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国交の為の取引材料は④
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自分なりに色々考えて、人を巻き込んで試行錯誤してきたつもりだったけど、改めて思い返せば思い返すほど、自分の人間不信ぶりと手駒作りの才能のなさにがっかりする。
自分に心酔している人間がいても、上手く利用するどころか、寧ろ距離を置いてきたくらいだもんな……。一般人ならよくても、次期領主である辺境伯領嫡男としては我ながらかなり致命的な悪癖だと思う。
……でもさ、言い訳させてもらうなら、クソ親父の教育のせいでもあるんだよ? 人心掌握術やら根回し術やらも含めた領主教育を後回しにして、ただただ「個」として強い「英雄」であれって洗脳教育されてきたんだもん。前世の記憶思い出して色々振り切ったつもりでも、やっぱり思想自体は完全に根付いているからさぁ……で、「自分の不幸に人を巻き込んじゃいけない」っていう前世の倫理観まで加わっちゃったでしょう? うん、だから今の状態もやむなし……なんて、開き直っちゃ駄目なのはわかってます。はい。
……あー。せめて異世界物のお約束、悲惨な境遇から救い出すことから始める絶対裏切らない奴隷(or使用人)の育成くらいはやっておくべきだったか。悲惨な境遇から救った免罪符があれば、少しは利用する罪悪感も減っただろうし。
でも自分ができることを必死にこなすのが精一杯で、学校入学前はそこまで頭回らなかったんだよー……学校入学後は、全寮制だからそう言う人材育てる時間取れなかったし。
そもそも、そんな絶対裏切らないと確信できる相手ができたら、ズブズブに依存してしまいそうで怖かったしさ。
「そんなに落ち込むな。エディ。……お前が足りないものは、俺が補完すればいいだけの話だ。二人で戦うのだと言っただろう?」
「……あまり俺を甘やかさないでくれ。アスティ。どこまでも駄目になりそうで怖い」
「甘やかせてくれ。番の特権だ」
ペロリと俺のうなじを舐めながら、ちぎれんばかりに尻尾を振るアストルディアの雰囲気は、わんこモードながらも、ひどく甘い。
今世では、幼い子どもの頃ですら、アストルディア以外にこんな風に甘やかされたことはなかったから、また一段と抜けることのできない泥沼にズブズブとはまっていくような感覚がした。
………本当、獣人の、てか狼獣人にとっての番というのは、特別なんだな。
そういえば原作アストルディア、最初の番を亡くしてからショックで味覚と嗅覚がなくなったみたいな設定あったな。主人公に出会ったことで、少しずつ感覚を取り戻していく、的な流れで。
原作には元のアストルディアの嗅覚について詳しく書かれてなかったからトラウマ持ちキャラあるあるとしか思わなかったけど、魔力も感情も敏感に察知できるチート嗅覚がなくなったと思ったら、想像した以上に重い設定だわ。……そんな重い感情を向けられるポジションに、俺が収まって、本当に良かったんだろうか。なんて、今さらまた考えても、どうしようもないことだけど。
「それで? 他にもまだ、落ち込むようなことがあったんだろう?」
「……本当に良い嗅覚でいらっしゃる」
まあ、こっちは別に隠し立てするようなことでもないしな。
「クリスからさ、獣人の魔力が高い人間に対する執着を見てたら、俺達が婚姻関係を結んだくらいでは友好的に国交を開始することはできないんじゃないかって言われて」
「どういう意味だ?」
「奴隷貿易みたいに、魔力の高い人間を売りつけて友好関係を築くわけにはいかないだろう? かといって、それに代わる獣人が喜ぶような取引材料も現段階では思いつかない。そんな状態で、セネーバと国交を結んでも上手くいかないんじゃないかって」
「……なるほど。クリスらしい考え方だな」
自分に心酔している人間がいても、上手く利用するどころか、寧ろ距離を置いてきたくらいだもんな……。一般人ならよくても、次期領主である辺境伯領嫡男としては我ながらかなり致命的な悪癖だと思う。
……でもさ、言い訳させてもらうなら、クソ親父の教育のせいでもあるんだよ? 人心掌握術やら根回し術やらも含めた領主教育を後回しにして、ただただ「個」として強い「英雄」であれって洗脳教育されてきたんだもん。前世の記憶思い出して色々振り切ったつもりでも、やっぱり思想自体は完全に根付いているからさぁ……で、「自分の不幸に人を巻き込んじゃいけない」っていう前世の倫理観まで加わっちゃったでしょう? うん、だから今の状態もやむなし……なんて、開き直っちゃ駄目なのはわかってます。はい。
……あー。せめて異世界物のお約束、悲惨な境遇から救い出すことから始める絶対裏切らない奴隷(or使用人)の育成くらいはやっておくべきだったか。悲惨な境遇から救った免罪符があれば、少しは利用する罪悪感も減っただろうし。
でも自分ができることを必死にこなすのが精一杯で、学校入学前はそこまで頭回らなかったんだよー……学校入学後は、全寮制だからそう言う人材育てる時間取れなかったし。
そもそも、そんな絶対裏切らないと確信できる相手ができたら、ズブズブに依存してしまいそうで怖かったしさ。
「そんなに落ち込むな。エディ。……お前が足りないものは、俺が補完すればいいだけの話だ。二人で戦うのだと言っただろう?」
「……あまり俺を甘やかさないでくれ。アスティ。どこまでも駄目になりそうで怖い」
「甘やかせてくれ。番の特権だ」
ペロリと俺のうなじを舐めながら、ちぎれんばかりに尻尾を振るアストルディアの雰囲気は、わんこモードながらも、ひどく甘い。
今世では、幼い子どもの頃ですら、アストルディア以外にこんな風に甘やかされたことはなかったから、また一段と抜けることのできない泥沼にズブズブとはまっていくような感覚がした。
………本当、獣人の、てか狼獣人にとっての番というのは、特別なんだな。
そういえば原作アストルディア、最初の番を亡くしてからショックで味覚と嗅覚がなくなったみたいな設定あったな。主人公に出会ったことで、少しずつ感覚を取り戻していく、的な流れで。
原作には元のアストルディアの嗅覚について詳しく書かれてなかったからトラウマ持ちキャラあるあるとしか思わなかったけど、魔力も感情も敏感に察知できるチート嗅覚がなくなったと思ったら、想像した以上に重い設定だわ。……そんな重い感情を向けられるポジションに、俺が収まって、本当に良かったんだろうか。なんて、今さらまた考えても、どうしようもないことだけど。
「それで? 他にもまだ、落ち込むようなことがあったんだろう?」
「……本当に良い嗅覚でいらっしゃる」
まあ、こっちは別に隠し立てするようなことでもないしな。
「クリスからさ、獣人の魔力が高い人間に対する執着を見てたら、俺達が婚姻関係を結んだくらいでは友好的に国交を開始することはできないんじゃないかって言われて」
「どういう意味だ?」
「奴隷貿易みたいに、魔力の高い人間を売りつけて友好関係を築くわけにはいかないだろう? かといって、それに代わる獣人が喜ぶような取引材料も現段階では思いつかない。そんな状態で、セネーバと国交を結んでも上手くいかないんじゃないかって」
「……なるほど。クリスらしい考え方だな」
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