陛下の弟である方が皇帝を務めている。
他の私の兄妹は爵位を賜り、それなりに満足して暮らしているそうだ。
長々となったが、私は実の両親に会いたくないのである。
子だくさんな帝室にて、私は小さい頃から魔術の才能に目覚め、通常の魔法使いよりも何倍も魔力量が多く、強力な魔法もどんどん覚えていった。淑女のレッスンは行っていたが、私は魔法にのめりこみ、周りからは変わった姫として囁かれた。
魔法の練習と平行して魔道具の開発にも力を入れて様々な魔道具を開発した。
今では定番の、魔法使いが持っている魔力増強のロッドの宝石も私が開発したものだ。従来より向上率の高い物をね。
私はそれなりに国に貢献している自負があった。
しかし、上の兄がバカをやったせいで私は会ったこともない、隣国のアクエリアス公爵家へ嫁がなければならなくなった。
いずれは帝国の姫として、義務を果たさなければならないと思っていたが、【16歳】で嫁ぐ事になるとは思っていなかった。
まぁ、帝国内では強大な氷の魔術を得意とし、50人規模の盗賊を全て氷付けにしたことから、【氷姫】の2つ名で呼ばれる様になり、帝国内では貰い手が無いからであろうと想像していた。
ただ、先帝が体調を崩し帝位を譲るゴタゴタの時に嫁げというのは、厄介払いしたかったとも思えた。
趣味からのめり込んだ魔法であったが、私は両親に認めて貰いたかったのかも知れない。
それなのに、厄介払いされて悲しかったのだ。
それから私は隣国へ嫁いだ。特に両親の見送りもなく…………
初めて旦那様を見たとき、私は内心舞い上がった。好みのドストライクだったからだ。少し一緒に暮らして、性格も良いとわかった。だけど旦那様は私に関心がなく、酷い態度は取らないが、無関心が1番私には堪えた。
少し経って、長男を産み、妹を産んだが貴族としての義務としてであり、夫婦仲は冷えていった。
シオンが2歳になり、喋れるようになって来たときに、拙い言葉で泣きながら私達に訴えたのだ。それは赤子とは思えないほどの必死さが伝わってきた。
私はこんな自分の子供にまで悲しい想いをさせまいと、この数年間の想いを旦那様に訴えた。
旦那様もシオンの必死さが伝わったのか、その日は人払いをして、二人でじっくりと話し合った。私は実家に恥を忍んで帰る事も辞さない気持ちで打ち明けると、なんとも単純な事がわかった。
旦那様はただの照れ屋さんで、私の前では恥ずかしくて無口になっていただけとわかった。旦那様も私に一目惚れしたことを打ち明け、私が旦那様を嫌いだと思い、避けるようになったそうだった。
それからは世界が変わった。全てが輝かしい物に見えて、私は良く笑うようになった。
今までメイドにさせていたシオンの世話も、出来る限り自分でするようになった。
子供の世話は本当に大変だとわかり、メイド達には特別手当てを出したぐらいだ。
長男のクオンにも寂しい思いをさせないよう、平等に愛してきた。だからこそ、自分の子供を厄介払いした両親が許せなく、会いたくなかったのだ。
しかし、帝国の使者として私以上の人物もいないため、シオンを連れてやって来た次第である。
シオン、お母さんに勇気を頂戴ね!
シオンと一緒に暮らせる様になり、新しい国を建国する事が決まってからは、すぐにこんな日が来ると思っていた。
そう、周辺国への使者として、それなりの者を連れ行かなければ門前払いを受けてしまうからだ。
しかし、今回は私達アクエリアス一家しかそれに該当しないため、家族で周辺国を廻らなければならなかった。
「それにしても、新しい都市アスタリスクには驚いたわね………」
シオンが修道院送りになり、最初は戸惑い混乱したけど、すぐに私の持てる権力、資金、人材全て使い、救出の手配をしてシオンを不当に扱った者達の制裁を実行した。
その上で、私の愛する夫が言ってきたのだ。
「シオンはすでに、多くの種族と関わりを持ち楽しく暮らしているそうだ。どうだろうか?私達がシオンのすぐ側に引っ越すと言うのは?」
シオンの領地の事を調べていたとき、ナダクズ子爵の不正を掴んでいた。それを使えば、子爵家を取り潰し、アクエリアス家が代わりに治める事も可能だった。
そう、その時はそのくらいにしか思っていなかったのだ。でも報告から多種族と楽しく暮らすシオンを見て考えが変わった。ファーランド王国は人間国家であり、多種族には排他的だったからだ。
まだ帝国はかつて他国に侵略し、領土としたため多種族には寛容的だった。その迫害され隠れて暮らしている多種族と仲良くなり、一緒にご飯を食べ、遊び、協力して魔物と戦い暮らしていく。
王国の常識では考えられない事だった。でも、多種族が手を取り合い暮らすなんて夢物語をシオンは実現していた。だったら私達もシオンを見習い、共存共栄の道を模索できるのではないだろうか?
各種族の強みを生かして得意なことで貢献していく。無論、価値観が違うこともあるので少しずつ寄り添って行けばいい。
そして、自分達の理想を実現するために独立することを話し合って決めた。如何に公爵家でも、国に属する貴族でしかない。なら、独立して自分達で自由に政策を打ち出せるようになった方が良いという話しになったのだ。
念入りに、何ヵ月も準備して住民達にも村長や町長に話を通じて、ようやく実行に移した。
その後はシオンに会えた喜び以上に、シオンの作った城塞都市や首都アスタリスクを見て驚いたわ。この世の物とは思えない建造物に、表情には出さなかったけど凄く驚いたのよ。
これは想像を超えていた出来栄えだった。作ったシオン自身も驚いた顔をしていたのは笑ってしまったわね。
さて、楽しい事を思い出して現実逃避しても仕方がない。これか会う両親の事を考えると憂鬱になってしまうのだ。
私の父親は先帝陛下であり、正室の王妃から産まれたれっきとした姫だった。ただ、私は王妃から産まれた3番目であり、二人の兄がいた。側室も男子と女子を【先に】何人か産んでいたので、産まれた順番は7番目であり、姫としては3番目であった。
帝国は実力主義であったが、実子であった我が兄達は共にプライドだけ高いだけの無能で、平民を見下すように育ったため地方に飛ばされた。そして少し揉めたが、先帝陛下の体調が悪くなった事も重なり、現在の皇帝は先帝陛下の弟である方が皇帝を務めている。
他の私の兄妹は爵位を賜り、それなりに満足して暮らしているそうだ。
長々となったが、私は実の両親に会いたくないのである。
子だくさんな帝室にて、私は小さい頃から魔術の才能に目覚め、通常の魔法使いよりも何倍も魔力量が多く、強力な魔法もどんどん覚えていった。淑女のレッスンは行っていたが、私は魔法にのめりこみ、周りからは変わった姫として囁かれた。
魔法の練習と平行して魔道具の開発にも力を入れて様々な魔道具を開発した。
今では定番の、魔法使いが持っている魔力増強のロッドの宝石も私が開発したものだ。従来より向上率の高い物をね。
私はそれなりに国に貢献している自負があった。
しかし、上の兄がバカをやったせいで私は会ったこともない、隣国のアクエリアス公爵家へ嫁がなければならなくなった。
いずれは帝国の姫として、義務を果たさなければならないと思っていたが、【16歳】で嫁ぐ事になるとは思っていなかった。
まぁ、帝国内では強大な氷の魔術を得意とし、50人規模の盗賊を全て氷付けにしたことから、【氷姫】の2つ名で呼ばれる様になり、帝国内では貰い手が無いからであろうと想像していた。
ただ、先帝が体調を崩し帝位を譲るゴタゴタの時に嫁げというのは、厄介払いしたかったとも思えた。
趣味からのめり込んだ魔法であったが、私は両親に認めて貰いたかったのかも知れない。
それなのに、厄介払いされて悲しかったのだ。
それから私は隣国へ嫁いだ。特に両親の見送りもなく…………
初めて旦那様を見たとき、私は内心舞い上がった。好みのドストライクだったからだ。少し一緒に暮らして、性格も良いとわかった。だけど旦那様は私に関心がなく、酷い態度は取らないが、無関心が1番私には堪えた。
少し経って、長男を産み、妹を産んだが貴族としての義務としてであり、夫婦仲は冷えていった。
シオンが2歳になり、喋れるようになって来たときに、拙い言葉で泣きながら私達に訴えたのだ。それは赤子とは思えないほどの必死さが伝わってきた。
私はこんな自分の子供にまで悲しい想いをさせまいと、この数年間の想いを旦那様に訴えた。
旦那様もシオンの必死さが伝わったのか、その日は人払いをして、二人でじっくりと話し合った。私は実家に恥を忍んで帰る事も辞さない気持ちで打ち明けると、なんとも単純な事がわかった。
旦那様はただの照れ屋さんで、私の前では恥ずかしくて無口になっていただけとわかった。旦那様も私に一目惚れしたことを打ち明け、私が旦那様を嫌いだと思い、避けるようになったそうだった。
それからは世界が変わった。全てが輝かしい物に見えて、私は良く笑うようになった。
今までメイドにさせていたシオンの世話も、出来る限り自分でするようになった。
子供の世話は本当に大変だとわかり、メイド達には特別手当てを出したぐらいだ。
長男のクオンにも寂しい思いをさせないよう、平等に愛してきた。だからこそ、自分の子供を厄介払いした両親が許せなく、会いたくなかったのだ。
しかし、帝国の使者として私以上の人物もいないため、シオンを連れてやって来た次第である。
シオン、お母さんに勇気を頂戴ね!
0
お気に入りに追加
227
あなたにおすすめの小説

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。
sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。
目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。
「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」
これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。
なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!
菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。


劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~
緋色優希
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる